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#全文公開【小説風エッセイ】華奢イメージと腕の筋肉ムキムキの両立に挑戦 [家族親族](1141文字)

「おまえは華奢だ」
と、同居する祖父と父から言われて育ち、私は華奢だと信じ込んでいました。
実際には、成長期に水泳とバドミントンをやっていて、肩幅があったにも関わらず、セルフイメージとは強いもので、人生を折り返したであろう最近まで、華奢なイメージを強調する身なりをして、華奢なイメージの動きをしていました。
ある日、フィギュアスケートの、アレクサンドラ・トゥルソワ選手やアイスダンスの女子選手を見て、閃きました。
「これだ!」
華麗なイメージとともに腕の筋肉ムキムキの世界がそこにありました。
華奢なイメージそのままに腕の筋肉をつけられるかもしれない。
華奢と腕の筋肉ムキムキは両立可能かもしれない。
私は、腕の筋トレを始めました。
それまでにストレッチと腹筋運動の習慣はありました。
それらに加えて、腕立て伏せと、直立して腕を曲げて体の前にダンベルを持ち上げる運動を始めました。
ほどなく、「懸垂器具」を購入して、懸垂はできないから、ぶら下がり運動を始めました。懸垂器具は、「ぶら下がり健康器」とも言われますね。
そして、それらの運動をたっぷり2年間行いました。
念願叶って、腕の力こぶが、力を入れると美しく盛り上がるようになりました。筋肉を見るのが好きな私は大喜び。努力が報われたと思いました。
そんな時、オンラインショップで美しいワンピースをみつけました。
上半身がコンパクトで、スカート部分がフレアで長く広がる、ボタンで前開きの、シルエットの美しいワンピースでした。
「これは華奢な私にぴったり!」
と思った私は早速、注文しました。
待ちに待ったワンピースの到着。
わくわくしながら試着しました。
さて、どうか!
何と、サイズはいつも通りなのに、胸のボタンが締まりませんでした。
衝撃でした。
スカート部分の長さはぴったり合っているので、サイズを上げるわけにはいきません。
改めて鏡を見てみたら、以前よりも胸板が厚くなっていました。
華奢なはずでした。
しかし、鏡の中には逞しい私がいました。
心中複雑でした。
夫に、
「私は逞しくなってしまった」
と言ったら、
「良かったね」
と返ってきました。
父に、
「私は胸板が厚くなってしまった」
と言ったら、
「それでいいのだよ」
と返ってきました。
いいのですか!
今までの「華奢」教育は何だったの?
私ひとりが戸惑ったまま。
周囲は私の胸板が厚くなって、私が逞しくなるのが、歓迎なようでした。
とても欲しかった、その華奢なワンピースはオンラインショップに帰って行きました。
そして、それからも、私は相変わらず、同じ筋トレメニューを頑張っています。
この日を境に私のセルフイメージは変わりました。
「私は逞しい!でも華麗」
を目指して、日々、鍛錬しています。
あの日に見たフィギュアスケートの選手たちのように。

天野マユミ



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