芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出身・東京と秩父二拠点生活 / 古今東西の映画を貪るように日々是鑑賞 / 国内外の色んな映画祭に出没中です

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マガジン

  • ドキュメンタリーのススメ

    「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんで、ドキュメンタリー映画はオールジャンルで、玉石混淆で、予測不可能で面白い。周知の事実にすら新しい視点を与える、そんなジャンルです。個人的にグッと来た、そんなドキュメンタリー映画をご紹介します。

  • レア職業図鑑

    珍しい職業、何やってるか分からない職業、そもそも存在の知られていない職業。そんなお仕事の業界知識と現場の声を発信し「世界は誰かの仕事でできている」を地で行こうという連載です。さらには日本の伝統文化に関わる職業にもフォーカスし、それらを保存・アーカイブしていきます。

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みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。 もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方にも”エンドロール”を楽しんで欲しいと思っています。なぜなら映画の本編にこだわって製作してきた監督をはじめ映画製作陣が、最後の最後であるエンドロールにこだわらない訳ないだろうと、思うからです。曲とか、フォントとか、順番とか。 という事で今回は「最後まで観てね!」という事を強く主張したく、またエンドロールを楽しめるとい

    • 『オン・ザ・ロード~不屈の男 金大中~』韓国の民主化運動史を総括

      北朝鮮に対する緊張緩和政策や南北首脳会談などが評価され、ノーベル平和賞を受賞した韓国の金大中(キム・デジュン)元大統領。『オン・ザ・ロード~不屈の男 金大中~』は、彼の政治人生に迫るドキュメンタリー映画である。 まず映画の冒頭で「この映画は金大中が生を受けた1924年から1987年までの激動の記録である」と示される。まだ韓国が日本の植民地下にあった戦前から、民主化への大きな転換点である「6月民主抗争」の起きた1987年までということだ。 この期間は韓国の民主化運動の歴史と

      • 「OUTCAST映画祭」社会のはぐれ者たちとの遭遇~東京/横浜/大阪/名古屋/京都/オンラインにて開催

        「OUTCAST=社会のはぐれ者」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。 非常に意味の広い言葉ではあるが、「無名の画家とその作品を盗んだ泥棒」、「国家主導の”ゲイ狩り”から逃れる同性愛者」、「国の認可を得ずに救急隊ビジネスを行う家族」、「歌舞伎町のおなべバーに勤めるホスト」など、具体例を出されるとその実態がなかなか気になる存在である。 そんな”OUTCAST”をテーマに厳選したドキュメンタリー映画が観られる「OUTCAST映画祭」が、東京・横浜・大阪・名古屋・京都・オンライ

        • 山﨑翠佳主演 『カフネ』 杵村春希監督インタビュー「コミュニケーションについて描きたい」

          進路に悩む女子高生の澪(みお)はある日、自分が妊娠していることを知る。両親にも隠し、しばらく1人で思い悩んでいた澪は、親友や彼氏に打ち明けて本音で語り合おうと試みるー。 少女と少年の「恋ではない、なにか。」の物語。 映画のタイトルになっている”カフネ”とは「愛する人の頭をそっとなでる穏やかな動作」を意味するポルトガル語。映画『カフネ』の物語も、三重県熊野市の美しい自然の中で展開し、穏やかであたたかい空気をまとっている。 今回は『カフネ』が初の長編監督となった杵村春希監督

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          釜山国際映画祭の歩き方

          観光として非常に良いイベントであると思うものの、本家の旅行雑誌「歩き方」をはじめ、細かい情報がなかなか存在しない”映画祭”。 海外の映画祭に行ってみたい、旅行のついでに寄ってみたいという方のために、今回は韓国で開催されるアジア最大級の映画祭「釜山国際映画祭」について、2024年の現地レポートと共にご紹介したい。 映画祭の特徴釜山国際映画祭は毎年10月、韓国第二の都市である釜山で10日間に渡って開催されている。例年、約60作品のワールドプレミア(世界初公開)が行われるなど、

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          『SUPER HAPPY FOREVER』パンデミックを挟む、みずみずしさと喪失感

          「SUPER HAPPY FOREVER」は2つの時を結ぶ映画だ。2018年と、2023年。この5年の間に、世界はコロナ禍を経験した。 その足跡が映画の中にもいくつか残っている。閉店し荷物が片付けられた飲食店、閉館を間近に控えたホテル、どこか閑散とした商店街。この映画の主人公である佐野(演:佐野弘樹)も、そうした背景を持つ舞台と同様に、大きな喪失感を抱えている。 きれいだが、どことなく渇いた感じの海辺の町を歩く佐野。 彼がなぜこの町に来たのか、そして次々に起こすおかしな

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          映画『シサム』シャクシャインの戦いとアイヌを苦しめた不平等な交易

          江戸時代の蝦夷地、現在でいう北海道を舞台にした時代劇映画『シサム』が劇場公開中である。「シサム(正式にはムの表記は小文字)」とは、アイヌ語で”隣人”という意味で和人(アイヌから見た日本人)など、アイヌ以外の人のことを指す。 松前藩士の息子、主人公の考二郎もいわゆる「シサム」である。彼は兄と共にアイヌと交易をするため蝦夷地へと入るが、兄は使用人の善助に殺されてしまう。武士として仇討ちを誓った考二郎は、善助を追ってアイヌの住む森へと足を踏み入れる。 『シサム』は考二郎の感情の

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          時代がようやく追いついた?29年目の「あいち国際女性映画祭 2024」

