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”ジェンダー平等”で見るスエーデンのサスペンス・ドラマ (1)

「BS11」で土、日放映されているヨーロッパのサスペンス・刑事ドラマにはまっている。いままで、イギリス、オランダ、フランス、スエーデンのテレビドラマを見てきたが、魅力はなんといっても圧倒的なドラマ性。「刑事コロンボ」や「シャーロック・ホームズ」の単純素朴とは違って、様々な要素が複雑に絡み合い、一度見ただけでは理解できず、録画を見直して合点のいくことも稀ではない。

今回とりあげるスエーデンのサスペンスドラマ「RIG45」も次次と予想外の展開で全編緊張感に満ち、その上、人間関係も複雑ときている。といっても、本稿はこのドラマを紹介するものではない。
スエーデンといえば「ジェンダー平等」の国として我が国ではつとに評判が高い。というわけでこのドラマ、もっぱら「ジェンダー」というう点に絞って考えてみた。
 
           驚きのジェンダーフリー

舞台は海上の石油掘削基地。海の中に立つ鉄骨の建造物。これを「RIG45」と呼ぶらしい。運営する石油会社はBENTOS.鉄骨が網の目のように入り込み、石油掘削のためのさまざまな機械、関連機器が並ぶ中、作業員が通る通路が上下縦横に走る。建物中央部には制御室と作業員の都丸キャビンと呼ばれる個室が並ぶ。床も天井も周囲の壁もすべてスチールの無味乾燥.ヒルでも一人で歩くのは、はばかれる感じ。で、果たしてこのドラマの中で「ジェンダー平等」を垣間見ることができるのか。ところが「垣間見る」どころではない。冒頭からガツーンとやられてしまったのである。嵐の中、巨大な海上基地の鉄塔にへばりついてメンテナンスに従事しているのが、な!何と女性なのだ(嵐の中、東京タワーにへばりついて作業しているイメージ。)リトヴァという名の中年とおぼしきこの女性はヘルメットと作業服に身を固め、ベルトから垂れるロープを下にいる男性作業員があんばいしつつケータイで連絡をとり合う。一方、基地内の制御室。メアリー(女性)と責任者のミゲル(男性)がいる。メアリーはケータイでリトヴァに指示を与える。

メアリー‹「リトヴァ、大丈夫?」
リトヴァ「我慢する~でもこの嵐は私でもきついね、戻ったら暖かいもの飲ませてよ」(二人のやり取りを聞いているミケルのパソコンに映っているのはカードゲーム。遊んでいるのだ)。
メアリー「OK、無理なら中断するわ」
リトヴァ(苦しそう)
メアリー「どの位かかる?」
リトヴァ(返事がない)
メアリー「リトヴァ」
メアリー、パソコンを離れ、双眼鏡で窓から鉄塔を見る)
メアリー(再びケイタイを取って)「応答して」
リトヴァ(苦しそう、応答できない)
(ミケル「予定より大幅に遅れているんだ、
    さっさとしろ!」
メアリ(ミケルに)「この悪天候だと危険よ」
(リトヴァの下にいる作業員「安全帯をつなげ」
と指示。リトヴァ、安全帯を鉄塔にかけようと
するがうまくいかない)
メアリー「大丈夫?」
リトヴァ「のどが渇いた」(水筒の口を開け
 口元にもっていくが水筒をおとしてしまう)
メアリー「OK、作業を中断する、おりてきて」
(しかし、リトヴァ、手を離し、ロープで中ずり状態に。)
ミケル「何だ?」(さすがにカードゲームを止める)
メアリー(マイクで全員に)「緊急事態、全員甲板へ!」
(シカシ、リトヴァは落下し死亡する)

スエーデンでは最近まで女性が首相だったし、国会議員に占める女性の割合はおそらく日本よりはるかに多いに違いない。日本人はそちらの方にばかり目がいくが、一方ではこうした野外の現場職や作業にも女性が進出しているのである(そういえばアメリカ映画(フラッシュ・ダンス」のヒロインはダンス・レッスンの傍ら溶接工で生計を立てていた)。こうした広がりがあってこその女性のリーダーであり女性の議員なのだろう。思えば我が国はジェンダーフリー、「男女共同参画社会」と言いながら、女性はこうした現場職からは閉め出せれたまま,もっぱら男の専有となっている。日頃「性による役割分担はいけない」と言いながらこの国の職種は見事に性による役割分担が出来上がっている。建設現場で重機や生コンを操縦する女性を見たことがない。女性のバス運転手がいない(ごく一部にはいるらしいが)女性の溶接工がいない。いない、いない尽くしだ。女性のそうした分野での職種の広がりを求めず、ただひたすら女の首相はいつでるのか(「総理の夫」という小説もあった)という議論ばかり先行している。(続く)
 
 







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