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恋ってどこか、線香花火に似てる
「シャワー、空いたよ」
「あぁ、咲月、ありがとう。すぐ入る」
上半身は何も纏わぬまま、いじっていたスマホを枕の脇に置いてベッドから降りる。
「水、もう少しで終わるけど飲んじゃっていい?」
「いいよ。後で買いに行く」
咲月の質問に適当に返答して、ドアを閉める。
脱衣所で下着を脱いで、湯気の立つ浴室で頭からお湯をかぶって。
快楽の後、冷めきっていた脳みそを再び熱するように温度を上げていく。
背後霊になった彼女『の』願いを叶えるお話
空に浮かぶ真っ白な月。
ぼんやりと足元を照らす街灯。
「ねえねえ。今日、すっごい楽しかったね」
「ん~」
「楽しくなかったの?」
「楽しかったよ」
豪華絢爛な花火を見た後って言うのは大体こんな感じ。
どこか哀愁が漂うような、余韻に浸ってるような。
花火のこと以外は何も頭に入ってこないような。
もう一時間も前に終わってるって言うのに、まだ火薬の匂いが鼻孔に残ってる。
「○○と、来年も
世話焼きな幼馴染は(時々?)ポンコツ
「ふわぁ……」
退屈な授業も後五分。
ここさえ乗り切れば、昼ご飯。
昨日は焼きそばパンだったから、今日はコロッケパンにでもしようか。
さっき自販機でオレンジジュースを買ったときに見た財布の中身を思い返す。
金欠気味だから、パン一個で済まさねば。
なんてことを考えていると、解放のチャイムが鳴り響く。
「今日はここまで。ちゃんと復習やって……って、おい!」
チャイムがなるなり、数人の生
この花は、アルテミスに捧ぐ
「奈央、どうしたの?早く行かないと遅刻しちゃうよ!」
太陽がじりじりと照り付け、アスファルトが灼けてしまいそうなほどの熱を反射する。
茉央は、真っ白なセーラー服に身を包み、無邪気に逃げ水を飛び越えていく。
まだ朝だというのに、どうしてこんなにも暑いんだろう。
どうして、こんなにも……
「奈央?」
彼女が、中々走り出さない私を不思議に思ったのか、立ち止まって振り向く。
長い髪が、光に映
私に全っ然振り向いてくれない幼馴染をぜっっったい私に夢中にさせてやるんだから!
日が雲にかかり、小鳥がさえずる時間。
私は、○○の家の前に立っている。
理由はもちろん、○○を起こすためである!
私は意気込んでインターホンを押し込む。
「あら、美空ちゃん」
「おばさん、おはようございます!」
玄関から顔を出した○○のお母さんに、キチンとあいさつ。
朝だからね、元気よく!
「○○は……」
「いつも通り寝てるわ」
「早めに来て正解でしたね〜」
「ごめんねぇ。起こして
バス停で一目惚れした想い人は、もうすぐ卒業してしまう先輩だったようです
俺は、高校二年の一月下旬にしてようやく勇気をだす決心を固めた。
なんのって?
毎朝バス停で出会う、俺が一目惚れをした女子生徒に声をかける勇気だ。
制服に着替え、洗面台の前に立ち、深呼吸を一つ。
水を流して、器のようにした両の手に溜めて顔を洗う。
水の冷たさに顔を刺激されて少し目を瞑る。
タオルで水滴を落として、そのまま鏡を見ながら髪をセット。
「よしっ……!」
七時十五分。
準備
完璧美少女と言われる僕の彼女は、二人きりになるとそんな片鱗全く見せなくなっちゃいます
「あの……和、さん?」
時刻は19時を回り、カーテンに遮られていない窓からは夜空が顔をのぞかせる。
「ん……」
「その、そろそろ離してほしいんですけど」
僕の彼女井上和は、床に座ってスマホの漫画アプリを開く僕の背中に顔をうずめ、体に腕をきつく回したまま返事をする。
「えと……そろそろお腹空いたなって……」
「ん……!」
「はぁ……」
今日はうちの親が帰ってこないとはいえ、ずっとこのまま
解けないように、魔法をかけて
『もしもし』
電話口から聞こえる声は、大きな音を立てる洗濯機にかき消されてしまいそうなほどに小さい。
「もしもし……なんか、声聞くの久しぶりな感じする……」
私は寝ころんでいたベッドから起き上がり、せわしなく部屋をうろつく。
『そうかな……』
「うん、十日くらい電話してなかったよ」
『あー……もう、そんなに』
「ちょっと!忘れないでよ、私のこと」
『美空のこと忘れた日なんてないよ』
僕にチョコをくれたのが誰なのか、幼馴染は全然教えてくれません
明日はバレンタイン。
最後に手作りでチョコを作ったのなんて、小学校の頃以来……
一抹の不安は残るものの、
「よし……!」
髪を後ろに結んで、袖を捲くる。
買い物袋から取り出すのは生クリームと薄力粉。
卵と、失敗してもいい用の沢山の板チョコ。
「レシピ、レシピ……」
スマホでレシピを調べて、いざ調理開始。
彼の好みはよく知ってる。
そこは幼馴染の有利なところ。
コンビニでよくガ
義理の姉が、家に一歩でも入った瞬間甘々になってしまって困るんですけど...
「○○いますか?」
二限が終わったころ、猫目でショートカットの女子生徒が教室の扉を開けて訪ねてきた。
「ん?何か用?」
その女子生徒は、
「お弁当、忘れてった」
水色のランチクロスに包まれた弁当箱を届けに来たらしい。
「ああ、アルノ。マジで助かったわ。昼抜きになるかと思った」
苦笑いしながら受け取ろうとすると、
「何か言うこと無いの?」
眉をひそめて、冷たくそう言う。
「お礼の
冬はつとめて。君笑ひたらばなほよし
かの有名な枕草子では、各季節それぞれの一番趣のある時間帯について歌っているという。
春はあけぼの。
わかる。
夜が明けて、空が白んでいくあの感じはいい。
夏は夜。
これもわかる。
太陽に照らされて、焼け焦げてしまいそうなほどに暑い昼間。
だけど、夜だけはほんの少し涼しくなったりするあの感じは俺も好きだ。
秋は夕暮れ。
これは満場一致と言えるんじゃないか。
夕焼けと、虫の声。
猫みたいな君は、悪魔のようにささやいた
「ねえ、もう、逃げちゃおうよ」
そう言って、君は微笑む。
まるで、常世に誘うように。
三月の風がカーテンを揺らし、新緑の香りを運ぶ。
「体調は特にお替りないですか?」
「はい、問題ありません」
毎朝行われている回診が終わり、だだっ広い病室に一人。
外を眺めてみると、駆け回る子供たちの元気な声。
その光景を見ると、真っ白で無機質なこの部屋が少し寂しく、寒くすら感じる。
あれは、何か月