〜note気になる人〜 2人目
詩集・きんつばふたば様
"夜だから許せると思った"
私は
この題名を目にした瞬間
危うく射精しかけた
大袈裟ではない
しなかったにも関わらず
所謂"賢者タイム"に陥った
心地よい痙攣に前後不覚
甘美な気怠さに今しばらく
浸っていたいと切に願った
それもそのはず
私には到底作れない句だと
猛烈に嫉妬し一方で喜んで
白旗を掲げた
奥行き膨らみ余韻
その気にさせる句
性的な匂いもあるが
もっと刹那的な痛みが
脳天へと突き抜けた
それだけか?
それだけではあるまい
他者?自己?
認めよう許そうとする
包容力
懺悔と慈愛
この限られた字数で
生き様を感じさせる
懐の深い句に思えた
受け取り様によって
変幻自在
感受性
試されてるような
リトマス試験紙
最早この題名を
題名だけとして
見れなくなった衝撃
自由律俳句
そこが主戦場の身にとって
見過ごすことなど出来ようか
惚れた
初見から随分経った
冷めるどころか
益々支配されてる自分
虜
完落ち
山頭火のメンヘラとは
全く異なる
放哉の虚空とも違う
近い雰囲気は住宅顕信だが
やはり似ていない
句を作ることに執着し
突き詰め燃焼し
見事討ち死にした顕信
顕信唯一の句集『未完成』
その中に
"夜だから許せると思った"
これが掲載されていても
なんの違和感もない
つまりなんら遜色ない
独立した自由律俳句としての
出来栄え
だが
きんつば様には少なくとも
句作の意図は無いはず
身と心
これまでの経験から
自然に生まれた言葉だろう
外連味が無い
だから
本来の"自由"を兼ね備え
四肢が余裕を持って伸びている
美しい
見ず知らずの男に激賞されるなんて
これっぽっちも思ってなかっただろう
彼女にとってある意味これは
"事故"かもしれない
私にとっても出会い頭の"事故"
謂わば"掘り出し"
"金塊"掘り当てた興奮
この喜びを
誰かに知って欲しくて
私は今これを書いている
題名に限らず
きんつば様の作る詩も
なかなかどうして
私を離さない
"私はやっぱり女だった"
"女だから男を知らない"
"嘘の言葉"
"掴めそうな星だった"
どれも句になる
キラ星の詩が並ぶ
"夜だから許せると思った"
白眉
やはり私はこれを推したい
場面の瞬間と印象の連続
打ち込まれる点描により
段々と彼女が姿を現す
情景
書いてるだけなのに
肉に食い込む
彼女の書くものは
肯定と否定が
危うい均衡で連鎖する
自己防衛と捨て身が
絡み合い相殺されることで
輝き始める
畢竟我々は
彼女の傷口を見ることになる
文字通り"肉声"
願いつつ
拒否を繰り返す
彼女が露わ
矛盾は彼女の強力な武器
彼女には
頑強な盾と
鋭利な剣があって
それを構えて
対峙するのだが
こともあろうか
刃の先は彼女自身
諸刃
自らの剣で裂かれ
顔を出した肉が
表情一つ変えずに
こちらを見てくる
血が滴る傷口の奥で
肉と目が合う
こちらを凝視したまま
全く目を逸らさない肉
こちらは目を背けたいのに
意に反してもっと奥へと
深々貫きたい衝動
意を汲んだ彼女は
更に肉の奥へと
自らの剣を突き立てる
止めどなく血は流れる
吠えている
叫んでいるのに
彼女に表情は無く
こっちを向いたまま
私は更に奥へと願う
彼女は応える
肉声に耳を塞ぎたくなる
点描と矛盾の連鎖
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謳った詩と思って読むと
唐突に彼女の肉片
差し出されるだろう
彼女の声なき声を
血の滴る肉を
私はいただくだけ
彼女は私を見据える
彼女は
自らの肉を抉り
私を凝視する
痛みや理由や嘘や裏切りが
瘡蓋(かさぶた)になる前に
彼女は再び自らの剣で
刺し貫く
誰かを好きになること
生きていること
他者と自己
矛盾ごと
血を流し
肉を見せる命を
誇るでもなく
蔑むでもなく
癒えることない
裸体を曝して
血まみれのまま立つ
きんつば様
私はそれを
美しいと思う
つくづく美しいと願う
詩集・きんつばふたば様は
そんな女
南無観世音菩薩
合掌
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