詩「愚か」
眠っていた街が深い睡眠の先に起き出す
人々は密かに夜明け前に活動を始めていた
朝一番の空気の味を私は知らなかったのだ
それなのに
毎日
背伸びなんかして清々しい顔をしていたのだ
真実を昨日の晩御飯の残りと共に胃に流し込む
知らないよ
私は知らない
私の目の中心に飛び込んできた朝の光
後ろから何番目の朝なんだろう
珈琲の香りが焦燥に溶けて消えた
苦々しさだけが残った
昨日食べ損ねたバナナがテーブルの上で腐っていた
自分の分身をゴミ箱に投げ棄てる
大人の様な顔をして大人のフリをしていた
こみあげてきた胃酸が喉を焼く
中身は責任を果たしていない子供のまま
汚れた食器を丁寧に洗った
おままごとの様に
私だけが知らない朝が
私の知らない地球の片隅で展開されていたのだ
いくつも
何もかもを知った顔をして
私の一日は今日も幕をあける