ダイデラモネ🏳️‍🌈

月に1度、『読書月記』を書いています。読んだ本、出版業界にかかわる個人的な感想などが中心です。

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「本が売れない」ことについて、一消費者として考えてみた

作家や漫画家たちの悲鳴がツイッターに流れている。「雑誌の連載を単行本にしてくれない」「新作が売れない」「担当編集者がパブリシティに対して熱意がない」「刊行後1週間程度の売れ行きで増刷のあるなしが決まってしまう」などなど。要するに、本が思うように売れないのだ。漫画は海賊サイトも影響しているし、小説などについては、公立図書館を目の敵のように批判する発言が出版社の社長から出たりもする。 そこで詳しく調べてみると、書籍の推定販売部数は1988年まで上昇を続け、最高で9億4349万冊、

    • 蔦屋重三郎関連本がたくさん刊行される―読書月記58

      (敬称略) 今年は大河ドラマ『光る君へ』を第1回から観ていて、たぶん最後まで観ると思う。大河ドラマを一年通して観るのは、1979年に放送された『草燃ゆる』以来である。通しで観る気になった理由は単純で、紫式部が主人公であること、平安時代についてあまり詳しくないので興味をそそられたからである。ドラマとして考えれば、可も不可もなしという感じだが、上の2点に関しては満足している。 そして、来年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺』も観るつもりだ。こちらは、江戸時代の出版に興味があ

      • 月に1冊も本を読まない人が6割超〈2023年度の「国語に関する世論調査」〉が明らかにしたショッキングな数字ー読書月記57

        ここしばらく、出版業界の危機に関するニュースが多い。少し前までは書店減少のニュースが多かったが、最近では雑誌がおかれた状況の深刻さ、さらには赤字化している出版社が増加しているなど、出版業界全体に関わるニュースが目立ってきた。 9月17日、文化庁が発表した2023年度の「国語に関する世論調査」(インターネットで検索すると誰でも見ることが可能である)で、かなりショッキングな数字が明らかになった(この調査は、16歳以上の6000人を対象にしたもので有効回答数は3559人)。それは

        • 失われた〝飢餓感〟と浮いた時間の行方―読書月記56

          (敬称略) 前回、「人はなぜ本を読まなくなるのだろうか」というタイトルで現在の読書状況について思うところを書いた。きっかけは、三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)。ただ、「人はなぜ~」を書いた段階では同書の「まえがき」しか読んでいなかった。その後、本文もすべて読み終えた。そして、しばらくいろいろと考えていた。そのことを書いてみたい。 人類の歴史を振り返ると、読書をする環境は現在が一番いい。何よりも本が入手しやすい。日本だけに限っても、江戸時代の

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        「本が売れない」ことについて、一消費者として考えてみた

          人はなぜ本を読まなくなるのだろうか―読書月記55

          (敬称略) 三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)を入手し、読み始めた。話題の本なので(発売から3か月少しだけど、Amazonのレビューがかなりある)、読んだ人、手に取った人も多いだろう。ただし、私は読み始めたばかりなので、ここでは内容については深くは立ち入らない。書名から連想されることと「まえがき」の部分を読んで感じたこと、私の体験などを書いてみる。 幾度となく書いてきたが、読書習慣は年齢を重ねると失われると考えている(例外はあるが、かなり少な

          人はなぜ本を読まなくなるのだろうか―読書月記55

          文学に青春を、人生をかけた若者たちが躍動する『日本文壇史』―読書月記54

          (敬称略) 『日本文壇史』を再読している。執筆は伊藤整と瀬沼茂樹だが24冊もあり、かなりゆっくりとしたペースで読んでいるので読了までに1年以上かかりそうだ。今、第3巻を読んでおり、明治24~26年辺りで、樋口一葉がデビューしている。 再読といっても、前に読んだのは30年以上も前だ。私が持っているのは単行本で1980年代の後半に古本で購入している。1994年には講談社文芸文庫版が刊行されているが、その時点で単行本を持っており、しかも読了していたので購入しないと決めたことを記

          文学に青春を、人生をかけた若者たちが躍動する『日本文壇史』―読書月記54

          町に本屋さんがあり、みんなが本を読むのは当たり前のことなのか?―読書月記53

          (敬称略) ここしばらく、書店(以下、町の本屋さん)の減少に関するニュースをよく見かける。確かに町の本屋さんは減少している。原因として、ネット書店や電子書籍の普及をあげている場合が多い。たしかに、それらも要因であるが、本質的な問題は、日本人が書籍や雑誌を買わなくなったことだ。1996年には書籍と雑誌で約2兆6000億円あった売り上げが、2023年には約1兆6000億円。しかも5000億円は電子書籍なので、紙の書籍と雑誌は1兆1000億円程度。30年近くで売り上げが5割以上ダ

          町に本屋さんがあり、みんなが本を読むのは当たり前のことなのか?―読書月記53

          清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52

          (敬称略) 60代以上の人なら、1969年にヒットした『フランシーヌの場合』という歌を覚えている人も多いだろう。私の場合、歌詞の内容の詳細について知ったのは大人になってからだが、歌そのものと、抗議の焼身自殺ということだけは、子どもながら知っていた。 先日、清原なつのの自伝的作品『じゃあまたね』(kindle版)を読んでいたら、この曲の話が出てきた。『じゃあまたね』では、清原は個人的なことはもちろん、社会的事件、同時期の少女マンガや少年マンガで印象に残った作品に触れているが

