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思弁逃避行

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たこ焼きとたこ焼き機はどちらが先か。ピザ屋のメニューにある「焼肉屋さんのチョレギサラダ」への疑問。アボカドが果物に分類されることへの不満… もし気になるものをすぐに検索してしまう…
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思弁逃避行 00.はじめに

完全版は以下のリンクから

 去年の夏、「思弁逃避行」という怪文書を京都のyugeという場所にて販売していた。発行部数が少なかったのか、それとも内容が良かったのか、あらかた後者だとは思うのだが完売してしまったため、そしてもうかれこれ半年以上経つのでnoteにて少しずつ公開していこうかと思う。

 おそらくnoteに載せるにあたって少し文章を変えたり書き加えたりもしてると思うので、去年思弁逃避行のZ

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思弁逃避行 01.のこり5%

完全版は以下のリンクから

【01.のこり5%】

 炒飯の話である。誰しもが一度は食べた事があり、また戦った事のある、あの炒飯の話だ。

 店で食べる炒飯にはおおよそ欠点というものがない。だいたいが美味い。そして割と安い。しかも腹もふくれる。素晴らしいの一言だ。しかしそんな炒飯にも手のほどこしようのない欠点がある。

 「ごちそうさま」が一向に出来ないのである。

 ご存知の通り、炒飯は残りが5

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思弁逃避行 02.ものたりないものもの

完全版は以下のリンクから

【02.ものたりないものもの】

 馬刺しが好きだ。なぜか。うまいからだ。それなので馬刺しを食べるわけだ。

 それにしてもなんなのだろうか。馬刺しを食べるたびに思うのだが、なぜ馬刺しは「もうちょっとだけ食べたいな…」と思わせる量でしか出してくれないのだろうか。「もっとたくさん食べたい!」ではない。あくまで「もうちょっとだけ」なのだ。値段のせいだろうという正論を挟んでく

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思弁逃避行 03.茄子

【03.茄子】

 ナスはいい。

 ナスというものは煮ても焼いても揚げても美味い。外は紫、中はクリーム色というとても口の中に入れてもいいものとは思えないようなあの素っ頓狂な配色もいい。あのスポンジ状の食感は他の野菜では見ることがない上に、よく油を吸う。天ぷらや麻婆茄子などにした日には、もはや美味いだなんだとかいう話では済まされない。めでたい。めでたい味がする。

 そんな美味の権化として慣れ親し

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思弁逃避行 04.しりしりしらず

完全版はこちらのリンクから【04.しりしりしらず】

 にんじんしりしりという料理があるらしい。

 らしいというのも、まったくどんなものなのか知らないのだ。名前はたまに聞くのだが、どんな風貌をした料理なのか皆目見当がつかない。にんじんにいったい何をした。

 思えば和食は名前から、その料理は何をどうしたものなのか想像しやすい。

「鮭の塩焼き」

 じつに明快である。鮭を塩で焼いているのだ。

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思弁逃避行 05.明日のための空腹

【05.明日のための空腹】

 眠るに眠れず午前二時をまわった頃の話である。腹が減ってたまらなくなる。

 ラーメンが食べたい。カツ丼が食べたい。ハンバーガーが食べたい。とにかくがっつりとした何かがたべたくなる衝動は誰もが体感したことがある。そしてその気持ちをどうにもできずになにかを食べてしまうのだ。なぜなら私たちが生きる現代には、コンビニエンスストアなるものがあるからだ。二十四時間営業故、ポテチ

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思弁逃避行 06.麻婆豆腐実践

【06.麻婆豆腐実践】 

 中華料理を食べにいくと、100%の確率で口の中を火傷してしまう。

 なかでも麻婆豆腐は驚異の保温性を誇る。凶悪なほどの熱さだ。しかも辛さも持ち合わせているため、他の料理に比べより一層ダメージが深い。なぜ我々はそんな麻婆豆腐を食べるのか。美味いからである。

