【お坊さんも実践】歩きながら「イヤな気持ち」をリセットする方法
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
「怒り」や「不安」などのネガティブな感情を抱いているとき、「できるだけ、明るく前向きなことを考えよう!」と思ったものの、なかなか気持ちが切り替えられず、ネガティブな気持ちがどんどん膨らんでしまうことって、ありますよね。
「それって、自分だけかも」
「元々、自分はネガティブ人間だから……」
そんなふうに思ってしまいがちです。
しかし、「それは、人間としてごく自然なことだから、心配無用」と断言する人物がいます。
国内外で4万人以上の実践者がいる「マイブレス式呼吸法」の開発者で、『呼吸で心を整える』の著者・倉橋竜哉さんです。倉橋さんは、著書の中で次のように語っています。
本来、怒りや不安は、人間の防衛本能として誰にでも備わっている感情です。
怒りを奮い立たせることで、敵をやっつけることができますし、不安を感じるおかげで、将来の備えをすることができます。
外敵に囲まれて「明日、命を落とすかもしれない」という環境では、生き延びるために必要な感情でした。
だから、そのままにしておくと頭の中でドンドン膨らみ、自分の身を守ろうとするのは、至極当然のことなのです。
――『呼吸で心を整える』より
しかも、私たち現代人は、昔の人以上になりやすいようです。
現代社会における怒りや不安などの感情は、人間関係をギクシャクさせたり、仕事の生産性を落とすといった悪い影響を生み出すことが増えました。過剰なストレスが胃潰瘍やガンなどの症状になって現われることもあります。
人は現代社会に合わせて「肉体機能が衰える」という進化をしましたが、それに伴った「心の進化」は、まだできていないのです。
――『呼吸で心を整える』より
私たち人間の「心の進化」が、「現代社会の進化」に追いついていないわけですね。
では、追いついていない「心の進化」を補うために、どのように対処していけばいいのか?
それに効果を発揮するのが、倉橋さんが開発した「マイブレス式呼吸法」です。私たちは、意識的に呼吸をコントロールすることで、心の状態もコントロールすることができる術を持っています。つまり、呼吸を意識的にコントロールすれば、怒りや不安といったネガティブな気持ちが膨らむのを防ぐことができるのです。
*
イヤな気持ちをリセットする呼吸法
倉橋さんが開発した「マイブレス式呼吸法」の1つに、イヤな気持ちが膨らむのを防いだり、イヤな気持ちをリセット&切り替えるために効果的な呼吸があります。
それが、「歩く呼吸」です。
「歩く呼吸」とは、文字どおり、歩きながらする呼吸法です。
「呼吸すること」と「歩くこと」。この2つのことだけに意識を向けるだけで、それまで考えていたことを頭から消して、思考をリセットすることができます。
(中略)
「歩く呼吸」を実践することで、気持ちの切り替えがスムーズにできるようになるでしょう。
たとえば、朝の通勤時に「歩く呼吸」を実践すると、「今日もしんどいな」「午前中の会議がイヤだな」というマイナスの気持ちを切り捨てて、フレッシュな気持ちで仕事に取りかかることができるようになります。
帰宅時に実践をすれば、頭の中の仕事モードをオフにして、リラックスして家庭に戻ることができます。
実践する場所は、歩けるところであればどこでも大丈夫です。服装や靴も普段どおりの格好でOKです。
通勤や買い物などで外出するとき、歩くついでにできるので、わざわざ「歩く呼吸のための時間」を取る必要はありません。
――『呼吸で心を整える』より
歩きながら座禅に近い効果を得られる
実は、倉橋さんが開発した「歩く呼吸」の基になったのが、「歩行禅」というものだそうです。
歩きながら座禅に近い効果が得られるのが「歩行禅」です。歩くことに意識を集中して、それ以外のことはできるだけ考えないようにします。頭をスッキリさせ、心を穏やかにする効果があります。
座りながら精神を統一し、心を穏やかにする修養が「座禅(坐禅)」です。最近は各地のお寺で座禅会が開催されて、一般の方でも参加できるので、人気があるようです。
