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聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第十二話
「昨日はごめんね。高橋くん」
マリヤは、申し訳なさそうに肩を小さくして謝る。
高橋は、気怠げな目をマリヤに向けてチキンとサラダを突っ込んだピタパンを齧る。
二人がいるのは学校の屋上に続く階段。
マリヤは、持参のお弁当を、高橋は妹の手作りのパンをお昼ご飯に食べていた。
本当は今日は妹と一緒に食べる予定だったのだがどうしてもマリヤが話したいことがあると言うので休み前のように二人で並んで昼食を
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第十一話
聖母の肉を食べた腹の奥から力がマグマのように湧き出てくる。四肢に、臓器に、殻に、そして脳みそに流れてくる麻薬のような力の快感に楠木=鼠もどきは溺れ、飲み込まれそうになる。
この力が元いた世界にあればきっと勇者になど退治されず、魔王と名乗る偉そうなだけの若造に足蹴にさせることもなかったはずだ。
鼠もどきは、元の世界ではそれなりに知られた幻獣で縄張りとしいた山間では神として祭り上げられていた。
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第十話
「高橋……てめえ……!」
鼠もどきが唸りと共に声を上げ、青白い炎の目を向ける。
「なんでここにいる⁉︎何をしやがった⁉︎」
悪臭と共に放たれる背筋を震わす声。
しかし、高橋は、気怠げな目を向けて小さく首を傾げる。
「なんで……俺の名前を知ってる?」
高橋は、ぼそりっと呟く。
[彼は、楠木です。坊や]
「楠木?」
高橋は、じっと気怠げな目を細める。
「なんで孵化してる?いや……」
高橋の
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第九話
頬に痛みが走る。
意味の分からない激痛にマリヤの意識は一気に覚醒し、視界に歪んだ鬼の顔とゴミのような口臭が鼻をつく。
「おうっ目が覚めたか……」
鬼は、下卑た笑い声を上げる。
よく見るとそれは鬼ではなく、欲望で醜く歪んだ少年の顔だった。
息が堪らなく臭い。
マリヤは、堪らず鼻を押さえようとするが……腕が動かない。
視線を上げると両手が頭の上にあげられ、同じよう醜く顔を歪めた違う少年に
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第八話
「マリヤちゃんの髪は綺麗だねえ」
さくらは、柔らかく微笑んでピンクのブラシでマリヤの髪を梳かす。
マリヤは、さくらの優しく、丁寧な櫛の手捌きに気持ち良くなりながら、(ああっこれは夢だ)と認識した。
母親が新婚時代に父親に、買ってもらったと言う古びたドレッサーに映る二人は小学生の姿をしていた。
マリヤは、ブラウンの髪を野球をする為に男の子のように短く刈り上げ、服装も黒い半袖にデニムの短パン、
聖母さんの隣にいる高橋くんは自分の心臓とお話ししてます。第六話
日曜日。
マリヤは、学校近くの公園のベンチに座って落ち着かな気に空を見ながらペットボトルのスポーツドリンクをチビっと飲んだ。
今日は高橋との約束のキャッチボールをする日だ。
澄み渡るような晴天。
最近の異常気温が嘘のような涼しい気候。
目の前に広がる刈りそろえられたばかりの丁寧に広がる芝生。
言い訳の仕様のない最高のキャッチボール日和だ。
マリヤは、大きくため息を吐く。
ここに来
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第五話
「俺、生まれつき時心臓に大きな欠陥があったんだ」
高橋は、そっと左胸に手を置く。
「先天性の心疾患。形も歪で心音も乱れに乱れて不整脈どころの話しじゃなかったらしい」
マリヤのブラウンの目を小さく揺れる。
「あんまり覚えてないけど小さい頃は、慢性的な酸素欠乏で酸素チューブを繋いでて、貧血もしょっちゅうでミルク飲むより輸血してたらしい。手術の話しも出たけど心臓がポンコツ過ぎてとてもじゃないけど耐え
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第四話
「これで良し!」
マリヤは、持ってきた古い救急箱の蓋を閉める。
高橋は、綺麗に消毒され、ガーゼと包帯の巻かれた右肩を見る。
高橋がいるのはマリヤの両親が経営している定食屋のお座敷席だ。たくさんのお客さんの好奇の目と隙間を抜けてお座敷まで連れてこられると無理やり衣服を脱がされ治療されていた。
狭いが貸切用らしく畳は青々と綺麗に磨かれ、テーブルは掘り炬燵式になっていて足が下ろせるようになってい
聖母さんの隣の高橋くんは自分の心臓とお話ししてます 第二話
二人は、踊り場に腰かけ、階段に足を下ろして並ぶ。
お尻二つ分空けて。
その微妙な距離にマリヤは眉根を寄せる。
「もうちょっと近くに寄ったら?」
「愛が年頃の女の子に気安く近寄っちゃダメと言うので」
そう言って紙袋の中に手を入れる。
本当にお母さんみたいね、と思いながら自分も保冷バッグから小さなお弁当箱を出す。
そのお弁当箱を高橋はじっと見る。
「なに?」
「いや、可愛いお弁当だな、と