三人寄れば
女性三人。
「あ~いい匂い~」
「ほんと!
香ばしい匂い~」
「あそこ~」
看板には大きく、
【鯛焼き】の文字。
「ちょっと美味しそ~」
「食べていこうよ~」
「賛成~♪」 「賛成~♪」
「行列できてる…人気店?」
「老舗なんじゃない?
…看板見た?」
「見た。
年季が入ってた」
「鯛の字も漢字だったでしょ?
しかも文字が右書き」
「相当、古いのかな…」
「たぶんね。
メニューだって、あんこだけだよ」
「でも結局は、あんこだよね。
いま、海外でも、
あんこはブームなんだって」
「そうなの?」
「栄養価も高いし、
低脂質で栄養価も高くて…」
「栄養価、2回言った」
「とにかく、スーパーフードらしいよ」
「へえ~そうなんだ」
「昔、白いたい焼きとか流行ったけど、
あれも一瞬だったね」
「あったあった!
私、並んで食べたんだけど」
「私も。
あと変わり種のカスタードとか、
キャラメル、生クリーム、
抹茶あん、栗あん…
もう色々あった…。
でも結局は、
つぶあんか、こしあんなのよ」
「ここも選べるよ。
つぶあんとこしあん」
「私は絶対、
つぶあん派」
「え~、私はこしあんの方が好き」
「私はどっちでも…」
「つぶあんの方が美味しいって」
「あの、こしあんの滑らかさが、
いいんじゃない」
「二人とも…そろそろ…」
「はい、次の方!
お待たせしました~!
ご注文どうぞ!」
「私、つぶあんで!」
「私はこしあん!」
「私は…今日はつぶあんで」
「つぶあん2つとこしあん1つ!
ありがとうございま~す!
お会計は別々で?」
「はい」 「はい」 「はい…」
……。
「はい、お待たせしました!
つぶあん2つとこしあん1つの方!」
「はい!」 「はい!」 「はい!」
たい焼きを持って店外へ。
「ねえ。
ここにベンチあるよ」
「三人掛けられそうだから、
ここで食べようよ」
「うん」 「うん」
「これさあ、
しっぽまでびっしり、あんこ入ってるね」
「ちょっと…
しっぽからあんこ、
はみ出てるんだけど」
「しかも皮がパリッパリ…」
「……思ったんだけどさ。
たぶん、今のって…
たい焼き買った人…
みんな言ってるよね」
「確かに…」 「確かに…」
「じゃあ、食べよっか!」
「ねえ…
たい焼きって…どっちから食べる?」
「あたまでしょ?」
「うそ!
残酷!
普通、しっぽでしょ。
魚の気持ち考えたら」
「魚じゃないよ。
魚の形したスイーツだよ」
「自分が頭から食べられること、
想像したことないの?」
「ないわよ。
進撃の巨人じゃあるまいし」
「大きな口が迫ってくるんだよ!」
「想像しなければいいでしょ!?」
「え~だってぇ…
そう言えば…黙ってるけど、
しおりちゃんはどっち派?」
「私…?」
「しおりはどっちから食べるの?
しっぽよね?」
「あたまだよね?」
「私は…
………
たい焼きのあたまとしっぽを持って…
串焼きの魚みたいに横から食べるけど」
「斬新!」 「斬新!」