あけみ

大好きな橋本治先生のご本のことなど、つらつらと書き散らかそうかなと。 お付き合い頂けたら嬉しいです。

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橋本治「窯変源氏物語」「ひらがな日本美術史」のこと 本を捨てた日

 双極性障害の影響で一時期、字を読めなくなったことがあった。 一年ほど続いただろうか。 ある日図書館に行くと、本の背表紙が突然何か得体の知れないものの集団に見えて来て目が眩んだ。 文字を読めなくなっている事に気づいた最初だった。  その場に座り込んで絶望した。    そのうちに、スーパーに行っても商品の賞味期限がわからない、本も新聞も何が書いてあるのかわからない、マンガすら読めない、ということになって、今度は死にたくなった。 うっかりすると本当に死にそうなので何をしたかと言う

    • 橋本治「窯変源氏物語」と「おおくぼ源氏」③ 末摘花 紅葉賀

       多分言っても誰も聞いてくれないと思うから、今まで人に話した事なかったけど"ラップ"と"和歌"って似てると思うのだ。  そもそも「源氏物語」ってなんであんなに和歌が出てくるんだろう。 手紙や御簾越しのやりとりならまだわかるが、もう死にかけてるとか、死ぬほど情けない目にあってる人でも、やたらと和歌を詠む。 「えっ、ここで和歌詠むの?」 っていうようなシチュエーションでもお構いなしだ。  以前、女房文学は今で言う少女まんがだと書いたが、その論でいけば和歌は、まんがの中の登場人物

      • Be cool now,kiss kiss!

         最近若い人の間で「昭和レトロ」がブームらしくて、昭和の時代に生まれたかったとか、目を疑うようなコメントを見かける事がある。 私は絶対、あの頃になんか戻りたくない。 別に嫌な思い出がある訳じゃないが、今の時代の便利さ、スマートさにどっぷりつかってしまった私たち昭和生まれの世代で、あの頃に戻りたいなんて思ってる人って、そんなにいないんじゃないのかな。 ポケットから黒いツヤツヤの板を取り出すだけで電話ができる。写真や動画も撮影できる。 買い物もできて清算もしてくれる。 手紙もか

        • 橋本治「窯変源氏物語」と「おおくぼ源氏」② 夕顔 若紫

           この間YouTubeで二人の若い文化人が、私の好きな画家を取り上げて何か喋っていたので、 「あら、珍しい。マイナーな画家なのに。」 と、さっそく見始めた。 嬉しかったのだ。 でも何だか途中から段々私のほうがピリついてきて、その先を見るのをやめてしまった。 この二人の文化人は、至極真っ当な事を言っていた。理路整然と。 でも何だろう、この違和感は。  しばらく考えていたら何となくわかって来た。 彼らはその画家が絵を通して何を我々に伝えようとしているのかを議論していたのだ。  

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        橋本治「窯変源氏物語」「ひらがな日本美術史」のこと 本を捨てた日

          橋本治「窯変源氏物語」と「おおくぼ源氏」① 桐壺 帚木 空蝉

           私の初めての源氏物語は田辺聖子の「新源氏物語」だった。 田辺聖子の書く光源氏は心優しく、ひたむきで若々しい青年だったように思う。 私はまだ十代だったけど、田辺聖子は女の子の望む光源氏を見せてくれた。  その後は円地文子、瀬戸内寂聴、大和和紀の源氏物語を薄目でつまみ読みしたくらいだったが、光源氏に本気で恋をしてしまったのは何といっても橋本治の「窯変源氏物語」だった。  私はもうその頃は大人になっていて子供もいるような歳になっていたが、図書館で初めてこの本を見つけて読んだ時、

          橋本治「窯変源氏物語」と「おおくぼ源氏」① 桐壺 帚木 空蝉

          ロシアン・チャリンコ?

