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釜山国際映画祭の歩き方

観光として非常に良いイベントであると思うものの、本家の旅行雑誌「歩き方」をはじめ、細かい情報がなかなか存在しない”映画祭”。

海外の映画祭に行ってみたい、旅行のついでに寄ってみたいという方のために、今回は韓国で開催されるアジア最大級の映画祭「釜山国際映画祭」について、2024年の現地レポートと共にご紹介したい。

映画祭の特徴

日本語ではプサンだが、英語ではBusanなので「BIFF」

釜山国際映画祭は毎年10月、韓国第二の都市である釜山で10日間に渡って開催されている。例年、約60作品のワールドプレミア(世界初公開)が行われるなど、その規模は非常に大きい。

世界三大映画祭における「パルムドール」「金獅子賞」「金熊賞」のような、分かりやすいその年の「大賞」に相当するアワードはないが、「ニューカレンツアワード」や「キム・ジソク賞」など、さまざまな角度で賞や上映カテゴリが用意されているため、幅広いジャンルの映画を楽しめるのも魅力の一つだ。

『パラサイト 半地下の家族』(2019年)をはじめとしたクオリティの高い韓国映画と同様に、釜山国際映画祭の重要度も世界的に増してきている。毎年11月に開催される「東京国際映画祭」より1か月早いという時期的な要素も絡み、「アメリカ・ヨーロッパ圏の映画製作者たちは、アジアでのマーケティングにおいて”釜山”を最優先している」と言う映画関係者もいる。

”東京”にも頑張ってほしいところではあるが、それだけ釜山国際映画祭が素晴らしく注目度が高いということだ。

ロケーション

釜山エリア地図
韓国旅行情報サイト「コネスト」より

釜山国際映画祭は大きく分けて2つのエリアで展開しており、地下鉄「センタムシティ(Centum City)駅」近辺のメインエリアか、「南浦(Nampo)駅」近辺のエリア。スクリーンのほとんどはメインエリアにある。

<メインエリア>

センタムシティ駅周辺のメインエリアの地図
BIFF 2024公式サイトより

①Busan Cinema Center

「映画の殿堂」と呼ばれる釜山国際映画祭のために建てられた専用スクリーンで、オープニングセレモニーや表彰式など、メインイベントが行われる半屋外の会場だ(座る場所によっては少し雨が当たる)。

Busan Cinema Center 「映画の殿堂」

チケットを持っていなくても無料で見られる「オープントーク」を開催しており、監督や主要キャストのインタビューも閲覧が可能だ。いつでも出入りができて参加もしやすい。日本作品のオープントークもある。

『 劇映画 孤独のグルメ』のオープントークに登壇する松重豊監督
並ぶことなく割と前列で観覧ができる

②CGV / ③LOTTE CINEMA

「映画の殿堂」から徒歩3,4分の距離にある2つの百貨店、この上階にそれぞれ映画館があり、映画祭期間中は専用スクリーンとなる(映画祭以外の作品は上映していない)。

右がCGVで、左がLOTTE CINEMA

百貨店のオープンは10時だが、朝イチの上映回は9時からのものもある。その場合は店内のエスカレーターではなく映画館に直結するエレベーターに乗ることになるが、ここがなかなかの行列になっている。CGVかLOTTEで10時前の上映回を予約した場合は、15分以上前に百貨店に着くようにしておいた方が安全だろう。

ちなみに上映開始から15分経つと、チケットを持っていても入場できなくなるので注意していただきたい。細かいレギュレーションは公式サイトの「オーディエンスガイド」に記載されているのでご確認を。

④KOFIC

KOFIC

こちらも「映画の殿堂」のすぐ隣にある建物で、Korean Film Council(韓国映画振興委員会)の略称で「KOFIC」。2階にスクリーンがある。

<南浦駅方面のエリア>

メインエリアのセンタムシティ駅からは地下鉄で約40分、釜山駅からは6,7分で行ける南浦駅方面のエリア。「国際市場」や「釜山タワー」といった観光地と隣接しており、”ちょっと映画祭の雰囲気を楽しむ”には非常に良いエリアだ。

南浦駅周辺の地図
BIFF 2024公式サイトより

①MEGA BOX

この映画館では「Comminity BIFF」という釜山国際映画祭の企画上映を、主に地元韓国の方へ向けて上映している。トークショーや字幕は英語翻訳なし。それでも地元の映画ファンの雰囲気を楽しむには、ぜひ寄ってみたい場所である。

筆者はここで『ターミネーター』を鑑賞。作品の選定理由は韓国語につき分からず…しかし劇場で観たことのない作品だったので、結果的には良い経験を得ることができた。

②BIFF Square Stage

繁華街に設置された屋外ステージ(入場無料)

ここではメインステージで行われているイベントの中継が放映されている。オープニングセレモニーや表彰式などチケットのなかなか取れないイベントは、ここで観覧するのがおすすめだ。屋根がないため、雨天の日には注意したい。

