1時限目 大喜利
教室。
女性教諭。
「おはようございます」
「おはようございま~す」
「おはようございま~す」
「おはようございむ~す」
「おはようございめ~す」
「おはようございま~す」
「今日の授業は、
いつもと違うことをします。
教科書もいりません」
「え~何するの~?」
「今日はみんなで…
大喜利をしましょう!」
「おにぎり?」
「何それ、知らな~い」
「おおぎりって、なに?」
「見たことないかな?
ネットやテレビでもよくしてるけど。
ひとつのお題を出して、
みんなで色んな答えを出し合うの。
知らない?」
「IPP◯Nグランプリのやつでしょ?」
「そう!
まさにそれです!」
「あれか~」
「むずかしそう~」
「芸人さんがやるやつだ~」
「もちろんお題は、簡単なものにします。
それに大喜利に正しい答えはありません。
みんなが書いたものは全てが正解。
だから、みんな自由に書いてみて」
「おもしろそ~」
「何でもいいなら大丈夫だ~」
「芸人さんみたいな答えを書くぞ~」
(こういうお遊びもたまにはいいわよね。
まずは子どもたちが、
想像することを楽しむ…それが大事)
「では、お題を発表します!
みんなこの前の歴史の授業で、
泣かぬなら…
やりましたね?」
「やった~」
「おぼえてる~」
「3人のやつ~」
「言える人~?」
「はい!」 「はい!」 「はい!」
「はい!」 「ほい!」 「ういっす!」
「じゃあ、武将3人いるから、
ひとりひとつずつ答えてね…
まずは、鈴木さん」
「はい!
泣かぬなら…
泣くまで待とうホトトギスです」
「誰だっけ?」
「徳川家康です」
「正解!
じゃあ、次は田中くん」
「え~と…織田信長でぇ…
泣かぬなら…
殺してしまえホトトギスかな?」
「正解!
合ってるよ。
じゃあ、最後は…高橋くん」
「オレ~?
豊臣秀吉…だよね?
何だっけ?
泣かぬなら…泣かぬならぁ…
泣いたら負けよホトトギス」
「アハハ!」 「ちがうよ~!」
「アハハ!」 「負けたらダメだよ~」
「アハハ!」 「泣かせてみせようだよ~」
「はいはい。
え~と今、誰かが言ってくれましたね。
正解は…
泣かせてみせようホトトギスです。
でも、今の高橋くんの、
泣いたら負けよも大喜利では正解なの。
みんな、面白かったでしょ?」
「おもしろかった!」
「そういうのでいいの?!」
「それも正解なのか~」
「今の高橋くんのような答えを、
みんなに考えてもらいます。
面白いのでもいいですし、
織田信長みたいに怖いもの…
みんなが楽しくなるようなものでも、
何でもいいので考えて発表して下さい」
「は~い!」 「は~い!」 「は~い!」
「は~い!」 「ほ~い!」 「へ~い!」
考え中………
考え中………
…………終了
「はい。
ではみんなに、
発表してもらおうかな?
先に発表したい人!?」
シーーーーーーーン
(え?
みんな、急にどうしたの?
あんなにワイワイ騒いでたのに?)
「先生!」
「はい、鈴木さん。
なに?」
「これって…
先行の人、不利ですよね?」
(ええ~?!
この子たち…
ガチで大喜利大会しようとしてる?!
確かにお笑いの大会で先行は不利。
会場が温まってないし、
審査する人たちも様子見するからね。
え?!
この子たちそんなことまで考えて、
この大喜利に挑んでるの!?)
「みんな、よく知ってるね。
まあ確かに、
M◯1グランプリとかではそうだけど…
これは授業だから、
順位をつけるものじゃないの。
だから気軽に発表して。
それにさっき言ったみたいに、
面白いものだけじゃなくても、
いいんだから」
「じゃあ、お前行けよ~」
「僕?いやだよ~」
「じゃあ、ここはこの列の後ろから、
順に発表してもらおうかな?
佐々木さん、大丈夫?」
「は、はい。
……先生。
もう、発表していいですか?」
「いいわよ。
お願いします」
「発表します。
泣かぬなら…
泣いてあげようホトトギス…」
「お~」 「あ~」 「お~」
「お~」 「あ~」 「ああ~」
「ありがとう!
素敵!
何か佐々木さんの、
優しい部分が出てて良い!
じゃあ次、お願いします」
「はい。
泣かぬなら…
泣いてちょうだいホトトギス」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「ククッ」
(いいわ~!
子どもらしくて!
お願いするパターンね!
やっぱり子どもの発想って自由~!
いいじゃない!)
「じゃあ、次」
「泣かぬなら…
焼いて食べちゃうホトトギス」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「ブッ!」
(それは戦国時代でも思いつかないでしょ!
何て斬新な発想なの!?
むしろ、信長よりも過激だわ!)
「じゃあ、次」
「泣けぬなら…
もう別れようホトトギス」
「……」 「……」 「……」
「……」 「……」 「……」
「?!」
(急に変化球!?
江口さん…どうしたの?!
あなた…
5年生にしては大人びてるけど…
何かあった!?
何か…男の人の影が見えるわ…
まさか…大人の階段!?)
「…んんっ!
じゃ、じゃあ、次の人…」
「泣かぬなら…
泣かないでぇ~舘ひろし」
「……」 「……」 「……」
「……」 「……」 「……」
「ププッ」
(渋い!!
そんなのクラスで知ってるの、
君と先生だけだよ尾形くん!
みんなキョトンとしてるでしょ!
でも、先生それ好きよ!)
「プッ……じゃあ、次」
「泣くがいい…
全米泣いたホトトギス」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「アハハハ!」
(ちょっと、ガチじゃない!!
クオリティー高っ!!
子どものレベルじゃないわ!!)
「ククッ……じゃあ、次」
「はい。
泣かぬなら…
僕が泣いちゃう織田信成」
ドッーーーーー!!!
(ダッハハハーー!!
人選秀逸!!
もう、これ優勝じゃない!?
順位がどうとかさっき言ったけど、
ごめんなさい!!
君がチャンピオン!!)
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
「アハハハ!」 「アハハハ!」
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