           共通語ネイティブの人には分かりづらいかも知れないが、地方の人間というのは、だいたいバイリンガルだ。 子供の頃からテレビで共通語を聞かされ、共通語の文章を読まされ、書かされして来たから、共通語は普通に扱える。 あたりまえだ。 そこに普段から使っている「方言」が加わるのだからバイリンガルだ。  スゴイでしょ。  私なんか関西弁の他に宮崎弁まで扱えるのだからトライリンガルだぞ。  スゴイでしょ。  京都、大阪人の共通語(特に東京弁)への拒否感は別として、その他の地方の人間にとっ

          ロシアン・チャリンコ?

          高村光太郎「智恵子抄」のこと。 でも、やっぱり愛してる。

           電子書籍ってスゴい。 紙の本が一番だとは思うが、なんとこれは自分の本棚をケータイに入れて持ち歩けるんだぞ。 スゴくないか? えらい時代になったもんだとつくづく思う。 しかも昔の本なら、 「お代?いえ結構です。どーぞどーぞ、よろしかったら。」 と、気前よく入手させてくれる。 もちろん昔の本ならなんでもという訳ではないが、夏目漱石だろうが、樋口一葉だろうが、 泉鏡花だろうが、 「あ、これなら大丈夫ですよ。どーぞどーぞ。」だ。  ところで私は自分の蔵書のほとんどを処分してしまっ

          高村光太郎「智恵子抄」のこと。 でも、やっぱり愛してる。

          橋本治「ひらがな日本美術史」第二巻「鹿苑寺金閣」「とんでもなく美しいもの」

            思ってたんとちがう。  自分で言ってしまうが、私は出不精の家虫だ。 外に出たくない。 出来るものなら買い物にも行きたくない。 お家大好き。 金出して観光旅行なんかする人の気がしれない。 あ、すいません。言い過ぎです。  本当は京都に行って金閣寺を見たいのだ。 龍安寺に行って石庭も見てみたい。 天球院に行って狩野山雪の襖絵だって見てみたい。 でも私は怖いのだ。  「思ってたんとちがう。」 そう思ってしまうことが。 「ひらがな日本美術史」第二巻の「鹿苑寺金閣」のサブタ

          橋本治「ひらがな日本美術史」第二巻「鹿苑寺金閣」「とんでもなく美しいもの」

          絶対、負けへんし。

          ちょっと長いです、すいません。  先月、母から「お父さん、コロナみたいやねん。私も今熱が38度くらいある。」 と電話があり、慌てて特急電車に飛び乗ったもののその移動中、今まさに自分がコロナの巣窟に乗り込もうとしている事に恐れをなした。  去年コロナに罹患し、熱による身体の激痛と後遺症の倦怠感に長く苦しんだ事を思い出したのだ。 あんなところへ行ったら確実にコロナに感染する。 どうする? 引き返すか?  実家は、母が父を介護する典型的な老々介護家庭で頼る人なんていない。 そ

          絶対、負けへんし。

          猫飼って、IQ一気にだだ下がり。

          ネコを話題にする事のあざとさは、よく承知している。 承知の上で、やっぱり語らずにはいられないのがネコのあざとさだ。  私は美容院での美容師との会話が苦手で、つい気になりながらもカットやカラーを先延ばしにしてしまう。 ところが何かの拍子に、担当の美容師がネコ派と知ってしまうと、とたんに旧知の間柄になる。 「えっ、ネコ飼ってらっしゃるんですか?ウチもですーっ。」 「えーっ、どんなコどんなコ?」 「マンチです。お客様のところは?」 「ウチは雑種。なんせ野良上がりだから。」 「ウ

          猫飼って、IQ一気にだだ下がり。

          生まれてくるということ。死んでいくということ。

           前回投稿した仙厓義梵の沼から、ようやく浮上しつつある今日このごろ。 禅画の話しはいったん措く事としたが、仙厓の生き様、死に様についてはまだまだ考えさせられるところが多く、いつまで引きずるねんと我ながら呆れる。  高名な禅僧でありながら、「死にとうない」という言葉を最後に残した仙厓の真意に、私はまだこだわっているのだ。  今回のマイブームは、なかなかしつこい。  前回私は「なーんちゃって。チャンチャン。」 という終わり方に憧れると書いたが、それは、こういう終わり方ができる

