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高齢化社会における愛「日本人の恋びと」

<文学(63歩目)>
高齢化社会における「愛(love)」を学ぶ。それぞれの人生は「事実は小説より奇なり」。

日本人の恋びと
イサベル・アジェンデ (著), 木村裕美 (翻訳)
河出書房新社

「63歩目」は6歩目の「エバ・ルーナ」を紹介したイサベル・アジェンデさんの素晴らしい贈り物です。

タイトルの「日本人の恋びと」とあるので、日本人的には読みたくなる作品。

しかし、これは全世界の高齢化社会での「愛(love)」を描く一つの解だと感じました。

高齢者向けの養護施設について、色々な「事件」が多く報じられる中で、ちょっと暗い気持ちになっていました。

おそらく、作者のアジェンデさん(72歳で執筆)もこの「高齢者介護施設」に入る年齢の入り口に立ち、周囲の知人の多くに共通する話題になりつつあるからこそこの作品が産まれたと思います。

自分自身にとっても、「死」という言葉はある時までは、自分とは関係のない記号でした。

しかし、ここ10年近く多くの高齢者の方々と集中してお付き合いする中で、「記号」から「具体的なもの」まで変化しました。

「死」と「愛(love)」が共存し、「愛(love)」が希望になること。
ここら辺が、血の巡りが悪い私にはやっと理解できた気がします。

20代に、取引先の方が亡くなられた時に、ご遺族から手紙をいただきました。この手紙は自分自身が24歳時。亡くなられた70代の女性からのかすかなラブレターでした。しかし当時は、年齢をこえた「愛(love)」と言うものがまだよくわからない年齢でした。かすかに感じるのみで、対応もうまくできなかった記憶が残っています。

アジェンデさんの作品はリーダビリティがよく、何時も心を揺さぶってくれます。

現在、82歳。まだまだ作品を出してもらいたい。極東の一人の読者が待っています!と伝えたくなる素晴らしい読後感です。おススメです。

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