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ショートショート小説

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電車の中やちょっとした空き時間に読めるショートショートな小説です。 創作活動続けますので、よろしくお願いします。m(__)m
毎週一つは更新して行こうと思います。
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記事一覧

「告白 水平線」

「告白 水平線」

   

 ボートは、ダイビングショップから見える水平線に浮かぶ小島からやって来た。何も視界の邪魔になるものがないので、米粒くらいのボートが走ってきて漸くボートだと認識できたのは、一時間前だ。ビーチに乗り上げたボートから男が一人おりてきた。その男は、まっすぐ私のショップに向かって歩いて来た。よく見ると真っ黒に日焼けした地元の初老の男性だった。

一体この老人は何の用があって私のショップに来たのだろ

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「報道カメラマン」

どうあがいても50分後には
夕方のニュースが始まってしまう。

デスクから指示が出た時から時間的に
ぎりぎりなのはわかっていた。

既に15分が経過した。

車で虎ノ門の研究所に向かったものの
あと35分後には撮影したテープを
報道局に届けなくてはいけない。

さらに10分が経過した。

研究所に着いた。
放送まで残り25分しかない。

 

私は研究所に駆け込み
撮影の趣旨を研究員に話し撮影を始

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「怪しい人影」

「怪しい人影」

   ちょっと変な人がいた。

閑静な住宅地に有る中学校のテニスコートを
毎日じっと見ている男性がいた。

年齢は分からないが帽子を深くかぶり
熱心に女子テニス部の部活をみているようだ。

テニス部部員の女子たちは不安に思った。

「あの人さっきからこっち見てるよ」

たぶん誰かの父兄だろうと思った。

「なんか気味悪いよね」

「先生に言ってみる?」

 

私は、その人影を見てはっとした。

初めての入院

初めての入院

 怖くてたまらない。

死神が大きな鎌を振りながら私に近づいてくる。
ヒユンヒユンヒユンと金属音がもう右の頭の
すぐそばから聞こえるからだ。

 

いったいどうしたことだろう。
恐怖はさらに大きくなっていく。

理由は、体が動かないが音だけは鮮明に聞こえるからだ。

 

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仕事 選択の対立

仕事 選択の対立

「仕事って何なんだろう」

 務叔父さんの意見はこうだ。

面白いと思える仕事をするべきだ。なぜなら面白いと思って出来る仕事でなければ長続きしない。

 茂叔父さんの意見はこうだ。

仕事をしてみて楽しく仕事が出来るのが一番

いい。楽しいと思えれば、面白くもなるし

遣り甲斐も出てくる。

 

その時こんな事が起こった。

私の先輩が、面白いと始めた仕事で楽しそうに仕事をしていたのだがある日突

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願望

願望

10年前、脳溢血で入院した時に考えさせられた。
 私はどうしても水中カメラマンを続けたいと思った。
確かに障害がある。
一つは母親の介護だ。
二つは私の経営する会社が破綻する事だ。
三つは私の頭の血管の病気だ。
 しかし、私は決して、決して、諦めない。
やるだけのことはやってみよう。
20代半ばから始めた水中カメラマンと言う仕事を
海が好きと言う思いを自分が生きて行く中で
大事にしたいと思う。

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「親離れの葛藤」

「親離れの葛藤」

 私は就活真っ最中、 親の言うとおりの就職をするか、それとも自分で選んだ独自の道を進むのか迷っていた。

実はこういうことだ。

私は父の仕事にあこがれ専攻学科とはかけ離れた父と同じ映像メディアの仕事に進もうとしている。しかしこの道に進むうえで、父親の影響力はとてつもなく大きい。私はこの業界が父親の生きて来た映画産業からテレビ産業へと変革している最中だと考えている。つまり父親の言う旧態然とした考え

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「プリンス徳川 昭武の葛藤」

「プリンス徳川 昭武の葛藤」

   ~歴史上あまり知られていない徳川16代将軍候補がいた!~

 本当なら このまま水戸徳川家で
            暮らしていたい。 
しかし、それはできない。

なぜならば兄15代将軍徳川慶喜から
将軍家に来て私の弟となり私の名代として
日本国を代表し1867年開催の
パリ万国博覧会に行くように命じられているからだ。

こうしている間もプリンス徳川としてパリ万国博覧会に行く準備は進められ

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死者の住む家

死者の住む家

 もう一人住まいの母と
連絡が取れなくなってから
夏の盛りの中3週間が過ぎようとしていた。
今日は忙しい仕事の合間を縫って休暇を取り
音信が途絶えている母の家に
行ってみようと思ったのだ。
みち子の母は、人情豊かな下町にあり
近所付き合いもそこそこにしていた。
みち子は駅から15分ほどの
2階建ての母の住んでいるアパートの前に
立ち家を見上げた。
窓は閉まっているので
旅行にでも行ったのかなと思っ

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