          生まれてくるということ。死んでいくということ。

          仙厓義梵の沼でおぼれた

           漫画家の山田玲司さんがYouTubeで時々口にされる言葉に「ドーナツでもどうですか。」というのがある。 若い人が、今のこの時代の生きづらさを相談して来た時、この人は必ず、 「それは君のせいじゃないんだよ。」 と、断言する。 家庭も戦場、学校も戦場、社会も戦場。 今はそういうイカれた時代なんだから、メンタル病んだり、自殺したくなったりするのは当たり前なんだよ。 いったい何人死んでんだよって話しですよ。 「だから。」 と言って続くのが、 「ドーナツでもどうですかっていう事ですよ

          仙厓義梵の沼でおぼれた

          橋本治「ひらがな日本美術史」第2巻「四睡図」 「意外とメルヘンなもの」 おじさんって良い。

           私には若い頃から、「おじさんウォッチング」というろくでもない趣味がある。 もちろんナンパしようとかされようとか、そういうものではない。 ただもう、おじさんが面白いから見るのだ。 別にバカにしている訳ではない。 「あら、あんなところに猫が。ノラかしら。」 という感じで、何の悪意もない。  例えば、土手の上から草野球の試合をぼーっと見ているおじさん。 犬を連れて、工事現場をぼーっと見ているおじさん。 飲み屋のカウンターで、ひとりで腕組みをしてぼーっとしているおじさん。 こ

          橋本治「ひらがな日本美術史」第2巻「四睡図」 「意外とメルヘンなもの」 おじさんって良い。

          橋本治「ひらがな日本美術史」第7巻「堂々たるもの」 ヒサ子とツネ子

           最近やっと「ひらがな日本美術史」の第7巻を買った。 この巻は近代から現代に至るまでの日本美術が紹介されている。 私はあまりこの時代に興味が持てず、この一冊でシリーズをコンプリート出来るにもかかわらず、なんとなく放ったらかしにしていたのだ。 それよりも、古代から室町時代や安土桃山時代くらいまでの日本美術史でお腹いっぱいで、第7巻はデザートくらいにしか思っていなかった。 こんな極上のデザートだなんて知らなかったんだもん。 井上安治がいる。 高橋由一がいる。 黒田清輝がいる。

          橋本治「ひらがな日本美術史」第7巻「堂々たるもの」 ヒサ子とツネ子

          洗脳って何なんですかね。

          私は中学生の時、2年間ホグワーツに留学していました。 ウソです。 このウソに騙されたのは私の下の息子で、大人になった今でもこの話しをすると、彼は機嫌が悪くなります。  息子が6才ぐらいの時、一緒にテレビで映画の「ハリーポッター」を観ていて何の気なしに、 「ホグワーツかぁ、懐かしいなあ…。」 と言ってしまいました。 何の気なしも何も、まったく根拠のない独り言です。 すると息子は、 「お母さん、ホグワーツ行ったことあるの?!」  息子のキラキラした美しい眼を見た私は、もう後

          洗脳って何なんですかね。

          「罵詈讒謗」を語らせてください。

           これは「バリザンボウ」と読みます。 「罵詈雑言」「悪口雑言」と「罵詈讒謗」は微妙に違います。 ちなみに「罵詈雑言」は「バリゾウゴン」、「悪口雑言」は「アッコウゾウゴン」と読みます。 「バリザンボウ」は「誹謗中傷」とも、これまた微妙に違います。 「アッコウゾウゴン」も「バリゾウゴン」も 顔が見える相手に対して放つ、または放たれる悪口だそうです。 グーグルで調べました。 「誹謗中傷」とは、おもに顔を出さずに特定の人に向けられる悪口で、これに知性が欠落すると「シネ」「コロス」

          「罵詈讒謗」を語らせてください。