知の学びを創造する者

頭の中を整理する創作の場としてnoteを始めました。 頭に浮かんだこと、短編小説(作品はフィクションです)などを書きたいと思います。

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【超短編小説】 少女と崩壊する街

「こんなはずじゃ」 僕がスイッチを押した時にはすべてが終わった。 地面が割れ、建物は崩れ始めた。 街中の人々は混乱し、右往左往と走り回った。 ただし、一人の女の子だけが崩壊していく街をじっと眺めていた。 僕は女の子に駆け寄り、 「危ない。君もここから逃げないと」と言ったが、 「さよなら、地球。そして、二度目のお別れをしよう」と少女は微笑むだけだった。 「何を言ってるんだ。君は死ぬかもしれないんだぞ」と僕は声を荒げた。 しかし、少女は平然とした様子で、こちらに

    • 【超短編小説】 高架下の交差点

      高架下を走る。 人通りの少ない暗闇を誰にも邪魔されず、 息を切らす。 しんどいのは承知の上。 ある意味で、自分との闘い。 手を大きく振るが、身体は思い通りにならない。 足が痛くなるにつれ、弱音を吐きそうになる。 こんなことに何の意味があるんだと、負の感情がよぎり出した。 12月の風は冷たく、寒さが踏み出す意欲を失わせようとする。 だけど、ここで立ち止まったら、もう前には進めない。 それが分かるからこそ、今は走るしかない。 状況がどうであれ、前しか見ていな

      • 【超短編小説】 カレンダーは、そこにあった

        カレンダーは、そこにあった。 誰に見つけられることもなく、ただ曜日を知らせてくれた。 月が変わる毎に、破られていった。 最後に残ったのはカレンダーを繋ぎ止めていた紙の束だった。 決して綺麗な切り口ではなかったし、画鋲が刺さった跡がくっきりと付いていた。 「お前はカレンダーだったんだ」 前からそうだった。 でも、今はメモ用紙になっていたが、カレンダーはそれを自覚していなかった。 「小さくなっても、何も変わらない」 カレンダーは、たぶん、うなづいた。 「もう曜

        • 【ポエム】 塊

          塊が残る。 思いは募り、途轍もない速さで砕け、 巨人の如く、壁を越えてきた。 「ああ、なんとも哀れだ」と同情する。 確かに、不幸に違いない。 どこかで昇華したかっただけ。 石でもよかったのに。 ぶつける場所も無かったのだろう。 いつからか、そんな世界線が出来上がってしまった。 「Are we wrong?」と聞かれても、 答えなど最初から無かった。 だから、誰も悪くない。 本当は誰も悪くなんてないんだから。

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        【超短編小説】 少女と崩壊する街

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        • 閉じこもりの日々に別れが来るまで
          5本

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          【超短編小説】 深夜ラジオ

          「ラジオネーム、今日寝れなかったさんからお便りです。いつも楽しくラジオを聞いています。私はある友人のことを心配しています。話しかけても何も答えてくれません。どうすればいいでしょうかとお便り届きました」 「そうですね。どんな事情なのかよく分かりませんが、色々と悩みますよね。声をかけるべきなのか、そっとしておいてあげるべきなのか。もしかすると、今日寝れなかったさんはその友人のことが気になって夜も眠れないということなのでしょうか。うーん、非常に悩ましい。 僕もね、こういう経験は

          【超短編小説】 深夜ラジオ

          【超短編小説】 曜日姫(princess of the week )

          むかしむかしあるところに、7人のお姫様がいました。 月曜日のお姫様、火曜日のお姫様、水曜日のお姫様、木曜日のお姫様、金曜日のお姫様、土曜日のお姫様。 そして、日曜日のお姫様。 お姫様はそれはそれはとても可愛らしく、大きなお城の中で幸せに暮らしていました。 そんなある日のこと、王様は7人の姫たちを呼び出し、ある頼み事をしたのです。 「最近、こんな噂を耳にした。それは、ここから少しばかり離れた村で悪い村長によって村人がずっと働かされていると聞く。 どうやら曜日という区

          【超短編小説】 曜日姫(princess of the week )

          【超短編小説】 piano

          ピアノの音が聞こえる。 タイトルは分からないが、クラシックでよく耳にする曲だ。 昔から音楽は苦手だったが、演奏を聞くことは好きだった。 誰かがレッスンでも受けているのだろう。 こんな時間に音がするのだから、そうに違いない。 どこかの家から響く重低音は、私に向けられて演奏されているようだった。 夜の静けさとともに、ピアノの音色が何かを運んでくる。 演奏者は落ち着きを払いつつも、楽しそうだった。 私は多分そのように演奏は出来ないだろう。 三十分ほどして音は途切れ

          【超短編小説】 piano

          【超短編小説】 好きな人

          「好きな人、いるん?」 学校の帰り道。 偶然、一緒に帰ることになったあの日、君は僕にそう尋ねてきた。 僕はクラスが同じになった頃から君のことが好きだった。 でも、強がって「いるに決まってるじゃん」と言った。 後で聞いた話では、当時の君は僕のことが好きだったようだった。 周りの女子達からは「バカ」と言われた。 だから、僕はあの時に戻ろうと思う。 もう一度、あの時あの瞬間に「好きだ」と伝えれば、僕は君と付き合うことができるかもしれない。 時空が歪んでも、未来が変

