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【マーケティング】他社よりも良い商品・サービスなのに、なぜ売れないのか?
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
商品・サービスの差がつきにくくなっています。
それは、目まぐるしい技術革新が進み、その機能や価格のレベルも頭打ちになっている現状、いわゆる「コモディティ化」が常態化しているからです。
そんななかでも、
「競合他社より良い商品(サービス)だ!」
と自信をもっているのに、なかなか売れない……。
何が問題なのか?
どうすればいいのか?
そんな悩みを抱える経営者、営業パーソン、マーケティング担当者は多いようです。
今まで2万人超の消費者の潜在ニーズを掘り起こしてきた、気鋭の消費者心理分析専門家として知られる犬飼江梨子さんは、新刊『消費者ニーズの解像度を高める』の中で、「他社よりも良い商品・サービスなのに、なぜ売れないのか?」の原因追究とともに、その打開策の糸口について詳しく解説しています。今回はその該当箇所を全文公開します。
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「コモディティ化」「不満なし」の時代の抜け道はどこにある?
「まあまあ満足しています」
「特に不満はありません」
「しいていえば、もっと安くしてほしいです」
今まで顧客に対し実施してきたインタビューの中で、マーケターの皆さんはこのような言葉を耳にしているのではないでしょうか。
今の時代、商品・サービスの差別化は一段と難しくなっています。スマートフォンを例に取ってみましょう。高性能カメラ、長時間バッテリー、大容量ストレージ……、どのメーカーの製品もほぼ同じ機能を備えています。これこそが「コモディティ化」の典型例です。
先日打ち合わせをした、ある大手家電メーカーの商品企画担当者がこう嘆いていました。
「新製品の開発のたびに消費者調査をしているのですが、『今お使いの製品に不満はありますか?』と聞いても、ほとんどの人が『特にありません』と答えるんですよ。これじゃあ、何を改善して、どんな商品をつくればいいのかわからない……」
このようなお悩みを抱える企業は少なくありません。
しかし、「不満がない」という回答は、実は氷山の一角に過ぎません。
想像してみてください。あなたが毎日使っているキッチン。「特に不満を聞かれてもパッと思い浮かばないなあ」と思っていても、実は無意識のうちにちょっとした使いづらさを感じているかもしれません。
例えば、こんな感じです。
◎パンやトマトを切るときに包丁の切れ味が悪くて少々ストレス。
◎鍋の取っ手が熱くなりすぎて素手で持てない、毎回布で包んで持つのが面倒。
◎シンクを使った後、水滴の飛び散りを毎回拭くのが地味に面倒。
これらは、普段は意識していない小さな、小さな「不便」です。しかし、この「無意識の不便」こそが、イノベーションの種なのです。
消費者の無意識に潜む深層ニーズを掘り起こす2つの手法
では、どうすれば消費者の無意識に潜む深層ニーズを掘り起こせるのでしょうか?
本書では以下の手法で深層ニーズを掘り起こす方法をご紹介していきます。
◎観察調査:消費者に自分の行動をその都度記録してもらい、言葉にされない不便さを発見する。
◎デプスインタビュー:単に質問するだけでなく、消費者の日常生活や価値観まで踏み込んで深く掘り下げる。
これらの調査手法を用いて効果的な調査設計を行なうことで、表面的な「不満がない」という回答の奥に潜む真のニーズが見えてきます。
コモディティ化が進む現代だからこそ、消費者の深層心理を理解することが重要です。それは、単に商品を改善するだけでなく、ブランド全体の価値を高め、市場でのリーダーシップを確立する鍵となります。
他社よりも良い商品なのに、なぜ売れないのか?
「うちの商品は他社よりずっと安くて使いやすいんです。でも、なぜか売れないんですよね……」
こんな悩みを抱える企業は少なくありません。すばらしい商品を開発したのに売れないのは、なぜでしょうか?
