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新人作家とは思えない超高度で重厚なテクニック「人類の深奥に秘められた記憶」

<文学(229歩目)>
この作品は、アフリカ系作家というバイアスをかけずに、そのまま現代フランス文学として最後までわくわく読めます。
そして、これは私たちにはなかなか書けないと感じました。圧倒されました。

人類の深奥に秘められた記憶
モアメド・ムブガル・サール (著), 野崎 歓 (翻訳)
集英社

「229歩目」はモアメド・ムブガル・サールさんのゴンクール賞受賞作品。

大型新人との評もうなずける作品でした。

作中の語り手のジェガーヌ・ラチール・ファイさんは、文学青年。そして、早熟な高校生時代に既に伝説の書であるT・S・エリマンさんの「人でなしの迷宮」という小説を発見している。
ただ、発見するも読んではいなかった。

これが、パリの夜に起きた不思議な出会いから、一気に進んでいく。
文体が素晴らしく、ここら辺から没入した。

舞台は第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして現代のセネガルに飛んでいく。伝説の書を書いたエリマンさんの美しい従妹のマレーム・シガ、そしてエリマンさんの故郷でもあるセネガルの村の描写もとても魅力です。

若さ、デビュー作と考えてスタートしたのですが、入れ子構造のような展開。そして登場人物がとても魅力的。新人作家とは思えませんでした。

登場人物の関与のさせ方が読後にとても巧妙でテクニカルだと思いました。

次作も必ず読んでいきたい作家のひとりになりました。

作中の作家を追う作品として、この作品もイケます。「シブヤで目覚めて アンナ・ツィマ」

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