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【読書感想文】東浩紀「ゲンロン戦記」

こんばんは!
哲学者が書いたビジネス書・自伝を楽しみます!小栗義樹です!

本日は読書感想文を書かせて頂きます。僕が好きな本・最近読んだ本を題材に思ったことや感じたことを自由に書く試みです。本記事がきっかけで、題材となる本に興味を持って頂けたら嬉しいです。

本日の題材はコチラ

東浩紀「ゲンロン戦記」

です。

最近本当にお世話になっている東浩紀さんの本を、改めて題材とさせて頂きます。

すべては思想書をもっとちゃんと読んでみたいという僕の単純な欲求から始まったのですが、まずは「ゲンロン0-観光客の哲学-」をちゃんと読むべく、必要と思われる書物を探すなかで見つけたのが本日の題材である「ゲンロン戦記」です。

読むにつれて分かってきたのですが、最初は思想書をもっとちゃんと読むというお題目で出発した試みですが、これはかなり漠然としたスタートだという事が分かりました。

というのも、どんな本も作者の歴史と主題と背景が大切だと、今回の探求の中で改めて思い知らされたからです。思想書が難しいから読み方から学ぼう(それはそれで大切なことではありますが)だけではなく、どのような本でも作者の影響や命題に対して向き合えば大方楽しく読書できるというのが、今回の発見でした。

今僕は、改めてゲンロン0-観光客の哲学-を読み直しているのですが、2回目+作者調査の効果も相まって、すごくスムーズに読めています。1回目の読書で読めなかった部分の輪郭が少しだけはっきりしてきた感覚です。

それはゲンロン戦記やニュース記事、動画、千葉雅也さんの現代思想入門などを経由したおかげでもあると思います。

では、そんなゲンロン戦記という本はどのような本なのか?

ゲンロン戦記は、東浩紀さんが起業した「ゲンロン」という会社に纏わる話が書いてあります。いわば自伝のような本です。

創業の目的、失敗、発見、自分の活動との結びつき、形になるまでの軌跡などかまとまっています。本の中には、観光客の哲学についてのエピソードも記されています。そこに至るまでの経緯やこの本を執筆した目的などです。

ゲンロンという会社がやってきた活動の歴史を読み解く事ができるため、ゲンロンから出版されたあらゆる書物の目的と目標がかなりはっきりします。

本を読むうえで大切だと思うことがあります。それは「位置付け」です。この本が作者にとってどういう位置に値するのか?という事がある程度はっきりしていると、内容の解釈の幅が広がるというのが僕の考えです。

そのためには自伝というのがとても大切になる。もちろん自伝は他伝(他者からみた自分の研究)と照合する必要があるのですが、自伝がないと何も始まりません。

ゲンロン戦記を読んでいると、つくづく自伝が大切であるということが分かります。

バックボーンが批評と哲学だからでしょうか?ビジネスマンが書く自伝とは少し違うタッチになっているのもこの本の魅力です。(くれぐれも、ビジネスマンが書く自伝を否定しているわけではありません。そちらにはそちらの良さと学びがあるのも事実です。比較しやすいので選択しているだけになります)

結果と成功体験という完結が主題なのではなく、あらゆる活動の途中経過をアップデートする必要があるというところにポイントを合わせているのがとても面白いと思いました。

確実に言えることは、哲学や思想+自伝の相性はすこぶる良いということです。なにせ造語のスペシャリストが自分の人生をその語群を使って表すのですから、面白くないわけがないのです。

また、微妙なニュアンスに切り込んでいくスタイルもビジネス成功談を自伝の中に納めていく文章とは全く違い、すごく斬新で興味深いものでした。

哲学や批評を行う人が起業すると、こんな所に視点を置くのかという発見も新しく、それは間違いなく従来のビジネスマンが抱く感覚とは違うものであって、自分の視野が拡張していくのがよく分かります。

この本の面白いところは自伝を哲学的に書いていると同時にビジネス的にも面白い点です。ビジネスにおいて最も価値のあるインプットは失敗だと思っています。

この本は失敗の産物に満ちています。ゲンロン戦記ではこの失敗の産物を誤配と呼んでいますが、失敗の産物と訳しても差し支えないように思います。

なぜ失敗に価値があるかといえば、そこには再現性があるからです。成功は運が絡むので完全再現するは難しいですが、失敗には共通の公式があるので再現することができる。ということは、ビジネスとは失敗公式をどれだけ多く知っているかで勝敗が決まるわけで、そうなるとビジネス関連の文章には失敗談が沢山書いてあった方がいいわけです。

ビジネス系のオンラインサロンに入会する時に最も注目すべき点はここです。ビジネス書に成功体験を記載して、サロン内では失敗したことをあけすけにしている。こういうサロンは高確率で嘘がなく、その棲み分けをきちんと理解している人からすると大変多くの学びがある設計になっています。

ゲンロン戦記にはそんなビジネス初心者が陥る失敗が沢山書いてあります。追い詰められて一発逆転を狙ってしまった結果失敗してしまったなどです。

こういうのは戒めとしても実に勉強になります。忘れてはいけない大事な教訓です。

あと経営者の気持ちを理解しようとする上でも、この本はひと役かってくれます。コンサルの仕事をしている人やサラリーマンとして働いてる方がいれば、ぜひ一度読んで頂きたいと思います。

自伝の大切さ、哲学や思想の意味、ビジネス、経営者の苦労、こうした様々な要素をもった大変充実した本です。

どんな人が読んでも楽しいと思います。見つけたら、購入して読んでみてほしいなと思います。

というわけで、本日はこの辺で失礼致します。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう。




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