逃げる夢 (#シロクマ文芸部)
「逃げる夢を見たって?」
男は、そう言って私と目を合わせようと起き上がろうとする。私は男に毛布をかけ直す動作で、男が起き上がるのを制した。
「そう。とても怖い夢だった」
私は昨夜見た夢のことを男に話した。
暗い森を、一人かけて行く。
サーチライトがぐるぐると回って、私の居場所を突き止めようとしていた。遠くには幾人もの人間が手元のライトを光らせて追ってくるのだ。
私は何から逃げているのか、何処へ向かえばいいのかわからない。私が悪いことをしたのか、悪い人から逃げているのかも。
「