「全て完璧じゃなくていい。自分を労わること、自分を優先することを大切にしてほしい」。―過去にメンタル不調を経験された、桃果愛さんにインタビューしました。
今回は、「自分を愛する」、「自分を大事にする」ことを実践している方の声をお届けしていきたいと思います。
先日、桃果愛さんという、過去にメンタル不調を経験された方にインタビューさせていただく機会がありました。桃果さんは精神科の看護師とファッションモデルという二刀流の経歴を持ち、日本で初めてのプラスサイズモデルとしてデビューされました。現在はモデル、モデル事務所のプロデューサー、YouTuberなど幅広く活躍。インスタグラムなどSNSでも積極的に情報を発信されています。
明るくポジティブな印象の桃果さんですが、ここまで来るには長い道のりがあったとか。お話を伺うなかで共感する部分、そして FLOWUSが大事にしたい価値観と通ずる部分がたくさんあり、皆さんにも桃果さんの言葉を紹介したい! と思いました。実際、私はとても勇気づけられましたし、こうなれたら素敵だなと思いました。
ぜひ、読んでいただけるとうれしいです。
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大庭:メンタルの不調を経験されたと伺いしました。お話いただける範囲で構いません。どのようなことを経験されたのか、具体的にお話いただけることはありますか?
桃果さん:21歳の看護学生3年生のときにうつ病になり、一年間休学しました。当時はお風呂に入る気力すらなかったのを覚えています。うつ病時代は、真っ暗なトンネルの中にいるような感じで出口が分からない状態でした。
在学中は「看護師の資格を取る」という目標があったので、一年休んだら復帰しようと思っていましたが現実はそうもいかず……。体調が良いタイミングで授業を受講したり卒論を作成したりしながら少しずつ社会復帰をしていきました。卒業後は、精神科の看護師として働きはじめました。
今改めて思い返せば、体調を崩していたときはいつも自分のことを後回しにしていました。何か悪いことがあれば自分のせいだと責め続け、常に完璧を求める余裕のない状態でした。
そんな中、自分を大事にしようと思えた最初のきっかけは“人間関係”でした。以前は「何でも経験しなければ」というマインドを持っていたので、多少苦手な人でも自分が我慢すればいいやと思っていましたが、無理をして関わっていたからか上手くいかないことが続いたんです。
そこで、
自分を優先することを大切にしたら、環境が変化し徐々に物事がプラスの方向に進んでいったんです。
大庭: 「自分を大事にしよう」と思えてから、気持ちの変化はありましたか。
桃果さん:自分へかける言葉を大切にするようになりました。自分の心が擦り減らないように、関わりたい人とだけ関わるようになりました。相手は鏡と考え、大切にしたいと思う方に対しては笑顔で話すよう心がけています。
大切なのは、自分が心地良くいること、自分の可能性を否定しないこと。自分だけの居場所があればいいやと思えるようになったんです。全て完璧じゃなくていい、良い意味で適当な人間になろうと思えるようになりましたね。元々は頑固な性格なんですが、「自分の感覚を信じよう」と思えるようにもなりました。
気分が落ち込んだときの自分なりの対処法を見つけることも大事だと思います。私の場合は、
・おいしいものを食べ、たっぷり睡眠をとる
・マッサージに行く
・いま、目の前の仕事や物事に没頭する
・スマートフォンを極力見ないようにする
・休日は家族とのんびり過ごす
・悩んだときは今思っていることを文字に起こし、これは自分が本当に大切にしたいことなのかどうなのかクリアにする
などなど。
とにかく、自分を労わることを大切にするようになりました。
大庭:インスタグラムやYouTubeを通じて発信する中で、ときには周りから心無い意見を言われこともあると思います。それに対してはどのように考えていらっしゃいますか?
桃果さん:投稿した人の中には、私が発信する内容ではなく、憂さ晴らしや嫌なことがあって当たっている方もいらっしゃるので、全て受け止めないようにしています。
今年の3月にパリ・ファッションウィークに出演したとき、プラスサイズのモデルが私しかいなかったんです。今でこそ「ボディポジティブ」が日本でも少しずつ浸透してきましたが、まだまだ周りはスレンダーなモデルさんたちばかりというのが現実。でもそこで、「容姿は関係ないということを自分が発信しなくては!」と強く思ったんです。
実際に私のことをSNSなどで見ていただいた方から、「自分の好きなファッションを楽しめるようになりました」とコメントをいただくことも多いですよ。先日美容院に行ったとき、私のYouTubeを見て「マインドが変わった」、と泣いて話してくださった美容師さんもいらっしゃいました。私の声が届いた! と思ったらすごくうれしかったです。
大庭:自分を大切にする感覚をまだ持てていない人に、どんな声をかけてあげたいですか?
桃果さん:私は、「自分を愛してハッピーに」をモットーに発信しています。もちろん、ポジティブな言葉を見たくない方もいらっしゃると思うので、ただ明るく元気が出るような言葉を並べるだけでなく、「ありのままの自分でいいよ!」という言葉を発信することを大切にしています。
体調を崩してしまった期間は、より多くの人を救うために必要な時間だったのではないか、と今なら思えます。もし皆さんのまわりに、メンタル不調の方がいらっしゃったら、頼れる存在がいるんだよ、ということを伝えあげてください。
「いつでも声をかけてね」「今日ごはん行かない?」など、優しい言葉をかけてあげてください。
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実際に桃果さんにお会いしたとき、“たおやかでありつつ凛とした”オーラを感じました。芯がしっかりしていて冷静で、視野が広くて温もりがある――そんな魅力が、インタビューを通してひしひしと伝わってきました。
流行という、常に消費され続けるファッション業界において、しかもモデルという人目につくお仕事を、これだけ真面目な方がされることに辛さを感じることもあるのではないか、とお伺いしましたが、
それでも「知っていただく、認知していただく」ということの重要性を説かれていました。
そして、ご自身にかかるストレスを、うまく受け流されているのがとても印象的でした。
読者の皆さんに、桃果さんの思いが届くといいな、と思っています。