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#220[朝の小説]冬のしずく,140字連載,まとめ(2),最終話[スピンオフ]

朝のつぶやき小説、最終話。発想や心象風景を想像する感性、絵にする時の論理。ふたつを融合させて、朝刊の連載小説をイメージした企画、第二弾。

昔こどもだった大人と、小さな子の姿をした大人をつなぐ作品集。優しく、新しく、懐かしく。
温かい作品をめざしています。

(約 1,700字)


・・・

■本編(6話〜10話 完)

写真の祖父とは よく目が合う
眠る時、起きた時
この八畳間に入ると 朴訥で穏やかな表情が
こちらを見つめる

仏壇の下の和裁箱から 鋏を取るよう言われ
円はキヨに尋ねると 見たこともない丸い形

こう持つんだよ ちりがみの封を解き
一枚ずつ折りたたむ姿を ふしぎそうに見ていた

第六話

ーーーー

だまし舟の折り紙 民話のレコード
ここだけ、時間が止まっていた

古びた小物は 鈍い光を放つ

初詣に行こう 夜中に神社へ行く
面白そうだろう?

蕎麦を食べ終わり 実が唐突に言う
日が暮れはしゃぎながら歩く雪道

行列は階下まで続く お参りが済み
帰宅すると 一気に眠りに落ちた

第七話

ーーーー

大勢の人が階段に列を成す
途中で止まると 手足が急に冷え
ジンジンとして 動かなくなっていく

大きな鈴を二回、鳴らして手を合わせた
世界が平和でありますように

新しい靴跡がついては消え
街灯の下に結晶が重なり 小さな氷の城のよう

製材所の轟音も止み 怖くない夜もあると知った

第八話

ーーーー

おせち料理が並んだ
卓袱台に皆が揃い キヨが言う

咲ちゃん、ちょっとお味みてくれる?
昆布巻きをひと口、おいしいです。

妹は栗きんとんに夢中
咲は伊達巻を実の分、取り分ける

円は箸を止めて ストーブの上のお餅眺める
ぷぅと膨れ ゆっくりとしぼむ姿が愛らしかった

第九話

ーーーー

この急須は……? お店に謝らなくちゃ
キヨはまちがうことが増えた

いくつかの町を転々とし
そのたびに「ふるさとに帰りたい」と云う

家はやがて 空き地になった

楓の枝に腰かけ 貨物列車を眺めた畑
隣の公園の錆びたブランコ

静寂と鉛色の雪雲の町を後に
円はキヨを想った

第十話 [ 終 ]



<完>


この作品は今後、加筆・修正後に
ひとつの記事にまとめる予定です。


あとがき

おはようございます。年始休暇の連載小説として、昨年夏から温めていた本作品。

本作は一枚の油絵、やや抽象的な風景画から生まれました。深い雪に覆われた小さな町の風景。小さな家、木の電信柱、鉛色の空。

このエピソードを、本編と絡めた構成に悩みました。
大きな作品にするつもりのない、でも軽い物語にはしたくはない作品。

600〜800字程度で、朝刊風の連載小説を書きたい。
けれど、創作は嘘はつけません。本をあまり読めず、言葉の進化はのんびり。発信する度胸はついたかな。

作者本人の内面が、物語に反映します。胸に響き、記憶に残ること、肚の底から噴き出す想いや意思。
文字で伝えないことには、このnoteの世界で生きることができません。

創作を通して、多くの方々に希望やインスピレーションが生まれ、自らの手で何かを生み出し、届くことが自信や勇気になり、周りも自分も活き活きと暮らす原動力となりますよう、願っています。


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スケッチ風に軽く書きました。
つじつまや、描写の甘い箇所が多数ありますが、何か感じたこと、思い浮かんだことなどがありますか?
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#86[8Links]赤とんぼと木漏れ日[小説スケッチ]

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枝ぶりがNG🤭

■年始のご挨拶

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


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鳥を描くのが難しいです
種類もですが、
顔が時々マヌケになります(笑)


煮こみ?
【小話】まさか本当に、220号として
発行することになるとは
我ながら、いい読みでした😏
(セルフ・シンクロニシティ)



次回もお楽しみに✨


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