チケット予約

釜山における移動・宿泊については観光メディアが詳しいのでそちらへ譲るとして、映画祭を楽しむにあたって最も重要なチケットの購入についてをここでは解説していく。

夜のBusan Cinema Center 「映画の殿堂」

目安として、開催の約1か月前には上映スケジュールが発表され、1週間ほど前にチケットのオンライン予約が開始する。「これとこれが観たい」というリストを作り、その中で優先順位をつけて予約に臨むのが良いだろう。

オンライン予約

開始直後はチケットの争奪戦だ。サイトが繋がりにくく、ようやく進み、クレジットカード情報入力をしても「決済失敗」になることもある。しかし諦めてはいけない。サーバーが重いだけで、何度か繰り返せば成功する。

そういった予約戦の中であっても、スムーズに進めるいくつかのコツがあるのでご紹介したい。多少のストレス軽減になれば幸いだ。

実際の予約画面(PC)

映画の”番号”で検索

全ての上映回に番号が付与されており、この番号での検索が非常に早い。上記の予約画面のように、タイトル・日時・スクリーンなどが不規則に映画が並んでいるため、日付を選択し、観たい上映回を探していると時間がかかる。数分遅れるだけで満席になることも起こり得るので、ここはモタつきたくない。

映画祭公式サイトの作品ページを見ると、各上映回の一番左側には3桁の番号が表示されている。これが映画の番号だ。観たいリストの作成時に、一緒に控えておくと良いだろう。

映画『HAPPYEND』の作品ページ

予約が取りやすい回

ほとんどの作品は、映画祭の期間中に3回上映される。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の方が予約が取りやすい。初回は”Guest Visit”といって、上映後の監督や主要キャストなどによるトークセッションがついていることが多く、それに人気が集中する。上の作品ページで”GV”マークがついているのがそうだ。

また釜山国際映画祭は例年、水曜日に始まることが多く、特に混むのが水木金土日の最初の5日間。それ以降の平日は地元のお客さんも減り、空席が出やすい傾向にある。

Guest Visitの様子:通訳もいるが、話し手の言語→韓国語の通訳のため
例えば中国人監督の場合は「中韓」のみで、英語は話されない

”Guest Visit”がなくとも良いという映画については、映画祭の後半の上映回を狙うのも手段の一つだろう。

当日券

仮に満席で予約できなかったとしても、まだチャンスは残されている。上映直前になるにつれてキャンセルによる空席が結構出るのだ。

各会場の「チケットボックス」横に空席数を表示するモニターがあるので、そこでリアルタイムの情報を見ながら現地で予約することもできる。

赤くなっているのが空席のある回
その会場(CGVならCGV)の空席情報のみである点に注意

紙チケットの発券

オンライン予約ができたら、現地で紙のチケットを発行。各会場には「チケットボックス」が設置されているので、そこで購入情報を見せると引き換えることができる。

「映画の殿堂」横のチケットボックス

また各会場にはフリーカタログも設置されており、これには上映されるすべての作品情報(韓国語と英語)や、各日の上映スケジュールが網羅されている表も掲載されているので、たくさんの映画をご覧になりたい方は手に入れておくととても便利だ。

フリーカタログ

食事処

観光ついでに映画を1本だけ観ていくスタイルの方には大きな問題ではないが、何本もハシゴしたい映画好きには、「映画と映画の間にどこで食事をとるか」は重要な問題である。

「映画の殿堂」にはケータリングカーが並ぶフードエリアがあるが、ホットドッグやステーキなど日本でも食べられるメニューばかり。せっかくなら韓国料理が食べたい。

オレンジのエリアには韓国料理が食べられる
お店がいくつかある

LOTTEやCGVの百貨店内にも飲食店は入っているが、SHAKE SHACKなどで風景が日本と変わらない。

おすすめは、上記の地図のオレンジで塗りつぶしたエリア。このセンタムシティ駅周辺や、その近くにあるBEXCOという大きな展示会場(釜山国際映画祭のマーケット会場にもなっている)付近まで行くと、韓国料理の食べられるお店がいくつかあり、その種類も豊富だ。

「映画の殿堂」からは徒歩で往復10分強の距離。時間を見つけて、地元の料理でお腹を満たしていただきたい。

2025年は、30周年

ここまで2024年の釜山国際映画祭についての情報を書いてきたが、来年は大きく変わる可能性があることをご容赦願いたい。今年は29回目、来年は30周年と大きな節目となるからだ。

釜山国際映画祭の理事長を務めるパク・グァンス氏は、下記の中央日報のインタビューの中で「釜山映画祭が今も最初に私が作ったフォーマットそのまま残っているが、このような形の映画祭は今年が最後になるだろう」と語っている。

パク氏の発言は、一般来場者にとっての変更というよりは、主に映画祭の発展のために「どのような作品を選定するか」が変わるという内容ではあるが、どの点が変わるのかについては引き続き注意しておくのが良さそうだ。

羽田や成田から約2時間と、気軽に行ける釜山国際映画祭。ぜひ現地にも足を運んでみてはいかがだろうか。


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芦田央(DJ GANDHI)
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。面白い記事が書けるよう精進します。 最後まで読んだついでに「スキ」お願いします!