篠田悠三

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最近の記事

裸にされはき叫ぶ女たち 女性の安全とドイツ サンドラ・ヘフェリンさんへの疑問(2)

前回ではドイツ、ケルンで大晦日、カウントダウンをするために集まっていた女性たちに、アフリカや中東出身の若者たちが襲い掛かり、性的暴行をほしいままにした事件を伝えるサンドラさんの書き方の奇妙さを指摘した。サンドラさんは生涯癒えぬ辱めを受けた同胞の女性にたいしてではなく加害者に大変気を遣う書き方をしている。サンドラさんは何に気を遣っていたのか。記事を読んだドイツの友人たちに「何か右翼っぽい」とか「レイシスト的かも」などと言われたら表現者としての立場を即失う。サンドラさんが一番気に

    • 役割分担は「女性差別」なのか 「朝日新聞」のジェンダー平等論議を嗤う(2)

      魔法のデータ 「どう思いますか夫婦の家事分担」のテーマで「朝日新聞」「声」欄のトップにのせられた16歳高校生男子からの投書。そこに反映された彼の「家事分担」への異常ともいえるこだわりに少なからず影響したと思われるのが、「朝日」(に限らないと思うが)がずいぶん前から折に触れて載せてきた、私が「魔法のデータ」と呼ぶグラフ。例えば2020年6月7日朝刊「『見えない仕事』在宅であらわに」と題した一面大の記事の中に次の小見出しをつけた棒線グラフがのっている。 「日本の男性が家事や育

      • 裸にされ泣き叫ぶ女たち 女性の安全と ドイツ サンドラ・へフェリンさんへの疑問(1) 

        ケルン大晦日集団性暴行事件ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンさんの視点は常にユニークで、同調性の強い日本社会にあって貴重な存在だ。 しかし、昨年、サンドラさんが書いた「『ノー』なら処罰 先進ドイツ」の大見出しを冠した2023年4月10日「朝日新聞」夕刊第3面の一面大の記事については違和感を覚えた。 記事は性犯罪を取締る法律に関するもので、従来、日本では暴行、脅迫を伴わなければ成立しなかった「強制性交罪」が、たとえば、上司という立場を利用して拒否できないような状

        • 役割分担は「女性差別」なのか 「朝日新聞」のジェンダー平等論議を嗤う

          「朝日新聞」は2020年4月2日(木曜日)「ジェンダー平等宣言」を発表した。(4月1日を避けたのはエイプリルフール扱いされることを危惧してとのことか)。「宣言」以来「朝日」はさまざまな紙面、企画を通して、この国での「ジェンダー平等」を実現するべく、一大キャンペーンを展開している。その中で、「朝日」が最重要の課題のひとつとして取組んでいるのが「夫婦による家事分担」。その一環として24年2月上旬、読者に「どう思いますか夫婦の家事分担」を呼びかけ、寄せられた投書の中から6つを選び「

        • 裸にされはき叫ぶ女たち 女性の安全とドイツ サンドラ・ヘフェリンさんへの疑問(2)

        • 役割分担は「女性差別」なのか 「朝日新聞」のジェンダー平等論議を嗤う(2)

        • 裸にされ泣き叫ぶ女たち 女性の安全と ドイツ サンドラ・へフェリンさんへの疑問(1) 

        • 役割分担は「女性差別」なのか 「朝日新聞」のジェンダー平等論議を嗤う

          福島みずほさん、台湾へいってください

           自民党副総裁の麻生太郎が訪台した(2023年8月)と聞いて、これは一種の「ねじれ」であり「倒錯」現象だと思った。台湾と麻生太郎は真逆だからだ。 台湾といえば、いまやアジアで数少ない民主主義の国であり、しかも(どこかの国と違って)それがよく機能している。そのひとつの証左として、政権交代がしばしば起きる。為に、政治家に緊張感があるという(いつクビになるか解らない)。政権交代があるということは、主権在民が機能しているということだ。国の「主人公」は国民だということ。政治家は「主人

          福島みずほさん、台湾へいってください

          「セクシー田中さん」(日テレ系)につっこみをいれてみました(2)

          第一回で仕事でミスをした朱里が男性上司にわびると、「いいんだよ、君はいてくれるだけで周囲がなごむんだから」なんてことをいわれる。でも、これって、モロ「昭和」なんだよね。当時、男性社員の補助的女子仕事をしていた女子社員はその一方で「職場の花」などともてはやされた。彼女らの多くはたいてい、入社数年で結婚、退社。寿退社なんていった(いまはさすがにいわないでしょうね)。結婚の決まった彼女は関係部署に「お世話になりました」なんて挨拶周り。「いやあ、お世話した覚えはないんだけれど」なんて

          「セクシー田中さん」(日テレ系)につっこみをいれてみました(2)

          「セクシー田中さん」(日テレ系)に「つっこみ」をいれてみました(1)

          都内の商事会社で働くOL朱里(あかり、23)は「いきづらさ」をかかえている。ときおり、ヒラリー・クリントンの「ガラスの天井」スピーチをネット画面でながめては自分をなぐさめている。ある日、仕事は完璧だが地味なアラホーOL田中京子(40)が夜、ペルシャ料理店でベリーダンサーとしてセクシーに踊る姿を見てあこがれるーー。 というのが公式ストーリーだが、「女性」となると「いきづらさ」とくるのが近頃定番になった。つい最近まで「朝日新聞」で「女性のいきづらさ」というフレーズを紙面のどこか

