![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/119969131/rectangle_large_type_2_94dbc6b59a159f387d91f3e5813c6100.jpg?width=1200)
鬱病を感染された 47
47 取り戻す
出かけた蝶子が何処へ行ったかは見当がついていた。
バーメセプト社の研究所にある実行部隊の本部だ。高橋が教えてくれた。
そこで指示をもらい次の治験と言う名の洗脳を行うスタッフと落ち合う。
車で研究所の裏口を見張っていると、案の定機材を積み込む蝶子達が見えた。
ただここからどうやって目的地に行くかは解からない。もしかすると飛行機に乗り換えるかもしれない。不安と緊張が織り交ざって無口になり手に汗が滲む。
「さあ行こうか」高橋がつぶやいた。
蝶子たちがそろそろ出発しそうだった。いよいよかと車のシートベルトをつなごうと思ったが、「ちょっと手伝ってくれ」と言いながら高橋は車を降りていく。
「どこへ行くんだよ。蝶子達は出発したぜ。追わないのか」俺は焦って言った。
落ち着いた顔で高橋は「今、この施設には本部のボスがいる」「なかなか会えない大ボスだぜ」とニャリとこっちを見た。
高橋は、蝶子が本部に指示を仰ぎに来るタイミングしか大ボスに合うチャンスが無いと考え、部下が出発して取り巻きが減った時には邪魔者もいないだろうと考えた。
大ボスなら蝶子の洗脳を解くカギを持っているのではないかと言う事だ。
「ちょっと演技をしてくれないか」と高橋はずるい顔をしながら俺の顔を見た。
「演技ってなんだよ」俺は訝しい顔で睨んだ。
「裏切り者の犯罪者の振りをしてくれないか」ますますニヤニヤしている。
「さすがに大ボスのいる部屋には警備員が立っているだろう」高橋が半笑いで説明し始めた。
高橋の作戦は捕まえた裏切り者を大ボスに突き出すために無理やりドアを空けさせる。
と言う考えだ。
「どうして俺が裏切り者の犯罪者なんだよ」と反発したが、高橋がニヤリとしながら言った。
「だってお前の顔、怖いんだもん。演技に説得力が出ると思うよ」と笑いながら答えた。
昔の記憶がひとつ戻った。「そう俺は顔が怖い」それが役に立つ時が来た。
俺も笑った。ネガティブの要素も場合によってはポジティブになりえる。
そう思った。
つづく(47/53毎週日曜日18:00更新)