【超短編小説】 高架下の交差点
高架下を走る。
人通りの少ない暗闇を誰にも邪魔されず、
息を切らす。
しんどいのは承知の上。
ある意味で、自分との闘い。
手を大きく振るが、身体は思い通りにならない。
足が痛くなるにつれ、弱音を吐きそうになる。
こんなことに何の意味があるんだと、負の感情がよぎり出した。
12月の風は冷たく、寒さが踏み出す意欲を失わせようとする。
だけど、ここで立ち止まったら、もう前には進めない。
それが分かるからこそ、今は走るしかない。
状況がどうであれ、前しか見ていない。
昔からそんな人間だった。
携帯が鳴る。
『何してるの?』
「走ってる」
『今、どこ?』
「高架下の交差点」(完)