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NHK大河『べらぼう』に学ぶ!吉原の“隠して惹きつける”心理トリック。現代マーケティングとの共通点。子育てにも有益?『フワッと、ふらっと、カリギュラ効果の心理学』
2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第三話のテーマは「一目千本」でした。
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「べらぼう」の主人公、蔦屋重三郎(当時25歳)のプロデュースによる「一目千本」は、
江戸の遊郭・吉原を舞台にした絵本で、遊女たちの姿を華やかな生け花に見立てた内容が特徴です。
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江戸時代、吉原は単なる遊び場ではなく、美と芸の粋を極めた文化の発信地でもありました。
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その華やかな世界を、美しく咲き誇る花々になぞらえたのがこの作品です。
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この作品は、遊女を「花」に例える比喩表現が特徴で、吉原の遊女たちの容姿や個性を、四季折々の花に見立てて紹介し、
遊女ごとに異なる花の種類を当てはめ、彼女たちの美しさや性格、気品を巧みに表現しています。
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遊女たちに見立てられた美しく咲き誇る花々同士が土俵の上で「相撲」を取るという設定の絵本で、
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絵は当時の人気絵師・北尾重政が描いています。
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「一目千本」の序文は次のような内容です。
この度は、吉原の遊女たちの華やかな競演、
「花相撲」にご来場いただき、誠にありがとうございます。
美しい女性も、二人揃えばそれぞれの魅力が引き立つもの。
ただし、その美しさはひとりひとり異なり、同じものは決してありません。
この花相撲では、四季折々の花に例えられた遊女たちが、その美しさや芸を競い合います。
紅白紫の色や様々な技が繰り広げられ、
お客様は東西それぞれの「花たち」の堂々たる姿に見入ることでしょう。
四季折々の花を遊女たちの姿になぞらえ、春夏を東、秋冬を西に配し、いよいよ華やかな取組の幕が開きます。
百の仕掛けが次々と繰り出され、東か西か、ご贔屓のお客様たちは手に汗を握ることでしょう。
いよいよ迎えた初日、東西の美がしのぎを削る様子に、誰もが目を奪われることでしょう。
「今日の取組はいまひとつだな」との評もあるでしょうが、花たちはどこ吹く風。
粋なお客様方は、じっとその妙技をご覧になっています。
お客様には、朝早くからのご来場、誠にありがとうございます。
この賑わい、花魁屋の尽力も追いつかぬほど。
この「四季の花相撲」、まさに目に焼き付けるべき一大勝負。
勝ち負けの行方は、お客様のごひいき次第。
どうぞごゆるりと、お楽しみくださいませ。
もしお気に召さぬことがありましたら、次の取り組みまでじっくりとご覧いただき、何なりとご意見をお聞かせください。
さらなるご要望がございましたら、どうぞお知らせを。
次の取組では、より粋な花試合をお見せしましょう。
見物人も多く、この勝負に間に合わなかった方々も、後ほど改めてお楽しみいただけます。
なお、勝負の裁定につきましては、公平を期すため、すべて行司にお任せくださいませ。
皆様方の粋な心意気で、どうぞよろしくお願いいたします。
お客様の評価が勝敗を左右し、その結果が今後の花相撲の展開に繋がります。
もし、何かご意見やご要望がございましたら、遠慮なくお申し付けください。
今後も、お客様に楽しんでいただけるよう、より一層の努力をしてまいります。
この「四季の花相撲」が、皆様にとって忘れられない思い出となることを心より願っております。
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「一目千本」では、遊女の心情や生活の裏側を、花の生態になぞらえて描かれています。
ただ当時の遊女たちがどのような性格だったのか、本当のところはもちろんわからないのですが、
大河ドラマ「べらぼう」では、実物の「一目千本」に描かれた内容に合わせて想像力豊かに、各遊女のキャラクターを創り上げていました。
「葛」に例えられた遊女・志津山は噂好き、
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「山葵」に例えられた遊女・亀菊はツンデレ、
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(当時は、ひらがなには濁点を打たないという記法を用いていました。なので、例えば「くず」は「くす」と表記されています。
なお当時用いられていた「ひらがな」である「変体仮名」の解読については以下をご参照ください)
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そして、「鳥兜」に例えられた遊女・常磐木は、殿方を快楽の奈落の底に突き落とす、アブナイ小悪魔・・
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という感じです。
「一目千本」は、吉原の遊女たちを生け花に例え、その華やかさと儚さを描いた絵本であり、
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蔦屋重三郎の出版物の中でも特に芸術性と文化的価値が高い作品です。
遊女たちの美しさと遊郭の世界観を、
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花々にたとえて巧みに描写することで、江戸時代の人々に吉原の魅力を伝えました。
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「一目千本」では、遊女の姿を描かず、
その特徴のみを花に例え、
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いわば「隠されているものを見たくなる人間の心理」をついたものとも言えます。
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人間は、何かが隠されていると「それが何なのか知りたい」「見たい」と感じることがあります。
この心理は、心理学では「カリギュラ効果」や「心理的リアクタンス」などの概念によって説明されます。
例えば、マスクをしている人の素顔を見たくなるのも、この心理が働いているからです。
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カリギュラ効果(禁止されるほど気になる)とは、「見てはいけません」「秘密です」と言われると、かえって気になってしまう心理現象です。
(この点については以下もご参考頂ければ幸いです)
例えば、「マスクの下の顔はどうなっているのか?」という疑問が湧くと、想像力が働き、ますます気になってしまいます。
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この効果は、映画や広告などにも利用され、"〇〇の秘密"といった言葉で人々の興味を引くことがよくあります。
また人は不完全な情報に直面すると、その「空白」を埋めたくなる特性があります。
例えば、マスクで顔の一部が隠れていると、「この人の鼻や口はどんな形をしているのだろう?」と想像し、補完しようとします。