          「セクシー田中さん」(日テレ系)に「つっこみ」をいれてみました(1)

          「逃げ恥」はそんなに偉いのか

           TBSテレビの人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(「逃げ恥)」(2016年10月から11回放映)は 若い独身男性平匡(ひらまさ)のため家事全般を担当し給与を得ていた若い女性みくりが互いに好意を持ち「いっそ結婚しようか」で結婚。女性は主婦になるが、今までどうり家事をしても給与はでない。「これっておかしくない?主婦はただ働き?」となる。これがひとつの問題提起になっているという。 この問いかけが説得力を持ったようでいくつかの メディアで取り上げられた。しかし、もう一歩つっこんで

          「逃げ恥」はそんなに偉いのか

          "ジェンダー平等"で見るスエーデンのサスペンス・ドラマ(2)~家庭とキャリアの両立は難しいのか

          ジェンダーにこだわって見るスエーデンのテレビ・ドラマ「RIG45]の第2回 嵐の中、海上石油掘削基地「RIG45]の鉄塔にへばりついてメンテナンス作業をしていた女性作業員リトヴァが墜落死する。この事故を受けて本社では調査のため調査員をRIG45に派遣することにする。その調査員がこのドラマ 「シーズン1」のヒロイン、アンドレア。(ただし、美人調査員が行って難題を解決、と予定調和因にはならない)彼女は自宅で夫、子供2人と休暇を楽しんでいる。そこへケイタイがなる。夫「出るな」。し

          "ジェンダー平等"で見るスエーデンのサスペンス・ドラマ(2)~家庭とキャリアの両立は難しいのか

          スポーツマンシップ不在:「朝日新聞」のスポーツ記事

          それは何とも奇妙なスポーツ記事だった。2023年2月12日「朝日新聞」スポツ欄。女子フィギュア・スケート4大陸選手権最終日の結果をつたえている。不可解なのは何度主文を読み返しても、だれが優勝したかかいていないのだ。2位にもふれていない。大見出しは    千葉 3位 のびやか新星 日本の千葉百音(もね)の3位入賞を伝えているのだが、1位、2位の記載がない。ひょとして何かの理由で該当者なしだったのかしらん。で、3位が事実上のトップだったりして          得点を見た千

          スポーツマンシップ不在:「朝日新聞」のスポーツ記事

          「荻上チキ・SESSION」で前代未聞の不祥事

          だいぶ以前から、会う人ごとに喧伝しているのがTBSラジオ午後の放送「荻上チキ・セッション」。午後3時半から5時45分まで平日放送のニュース解説番組。目玉は4時半からの「特集」。テーマはさまざまだがチキの関心は人権、差別、ジェンダーにあると思われる。しばらく前まではウイシュマさんの入管にでの死亡事件を良く取り上げていた。最近では宗教2世の問題にフォーカスすることが多い。テーマがなんであれ、権力をチェックするというう基本姿勢があるのが好ましい。その番組でとんでもないことが起きた。

          「荻上チキ・SESSION」で前代未聞の不祥事

          ”ジェンダー平等”で見るスエーデンのサスペンス・ドラマ (1)

          「BS11」で土、日放映されているヨーロッパのサスペンス・刑事ドラマにはまっている。いままで、イギリス、オランダ、フランス、スエーデンのテレビドラマを見てきたが、魅力はなんといっても圧倒的なドラマ性。「刑事コロンボ」や「シャーロック・ホームズ」の単純素朴とは違って、様々な要素が複雑に絡み合い、一度見ただけでは理解できず、録画を見直して合点のいくことも稀ではない。 今回とりあげるスエーデンのサスペンスドラマ「RIG45」も次次と予想外の展開で全編緊張感に満ち、その上、人間関係

          ”ジェンダー平等”で見るスエーデンのサスペンス・ドラマ (1)

          フェミニズムって何ですか

          ジョーン・カバヤマ(Joan Kabayama 1929-2017)は、元カナダの水泳ナショナルチームのメンバーであり、教師、水球のコーチ、市民活動家、そして何よりも筋金入りのフェミニストとして知られていた(カバヤマ姓は元夫が日系カナダ人だったため。本人は白人。私が知り合った当時は3人の成人した子供がカナダにいた)。 ジョーンは一時期、東京のYMCAで教鞭を執っていた。ある時、生徒にたずねた。「フェミニズムって何ですか?」。一人の生徒(もちろん女子)が「レディ・ファーストで

          フェミニズムって何ですか

          東京オリパラ・ブルース

           2021年のイベントといえば、東京オリンピック・パラリンピック。始まる前は「反対」だったが、始まるとけっこう入れ込んだ、という人が多かったようで、わたしもその口。ラジオ、テレビ(私の場合,もっぱらNHK)も中継するので、耳から目からはいってくる。いつの間にか超美技のとりこに。  とはいえ、違和感がなかったわけではない。ひとつは、日本選手が金メダルを取ると、NHKのアナが絶叫する。「OO金メダルです!金メダルです!」「OO世界一!、やりました!」。なんでやねん、と思う。客観報

          東京オリパラ・ブルース