【連続小説】 羊たちが眠る夜は 3
羊たちと別れ、図書館に戻ると少女は慣れた手つきでポットに水を入れ、お湯を沸かし始めた。
トースターや冷蔵庫まで備え付けてある。
「君はここに住んでいるの?」と僕は尋ねた。
「まさか、そんな訳はないわ。ここの図書館はおじいちゃんが管理しているの。
だから、ここにある物は自由に使って良いのよ」と少女は微笑んだ。
そうこうしている内に、ロールパンの焼ける匂いがした。
「さあ、朝ご飯を食べましょう」と少女は言った。
僕はバターを塗り、少女はジャムを塗った。
テーブルの上には『Cold morning & Hot night 』と書かれた洋書にMarieというサインがされていた。
「ところで、どうして君は本をなぞると文字を読むことが出来るの?」と僕は聞いた。
「そんなの簡単よ。あたし、魔法が使えるから」と少女は何事もないような顔をして言った。(つづく)