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アジアの女性の「生きづらさ」を感じることができる「絶縁」

<SF55歩目>
「絶縁」の持つ意味が、最後に効いてくる「絶縁」

絶縁
村田 沙耶香 (著), アルフィアン・サアット (著), ハオ・ジンファン (著), & 13 その他
小学館

「55歩目」はアジアの人気女性作家のアンソロジー。このアンソロジーは「お得」です。

私は、例によって「村田沙耶香」さんに関心を持って手に取ったが、郝景芳さんやチョンセランさんが安定していると感じた。
また、ラシャムジャさん、ウィワット・ルートウィワットウォンサーさんとの新たな才能の出遭いがあった。

「ポジティブレンガ」
「ポジティブ」っていい言葉だけど、強いられると「生きづらさ」を感じてしまう。これをSF作品として表現しているところが素晴らしい。
郝景芳さんは、短篇の名手だと今回も感じた。

この物語の誕生は、郝さんとお母さんとの関係らしい。いつもポジティブであることを強いるお母さん、そうならない娘を見て泣き言を言う。

なんか、日本中でも色々なところで繰り広げられる親子関係ですね。「明るさがあれば暗さがあり、光があれば影がある」って、当たり前ですが心を突いてくる。

彼女は自分の中にある光と影の統合をうたっている。彼女よりも少し長く生きた私は、このバランスだとも思う。
この厄介なテーマを見事にまとめていて素晴らしい。

「燃える」
タイの民主化運動をテーマにしているが、心に残るのは「人称」の使い方。あとがきを読んで、タイ語の特徴の一つらしいが、このことが心にひっかかる素晴らしい作品になっている。

タイの政治情勢には詳しくないのですが、この作品からはタイの政治情勢と中華系の出身地による「考え方」の違いがテーマの「絶縁」につながると感じた。

新たに出遭えた才能で、他の作品も読んでみたい。

「穴の中には雪蓮華が咲いている」
この作品はSFではなく、とても「文学」です。それも心をつく文学です。
チベットの若者の閉塞感が「穴の中には雪蓮華が咲いている」という言葉を信じることによって強く生きていこうとする。

この例えは、おそらくアジア中のすりつぶされそうな人たちの心をとらえると思う。

ラシャムジャさんが創作意欲をもって、また作品を発表してくれるのを待ちたいと強く思う。

「絶縁」
このアンソロジーの言い出しっぺはチョンセランさん。
この作品は、彼女が得意なSF作品ではないが、やはり読ませてくれる。
日本の放送作家という職業に感じるものと韓国のものは若干違うようだが、

これは発注主、外注先の関係で考えると日本のどこの世界でもある光景。
この力関係に、男女の性差が加わると、「絶縁」をテーマとするものはいくつも出来そうだが、やはりこのアンソロジーを読むと執筆者の高い能力が要求されることが理解できる。

韓国の女性作家で、チョンセランさんはこれからも注目です。

色々な女性たちの才能を味わえる素晴らしいアンソロジーです。

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