■「史実」と「説話」の間にあるものに目を向ける―『敗者たちの平安王朝【皇位継承の闇】』
来年の大河ドラマ『光る君へ』は、摂関政治が最盛期を迎えた平安時代中期が舞台です。初回放送日も決まり、SNS界隈でも少しずつ盛り上がりを見せています。
しかし、「平安時代」の文化や風習、歴史に馴染みのない方も少なくないでしょう。私自身、院生の頃はそのあたりの時代を専門に研究していましたが、知識そのものはそこで止まってしまっています。同じように、学生時代に習った内容が何となく記憶に残っている(気がする)、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのあたりを踏まえ、現在、書店では「平安時代」に関する書籍が毎月黙々と、でも、例年よりも張り切った量で刊行されています。事実、新刊棚を見ると、平安時代の文学の現代語訳や、その時代の人たちを題材にした小説が所せましと並んでいます。
それと共に、研究をしている方が一般向けに書かれた書物も、文庫の形で復刊されているのです。それは歴史学、文学問わず、惜しみなく刊行されていて、研究界隈の端っこに棲息していた私は心ひそかにドキワクとしています。
ここから何回かにわたり、そういった一般向けにかかれた専門書をご紹介しようと考えています。(一部、専門書以外も入りますが)。
長いこと、第一線で研究されている先生たちの書かれたものは、それぞれ筋が通っていて、知識だけでなく、そのあたりの歴史に関する見方も磨かれること間違いなしだからです。
何より、それらの本は読んでいるととても楽しい。日頃見慣れないこともあり、取っつきにくいイメージはありますが、そこを越えて読み始めれば、他の本と同じようにほんとうにおもしろいのです。
この記事がそのハードルを越えるきっかけになれれば、とても嬉しく思います。よろしければお付き合いください。
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今回は、歴史学の先生が書かれた本をご紹介します。
大河ドラマ『光る君へ』の時代考証を担当なさる倉本一宏先生のお書きになった『敗者たちの平安王朝【皇位継承の闇】』(角川ソフィア文庫)です。
■『敗者たちの平安王朝【皇位継承の闇】』
■倉本一宏 著
■角川ソフィア文庫
■1120円+tax
■2023年11月
※本書は2014年12月に刊行された『平安朝 皇位継承の闇』を改題し、加筆修正のうえ文庫化したものです。
■私たちはどうしても「イメージ」で語ってしまう
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