その理由を探ってみましょう。いくつかの要因が考えられます。
①推しポイントが不明確
パッと見ただけで商品の良さが伝わらない場合、消費者は他の商品と比較した際に、その商品を手に取る理由を見つけられません。製品の特長や強みが明確に伝わっていないことが原因です。
【例】高機能な炊飯器を開発したが、「何がすごいの?」とひと目で理解できない。
②自分が使うイメージが湧かない
消費者がその商品を購入した際に、どんなときに使えそうか、どのような効果を期待できそうかが見えてこない場合、購入に踏み切る動機が弱くなります。使用後のイメージを想起させることができなければ、購入は躊ちゅう躇ちょされがちです。
【例】 高性能な調理器具を開発したが、どんなときに使えそうか? 使うと、どうなれそうか? が具体的にイメージできない。
③購入の後押しが弱い
消費者にとって、「これは信頼できそうだ」と認識する情報が不足していると、購入に踏み切ることができません。「買って失敗したくない」、そう思う人に向けてコミュニケーションを設計する必要があります。著名人の推薦、ランキング上位、口コミ評価、商品の良さを証明する根拠(研究結果)、有名なメーカー、歴史・伝統のある専門店等、最後のひと押しが必要になります。
【例】 新しいサプリメントを開発したが、効果を裏付けるデータや口コミが不足している。
消費者が知りたいのは、「機能的な特長」ではなく、「どのように良いのか」──明確にすべき4要素
これらの問題は、商品が「機能的な特長」のみを伝えている場合に起こりがちです。重要なのは、その機能が消費者にとって「どのように良いのか」を伝えるために、以下の4つの要素を明確にすることです。
◎ターゲット:誰のための商品か?
◎使用シーン:どんなシーンで、どのように使用するのがいいか?
◎エンドベネフィット:使用して得られる消費者のメリットとは何か?
◎RTB(Reason to Believe):ベネフィットは「どのような製品特長」によってもたらされるのか?
これらの要素を緻密に考え抜いて訴求することで、消費者は初めて「この商品は他社よりも優れている」と認識します。「これは私に向けた商品だ」と消費者に感じてもらえるかどうか。それが売れる商品を生み出す重要な鍵となります。
例えば、ある化粧品ブランドが開発した「美容液」のケースを見てみましょう。
◎ターゲット:30代後半〜40代の働く女性。
◎使用シーン:忙しい朝の準備時間。
◎エンドベネフィット:朝に使ってグッとハリツヤのある肌へ、自信を持って出社できる。
◎RTB:独自の美容成分Xが肌の奥深くまで浸透し、即効性のある潤いを与える。
このように、単なる機能の説明ではなく、消費者の生活や感情に訴えかける形で商品の価値を伝えることが重要です。
「これは私のための商品だ!」「こうやって使えば良さそう!」と感じてもらえるかどうか。それが売れる商品を生み出す重要ポイントです。
〈著者プロフィール〉
犬飼江梨子(いぬかい・えりこ)
消費者心理分析専門家。株式会社イー・クオーレ代表取締役。米国NLP協会認定マスタープラクティショナー。LABプロファイルトレーナー。
2005年、株式会社ドゥ・ハウス(現・株式会社エクスクリエ)に入社。マーケティングリサーチ部に所属。食品、飲料、化粧品、医薬品、日用雑貨品のメーカーを主なクライアントに持ち、クライアントの課題解決に向けて、定量調査から定性調査まで幅広い調査に携わる。2013年、株式会社イー・クオーレ創業。定性調査をメインの事業に据える。膨大な質的データをわかりやすくビジュアル化することが得意。消費者心理分析専門家として、20年間に500案件以上を受託し、2万人の消費者にインタビューを実施。人の心と脳の仕組みを学び、インタビューに活かすため、心理学・脳科学について学ぶ。心理学的アプローチを取り入れたラポール形成、深層心理を掘り下げるインタビュー手法について研究。エビデンスを踏まえてユーザーを体系的に分類するプロファイリングメソッドを確立。リサーチ結果からより精度の高いセグメンテーションとターゲティングを可能にした。狙うべきメインターゲットに対し、どのような施策を行なうべきかの提言には定評がある。全国各地での講演会や「デジタルマーケターズサミット」への登壇、「MarkeZine」(翔泳社)等の各種メディアに寄稿し情報を発信中。
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▼新刊『「消費者ニーズ」の解像度を高める』の「はじめに」「目次」は、こちらで全文読めます。