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映画やドラマでも、物語の一部が意図的に隠されていると、観客は続きを知りたくなります。
人は未知のものや隠されたものに対して本能的に「知りたい」という欲求を持っているからです。
マスクをした人を見たとき、「この人の素顔は自分の想像通りなのか?」という好奇心が生まれます。
特に「魅力的なものが隠されている」と感じると、より知りたい気持ちが強くなります。
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コロナ禍以降、マスクを常に着ける生活が一般的になりました。
これにより、「あの人はどんな顔なんだろう?」という関心が高まります。
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特に目元が美しい人を見ると、「口元もきれいに違いない」と想像してしまうことがあります。
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「開けるまで中身がわからない」ものに対して、わくわくする気持ちを持つのも同じ心理です。
サプライズギフトや福袋などは、この心理を巧みに利用した例です。
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「この投稿はフォロワー限定」といった制限があると、ついフォローしてしまいたくなるのも、
人間の「隠されたものを見たい」欲求によるものです。
モザイク処理された画像や「続きは有料会員限定」といった広告も、興味を引き付ける効果があります。
「隠されたものを見たい」という欲求は、心理的リアクタンス(Psychological Reactance)にも関係があるとされます。
心理的リアクタンスとは、自分の自由が制限されたり脅かされたと感じたときに、それを回復しようとする心理的な反発のことです。
たとえば、「これには絶対にお手を触れないでください」と言われると、逆に触れたくなる気持ちになることがあります。
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これは、自分の「自由に触れる」という選択肢が制限されたため、それを取り戻したくなる心理によるものです。
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私たちは、行動の自由(選択や決定の自由)を当たり前のものと感じています。
たとえば、「何を買うかは自分で決められる」と考えています。
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なので、他人や環境から「~してはいけない」「~しなければならない」と制限されると、自分の自由が侵害されたと感じます。
その場合、失った自由を取り戻そうとして、逆に制限された行動をしたくなってくるわけですが、この反発的な心理を、リアクタンスといいます。
「試験前にゲーム禁止」と言われると、勉強よりゲームが気になってしまう、
子どもに「お菓子は1個だけ」と言うと、もっと欲しがる、
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友人に「その人とは付き合わないほうがいい」と言われると、逆にその人への興味が高まる、
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親に恋愛を反対されると、余計に燃え上がるなどが、この心理によるものです。
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(禁断の愛に燃え上がってしまう心理については以下もご参照ください)
蔦屋重三郎の「一目千本」は、「カリギュラ効果」や「心理的リアクタンス」効果があったことでしょう。
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( なお、「カリギュラ効果」と「心理的リアクタンス」との違いですが、「カリギュラ効果」は制限されるがゆえに興味が湧き自発的に見たくなる、「心理的リアクタンス」は制限されるがゆえに自由を取り戻すために反発して見たくなるといったような違いがあります)
大河ドラマ「べらぼう」では、「一目千本」のおかげで、閑古鳥が鳴いていた吉原に客の賑わいが戻ってきたと描かれていました。
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「カリギュラ効果」や「心理的リアクタンス」効果は現代においても、広告やマーケティングへ応用されています。
「期間限定」「今だけお一人様1点限り」といった制限があると、余計に購買意欲が高まります。
「この情報は会員限定」と言われると、知りたくなる、「この先はフォロワー限定」と表示されると、ついフォローしたくなるなども、「カリギュラ効果」や「心理的リアクタンス」による効果といえることでしょう。
自由の制限が強すぎる場合、厳しすぎるルールや強制的な命令がある場合などに、より強い反発を生み、あるいはより強い興味が湧き、心理的リアクタンスやカリギュラ効果が生じやすくなります。
(ただ、万人に通用するというような効果ではありません。命令されても気にならない人、ルールは必ず厳守するという性格の人、「限定」や「秘密」といったような言葉に全く惹かれない人などもいますので。自立心や自律心の高い人には通用しにくい効果だと思われます)
「カリギュラ効果」や「心理的リアクタンス」効果をマーケティングなどに利用するのはともかくとして、
子供に「スマホばかり見てないで勉強しなさい!」と注意した際に、心理的リアクタンスが生じ、
逆にさらにスマホばかりを見たくなるという心理になってしまうのは困りものだと思います。
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そのような場合の対処法としては以下のようなものがあります。
① 選択肢を与える
「これをしなさい」ではなく、「AとBどちらを選ぶ?」と選択肢を与えると、反発を抑えられるといわれています。
例:「宿題しなさい!」→「ネイティブの人とお友達になれる英語と、パズルのように楽しめる数学、どちらをする?」
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② 理由を明確に説明する
「なぜこの制限が必要なのか?」を納得できるように説明すると、受け入れやすくなる。
例:「お酒を飲み過ぎると翌日つらいよね。もうあんな思いしたくないよね。お酒はほどほどにしましょう。」
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③ 相手の自由を認める言い方をする
「やってもいいけど、〇〇するほうがもっといいかもね」と提案形式にする。
例:「今日は休みだし、遅くまで寝ていてもいいけど、今とっても面白いTVやってるよ。起きて見てみる?」
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④ 段階的なアプローチをとる
急に制限するのではなく、少しずつ慣れさせることで反発を減らす。
例:スマホの使用時間をいきなり制限せず、少しずつ減らすようなルールを決める。
「心理的リアクタンス」や「カリギュラ効果」は日常生活のさまざまな場面で見られ、特に「禁止されたことほどやりたくなる」「制限されると興味が湧く」といった行動につながります。
子育てや教育などの現場ではこの心理を理解し、選択肢を与えるなどの対策を講じることで、より良いコミュニケーションや行動の促進が可能になります。
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