          【超短編小説】 好きな人

          【超短編小説】 another world

          それは突如して目の前に現れた。 薄暗く青を帯びた空だった。 静かな森林の先に目的となる場所があると言う。 これから待ち受けることが私には分からなかった。 忘れてはいけない記憶のようだったが、目をつぶってもそれが何か思い出すことができなかった。 でも、私はここにやって来たのだ。 ある人が言った。 「そこに行けば、君が求めているものが見つかるはずだ」 その場所は、another worldと呼ばれていた。 another worldには古い言い伝えがあった。

          【超短編小説】 another world

          連続小説「羊たちが眠る夜」は、一旦お休みにします。また再開予定です。

          連続小説「羊たちが眠る夜」は、一旦お休みにします。また再開予定です。

          【連続小説】 羊たちが眠る夜は 3

          羊たちと別れ、図書館に戻ると少女は慣れた手つきでポットに水を入れ、お湯を沸かし始めた。 トースターや冷蔵庫まで備え付けてある。 「君はここに住んでいるの?」と僕は尋ねた。 「まさか、そんな訳はないわ。ここの図書館はおじいちゃんが管理しているの。 だから、ここにある物は自由に使って良いのよ」と少女は微笑んだ。 そうこうしている内に、ロールパンの焼ける匂いがした。 「さあ、朝ご飯を食べましょう」と少女は言った。 僕はバターを塗り、少女はジャムを塗った。 テーブルの

          【連続小説】 羊たちが眠る夜は 3

          【連続小説】 羊たちが眠る夜は 2

          羊たちは図書館の入り口でメェーと鳴き始めた。 その鳴き声を聞くと、少女は突然目を覚ました。 「もう、こんな時間」と少女は慌てた様子を見せる。 少女は羊に近寄り、羊を撫でた。 撫でられた羊は心地良さそうだった。 「どうして図書館にやってきたんだろう?」 僕は疑問に思う。 「早く支度しなくちゃ」 「どこに行くのさ」 「決まっているじゃない。朝ごはんを食べに行くのよ。この子達はお腹をすかせているの」 図書館を抜け、500mぐらい進んだ先に草原が広がっていた。

          【連続小説】 羊たちが眠る夜は 2

          【連続小説】 羊たちが眠る夜は

          螺旋状の階段に一人の少女が座っていた。 壁には本棚が並び、規則的に色分けがされている。 「お兄さんも来たんだね」 少女は微笑んだ。 「僕は初めてさ。君は?」 「あたしは12回目。ここには色んな国の言語で書かれた本が集まっているの」 「君が読んでいるのは、一体?」 本には見たことのない文字が書かれていた。 「さぁ、何語かしら。でも、書いてある文字を読むことはできるわ」 「僕には分からないよ」 「文字をよく見て。ほら、あたしがなぞったところが読めるでしょ」

          【連続小説】 羊たちが眠る夜は

          【超短編小説】 久しぶり

          水面を歩く彼女は、私を見ていた。 「久しぶり」と言う彼女の近くを小鳥たちが飛んでいた。 これは現実なのか、ただの幻想なのか。 目に映る光景を私は直視しながらも、半ば疑いを抱かずにはいられなかった。 彼女は行方不明になっている。 それが5年前の秋で、某県にある湖だった。 その地域の大半は湖が占めており、人口よりも水の量が多いと聞いたことがある。 私の目に映る人物は、本当に彼女なのだろうか。 恐る恐るスマホで彼女の写真を撮ると、しっかりと画像に記録された。 「私

          【超短編小説】 久しぶり

          【ポエム】 スロー再生したら

          スロー再生したら、世界は違って見えて、 話している言葉も相手の顔もゆっくりと動き出した。 こんなにも早いスピードで会話を理解していることに気付き、 もしかすると聞き取れずに見逃した数多くがそこにあったのではないかと考えた。 話す行間に本当に言いたかった何かが隠されていて、 面倒臭そうに「はい、はい」と言っている。 何度も繰り返し聞いてみたが、何と言っているか分からない。 その言葉だけを切り取ることは出来ない。 デジタルのようでいて、中身はアナログだ。 液晶の

          【ポエム】 スロー再生したら

          【超短編小説】 ジョハリの窓

          私が彼女に会ったのはちょうど6年前の夏の終わり頃だった。 その頃は年齢的にも私の方が少しばかり若かったし、彼女も私と仕事をすることがなければ、生涯知り合うことがないはずの人だった。 彼女には竜巻が来ようが嵐が来ようが動じることのない気概が感じられた。 そのせいもあったのだろう。私は何を話すにしても彼女の前では自然と言葉が出てしまった。 「きっと計り知れないほどの経験を重ねてきたのだろう」と、 彼女の風貌と姿勢がそれを物語っていた。 漫画のような激しい戦いの末に負っ

          【超短編小説】 ジョハリの窓