          第29回 あいち国際女性映画祭 名前に「女性」と冠されている通り、世界各国・地域の女性監督による作品、女性に着目した作品を集めた、国内唯一の女性映画祭である。 日本でも少しずつ意識改善の兆候が見られるものの、世界経済フォーラムの発表した「ジェンダー・ギャップ指数2024」では、日本は146か国中118位と、未だジェンダー意識の後進国と言わざるを得ない。 映画祭が始まった29年前は今以上に課題が多かったであろう。しかし「あいち国際女性映画祭」は早くから女性映画人の活躍にフ

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          『箱男』50年前の小説が映画化される安倍公房の先見性

          1973年に刊行された作家・安倍公房の『箱男』。ヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督らが、何度かこの小説の映画化を試みるものの、安部公房サイドからの許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えていた。最終的に安倍公房本人から映画化を託されたのが、本作で監督を務めた石井岳龍(当時は石井聰亙)である。 そして1997年、映画『箱男』の製作が決定。スタッフ・キャストが撮影地のドイツ・ハンブルクに渡り、巨大病院のセットを八割がた完成させるも、製作会社の資金繰りに問題が発生し、クランクイ

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          オープニングでよく見る、映画監督が設立した製作会社のロゴは要チェック

          映画の冒頭には、決まって製作会社や配給会社などのロゴ映像が流れる。海外の映画でよく見かけるのは、 などだろうか。 映画をよくご覧になる方は、ほかにも知っているロゴがあるかもしれない。しかし普通は製作会社のロゴなんていちいち気にして鑑賞しないので、見せられて初めて「ああ、見たことあるかも」程度だろう。 ただそんな中にも、いくつか覚えておいて損がないロゴがある。それが今回紹介したい「映画監督が立ち上げた製作会社のもの」というわけだ。 例えばスティーヴン・スピルバーグ監督が

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          Netflixで観られるおすすめドキュメンタリー映画4本

          Netflixについて、この機会に知っていただきたいことがある。それはNetflixではドキュメンタリーが、質量ともに素晴らしいということだ。あまり知られていない可能性を感じているのだが、ドキュメンタリー映画の愛好家として、これは声を大にして言いたい。 NetflixのTOPページから「映画」タブを選択し、ジャンル選択で「ドキュメンタリー」のページをのぞいてみてほしい。かなりの本数の作品があることがお分かりいただけるだろう。数ある作品群の中から、食指の動く映画に出会えるはず

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          『地面師たち』積水ハウス事件から小説を経てドラマへ、物語はどう変化したか

          ”地面師”とは、他人の土地や建物の所有権を偽造し所有者になりすますことで、第三者に売却する不動産専門の詐欺師である。 現在公開中のNetflixオリジナルドラマは、小説「地面師たち(著:新庄 耕)」を原作としており、さらにこの原作小説は2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルに描かれている。 実在の事件から小説、そしてドラマへ。作品が生まれ、それがまた別メディアの作品に生まれ変わる時、物語にも変化が生じるのが視聴者としては非常に興味深い。 ※小説及び

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          村上春樹 原作初のアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』

          そもそも村上春樹先生はアニメが苦手だそうだ。過去のエッセイに、あまり良い印象を持っていないことを綴っている。 それは業界的にも有名らしく、事実『めくらやなぎと眠る女』のピエール・フォルデス監督が原作権の取得のためにパリのエージェントにコンタクトを取った際には、「村上春樹がアニメーション化を許すわけがない」と門前払いを食らったそうだ。 だがアニメ化は実現した。どんなポイントが、かの村上春樹の許しを得る要因となったのだろうか。 「ライブ・アニメーション」という、実写とアニメ

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          カンヌ「ある視点」部門グランプリ『HOW TO HAVE SEX』モリー・マニング・ウォーカー監督

          2023年の第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のグランプリ受賞から始まり、世界の映画祭で19受賞、30ノミネートを果たした『HOW TO HAVE SEX』。 仲良しの女の子3人組で1人だけ性経験のない主人公は、いつものメンバーで行く卒業旅行で、なんとかバージンを捨てようと計画している。 「大人になろう」と背伸びする感覚、クラブでなぜか自分1人だけ冷静になる瞬間、朝帰りの静寂。多くの観客が懐かしさと、若き自分を思い出す少しの気恥ずかしさと共に観られる作品である。年代

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          ”インティマシーコーディネーター”についてあらてめて学ぶ

          俳優が監督にインティマシーコーディネーターの手配を依頼したにもかかわらず、結局導入されなかったことで非難が集中するという一件があった。 その存在や業務内容について、なんとなくは知られているインティマシーコーディネーター。きっかけは非常に残念なものであるが、この機会にもっとよく知っておこうと思った方も多いのではないだろうか。筆者もその1人である。 そこで2024年7月現在、日本には数名しかいないというインティマシーコーディネーターの1人、西山ももこ氏の書籍を拝読。その内容に

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          MV監督が撮る父娘バディムービー『SCRAPPER スクラッパー』

          父親と幼い娘を描いた映画の中で、ここ最近では『aftersun/アフターサン』や『ザ・ホエール』などの良作が注目されていたところへ、ラインナップに新たな1本が加わった。シャーロット・リーガン監督の『SCRAPPER スクラッパー』である。 母親を病気で亡くし、1人暮らしていたた12歳の少女のもとに、突然父親を名乗る男が現れる。ただ、あらすじだけではこの映画の魅力はなかなか伝わりにくい。 この少女が、かなりエッジの効いたキャラクターなのだ。 母亡き後のアパートに「おじと住

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