          清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52

          黒い霧事件と赤ちゃんあっせん事件と十一谷義三郎の『花より外に』―読書月記51

          (敬称略) 久々に「野球賭博」という言葉がネットに溢れたのを見てビックリした。ただ、私の中では「野球賭博」という言葉は「八百長」という言葉とセットだ。私の子ども時代、1960年代末から1970年代初頭、プロ野球界を賑わせたこの二つの言葉は、最終的に「黒い霧事件」という言葉に集約されていく。 日本のプロ野球では、1970年代には様々な世間を騒がせる事件も多かったが、やはりこの「黒い霧事件」ほどショッキングなものはなかったと思う。ただ、1980年代に入ると「黒い霧事件」そのもの

          黒い霧事件と赤ちゃんあっせん事件と十一谷義三郎の『花より外に』―読書月記51

          『鬼の筆』を読みながら考えた、映像化の功罪―読書月記50

          (敬称略) 先月、本(活字メディア)と映画(映像メディア)を中心に論じた『夢想の研究』について書いたが、そのすぐ後、脚本家・映画監督の橋本忍についての評伝『鬼の筆』を読んだ。日本映画に関して多少の知識があれば、橋本忍の名を知らぬ人はいないだろう。橋本は多くの作品の脚本を手掛けているが、原作ありの作品がかなり多く、そういった意味では『夢想の研究』の内容と通じる部分があったし、橋本の原作の読み込み、脚色における〝腕力〟など興味深いことが多かった。 私が最初に橋本の名を知ったの

          『鬼の筆』を読みながら考えた、映像化の功罪―読書月記50

          瀬戸川猛資の『夢想の研究』を再読しながら考えたアレコレ―読書月記49

          (敬称略)             瀬戸川猛資の『夢想の研究』(創元ライブラリ版)を再読した。最初に読んだのは、1999年に同書が刊行されて間もない頃だったと記憶している。ときどき、部分的に拾い読みをすることはあったが、通読するのはかなり久しぶりだ。 創元ライブラリ版が刊行された時点で、著者は鬼籍に入っていた。著者はミステリや映画に関する文書を多数発表していた。しかし、私は映画も観ていたしミステリも読んでいたが、どういうわけか著者が存命の間に、その文章に触れたことはなく、そ

          瀬戸川猛資の『夢想の研究』を再読しながら考えたアレコレ―読書月記49

          2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編

          『終盤戦 79歳の日記』メイ・サートン著(みすず書房) 『ニジンスキー 踊る神と呼ばれた男』鈴木晶著(みすず書房) 『大いなる錯乱 気候変動と〈思考しえぬもの〉』アミタヴ・ゴーシュ著(以文社) 『暗闇の効用』ヨハン・エクレフ著(太田出版) 『昆虫絶滅 地球を支える生物システムの消失』オリヴァー・ミルマン著(早川書房) 『昆虫絶滅』のみ読んでいる最中。『世界は五反田からはじまった』星野博美著(ゲンロン)も忘れ難い。

          2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編

          買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48

          (敬称略) マンガ家の篠有紀子が初期に発表した作品に『冬の日の1ページ』がある。篠の作品のなかでは、私が最も好きなものだ。コミックス『フレッシュグリーンの季節』に収められた作品で、1979年の「LaLa」2月号に掲載されたのが初出だ。 この作品の中には好きな台詞がいくつかあるが、その一つに「いつもと違うことすると いつもは見えないものが見えてくるから」というものがある。ごみなどが落ちていて普段はきれいとは思えない海を早朝に見たときに、その美しさに驚いた主人公に、義理の姉妹で

          買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48

          ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47

          (敬称略) 最近もあるのかどうか分からないが、私が子どもの頃に、ミステリのトリックだけを集めて解説した本があった。もちろん、私が読んだのは子ども向けだ。犯人の名前はなかったと記憶しているが、トリックの紹介にはイラストがあるものが多く、それに加え、ご親切に作品名まで書かれていた。子どもの頃の私は、この本を読んで後々どんなことになるかなんて考えずに、この手の本を何冊か読んだ記憶がある。覚えていないものも多いけど、いくつかは強く脳裏に刻まれた。 以前にも書いたが、私はミステリを

          ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47

          古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46

          (敬称略) 何がきっかけだったのか忘れたが、少し前に斎藤栄の『水の魔法陣』を読み返した。最初に読んだのは30年以上も前だと思う。読んだ文庫の解説によると、『火の魔法陣』『空の魔法陣』の3部作だということなので、そちらも、ネットで古書を、それぞれ上下セットを見つけ購入し、読むことにした。この2作も以前に読んでいるが、3作ともほぼ記憶にない。 それぞれ共通する登場人物がいるものの、独立して読める作品にはなっている。『水の魔法陣』では、マンションの「水」から始まって様々な水の問題

          古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46

          個人出品が増加する古書市場―読書月記45

          (敬称略) 8月終わりぐらいから、蔵書整理を始めた。終活まではいかないが、リタイア後のことも考えてのことで、7~8年かけてのことになりそうだ。基本的には4~5割程度の本を処分するつもりだ。 蔵書整理については、3年前の「読書月記番外編」でも触れているが、基本的に今回も売るのは「ヤフオク」「ブックオフ」「日本の古本屋」になる。個人出品先としては「メルカリ」もあるが、購入先としてはいいが、固定価格なので値付けが難しい部分もあって今回はスルーした。今のところ、「ヤフオク」一本であ

          個人出品が増加する古書市場―読書月記45