 そんな幸福と苦痛が隣り合わせの中華料理、麻婆豆腐だが、本場の人たちは一体どうやって安全に食事をとっているのだ

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思弁逃避行 07.並でよかった

【07.並でよかった】

 ラーメン屋に行く。

 大体のラーメン屋は小盛、並盛り、大盛りとサイズを選べるようになっている。さらにそこから特盛り、店によってはギガ盛りだなんて破格のサイズを用意しているところもある。つまりどのラーメン屋も基本的にお腹いっぱいになれるようにしてくれているのだ。また、私がラーメン屋に行く時はあらかたお腹がすいて仕方がない時だ。しかも私は男の子だ。お腹いっぱいに食べたいに

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思弁逃避行 08.おかわり

【08.おかわり】

 死のうと思ったのではなく、生きるのをやめようと思った。

 追われるように駆け抜けた就活の末、なんとか搾り取った内定で会社員という身分を手に入れた。しかしそんなことももう数年間の話であり、今やただただ起伏のない時間を消費し続けているだけのような気がする。何かとんでもなく楽しいことは起きないものかと友人たちで退屈を嘆いていたあの学生時代の日々こそがすでにとんでもなく楽しかった

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思弁逃避行 09.サラダをめぐる待ち時間

【09.サラダをめぐる待ち時間】

 ピザ屋のベンチで注文したピザが出来上がるのを待っていたときの話である。

 暇つぶしにと思ってメニューを眺めていると、サイドメニューに妙なものをみつけた。

「焼肉屋さんのチョレギサラダ」

 おわかりいただけるだろうか。なんとも言えぬ違和感が止まらない。

 まず、ここはピザ屋だ。焼肉屋さんなどではない。だというのにもかかわらず焼肉屋さんのサラダを出すとはな

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思弁逃避行   10.態度とカトラリー

【10.態度とカトラリー】

 「あいつは人によって態度をコロコロ変える」という言葉を揶揄として耳にすることが多々ある。そんなもの当たり前ではだろうか。まるでそういったことをする人間は裏表がある底意地の悪い奴だとでも言っているようだ。

 パスタはスプーンでは食べない。プリンに箸は使わない。パスタはフォークに絡めて、プリンはスプーンで掬うように、対象が変わればその都度どういった言動のカトラリーが一

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思弁逃避行 11.アボカドのパラメーター

【11.アボカドのパラメーター】

 アボカドという食べ物がある。

 奴はハンバーガーに挟まれていたりサラダに紛れていたりと、様々な場面で顔をだす。食感はしっとりとしていて、味という味はないに等しいのだが、もったりとクリーミーな印象だ。これがさっぱりとしたサラダの中にあると食感にアクセントを、味にはまろやかさが足されて実に美味い。しかしそんなアボカドにはおおきな問題がある。

 奴はフルーツなの

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思弁逃避行 12.見送りの呪文

【12.見送りの呪文】

 「おいしく召し上がれますように」

 たこ焼き屋さんで持ち帰り注文した時のことである。女性スタッフが丁寧に商品をこちらに渡しながら、そんな言葉を添えてきたのだ。当初はそのスタッフが独特な接客ワードを駆使しているのかとも思ったが、他のスタッフにも同じセリフと共に商品を渡されることがあったため、どうやらマニュアルか何かのようだ。

 おいしく召し上がれますように。店からして

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思弁逃避行  13.並ぶ寿司のために並ぶ

 昼間だろうがなんだろうか回転寿司屋というものは混んでいる。

 何故なのか。こんな昼間だろうが寿司を食おうという人がこんなにもいるのかと毎回寿司屋の前で驚いてしまう。かくいう私もその列にいるわけだが。
  しかし寿司はすごい。 安いモノを雑に食うことも出来れば、高いモノを贅沢に頂くこともできる。さらに言えば、こってりしたものを食べることも出来れば、あっさりとしたものを食べる事も出来るので、ことさ

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