座禅というと、「足を組んだ独特の座り方をして、足がしびれるのではないか」とか、「少しでも体を動かすと、大きな棒(警策)で背中を叩かれるのでは……」といった「厳しい修行」のイメージがありますよね。
私自身、過去に何度か座禅会に参加したことがありますが、座り方に慣れていない頃は、足の痛みがずっと気になったり、終わったあとに立ち上がれないほどに足がしびれたりした経験があります。
座禅会という特別な場に参加して、みんなと一緒に禅の世界を体感することも趣があってすばらしい体験ではありますが、わざわざ特別な時間をつくらずとも、日常生活の中で禅の世界を簡単に感じられる。それが「歩行禅」です。
――『呼吸で心を整える』より
なるほど。歩きながら座禅するというイメージですね。
「歩く呼吸」のやり方
倉橋さんが提案している「歩く呼吸」のやり方は、次のとおりです。
【やり方】
①目線は少し上にあげて歩く。
②歩きながら、息を吐くところからスタート。
③ゆっくり息を吐いて、十分吐ききったら2、3秒だけ息を止める。
④力をふっと抜いて、自然と入ってくる息を鼻から吸う。歩数を数えながら、②~④を繰り返す。
【ポイント】
◎「吐くときに8歩、止めるときに4歩、吸うときに4歩」というように、同じ歩数のサイクルで「吐く・止める・吸う」を繰り返していく。
◎歩数のテンポは、「三・三・七拍子」がおすすめ。
◎行なっている最中に雑念が浮かんできたら、いったん横に置いて受け流す。
◎意識して息を吸おうとしない。
◎目線を上げすぎて、足元に注意。
◎通勤途中の歩いている時間、ずっとやるのではなく、だいたい50mぐらい、電信柱2本分ぐらいの距離で取り組む。
――『呼吸で心を整える』を基に作成。
▼「歩く呼吸」のやり方を図版化したものはこちら(『呼吸で心を整える』より)
なぜわざわざ目線を上げて歩いたほうがいいのか? ここにも心理学的な意図が隠れています。
歩いているときは、思考がループ(繰り返し)しやすく、マイナスなこと考えていると、どんどん深みにはまってしまうことがあります。しかし、目線を少し上げて「歩く呼吸」をすることで、思考のループを断ち切ることができます。
――『呼吸で心を整える』より
長い距離より、短い距離を繰り返す
実施する距離は、長ければ長いほど良さそうに思えてきますが、実際のところはどうなのでしょうか?
距離を長くするのではなく、回数を増やすようにしてください。
たまに、「歩く呼吸をやっていると気持ちがいいので、30分の通勤時間中ずっとやってしまいました」と言う人がいますが、これはむしろNGです。
徒歩で30分の時間があれば、ずっと「歩く呼吸」をするのではなく、50mの距離で行なうことを何度か繰り返します。
個人差はありますが、目安として30分間歩いても2、3回です。何十回もひたすら繰り返すことはありません。
なぜなら、距離や回数を増やせば効果が高くなるかといえば、そういうものではないからです。
その代わり、この50mの間は「考えることを捨てる」のに集中をします。歩数と呼吸のリズムをカウントすることに意識を向けて、その後の仕事のことや家事のことなどは、頭に入れないようにします。
距離や回数を増やすと、本来の目的である「考えることを捨てる」のがだんだんと疎かになって、惰性で歩数と呼吸のリズムをカウントしがちになります。
電気のスイッチを切り替えるときに、ONとOFFを何度も繰り返さずに、1回だけパチンッとスイッチを押せば済みますよね。何度もガチャガチャスイッチを押すと壊れてしまう恐れがあります。
気持ちのスイッチを切り替えるのも同じです。何度も繰り返すのではなく、できれば1回で、1回で物足りなければ、2、3回で済ませたいところです。
――『呼吸で心を整える』より
*
いかがでしたか?
倉橋さんが開発した「マイブレス式呼吸法」をベースにした『呼吸で心を整える』では、今回ご紹介した「歩く呼吸」以外にも4つの呼吸を取り上げています。
◎ゆるめる呼吸:緊張感を和らげる
◎数える呼吸:集中力を高める
◎声を出す呼吸:頭の中に浮かんだ雑念を吐き出す
◎鎮める呼吸:イライラや怒りを鎮める
呼吸と心が深く関連しているメカニズムを説き明かしながら、それぞれの情動に合わせた呼吸法をわかりやすく解説しています。興味がありましたら、チェックしてみてください。