見出し画像

「役者が歓喜するのはなぜ?」ビギナーから見たシェイクスピア作品。イメージとか、難しさとか、面白さとか。

先だっての投稿でシェイクスピア作品についての話をしたことがキッカケ。疎い私が疎いなりにシェイクスピア作品観劇前に準備することだとか、たのしむために「こんな点が改善されたらいいなぁ」と思うことだとか、思いつきをガシガシ書いてまいります。

先日ご紹介したKawai Projectさんがどうこうという話ではなくて、シェイクスピア作品自体に言えること、演劇業界全体に言えることです。Kawai Project vol.5「お気に召すまま」に関しては単純にたのしみにしています。

初心者は思う。シェイクスピアのおもしろさって何だ?作品って何だ?

ここまで書いておいて……という話なのですが。初心者である私が常々思うこと。それが「シェイクスピアのおもしろさって何だ?」「シェイクスピア作品って何だ?」ということ。

エンタメ色の強いものから現代的でありながらも正統派と言えるものまで、いくつかの団体、いくつかの作品を観てきた中で思ったことなど、ぽつらぽつらと書いてみます。

嬉々として報告・告知する人は多いけど……

作り手としてはもちろん、受け手としても演劇に近い場所にいるとさ「シェイクスピア、やります!」「シェイクスピア作品に出演します!」「シェイクスピアがおもしろい!」とか、そういう言葉をよく耳にするじゃないですか。

疎い私には正直、それがどうスゴイことかもわからないし、なにがそんなにおもしろいのかわからんかったのよ。いや、過去形ではなく今だってわからん。役者がなぜそんなにテンション上がるのか、なぜそんなに嬉々として話すのか。

玄人向けの「何か」なんだろうと思っていた。

シェイクスピア作品に対して「なんだか難しそうだし、正直よくわからないんだけど、役者が喜ぶくらいだから作り手ウケする何かなんじゃないの?」という感覚でとらえていた理由はこういうところ。作り手だけがたのしんでいる舞台という印象だったのですよね。演劇通・玄人向け、みたいな。

そもそも「読み方がわからない」という問題

本を読もうにも、そもそも読み方がわからないわ、独特だから読みにくいわ、そんな状況で無理やり読み進めてもまるで頭に入ってこないわ、それじゃあ当然おもしろくないわ、結果、途中放棄・読破に至らずっていう。これまでに何回そんなことを繰り返してきたやら。

推しの喜びを共有したいファン心理

好きな劇団や役者が「次はシェイクスピアです!」って嬉しそうに語るから、ファンとしては「ならばやっぱり知っておきたいじゃないか!」って思うんですけど、その読み方やおもしろさを教えてくれる人はいないから挫折してきたのよね。

で、「いや、ほんとわっかんないし!」とモヤモヤだけが残る。元々文学を学んでいたら違ったと思うんだ。でもね。実際私みたいに、演劇にも文学にも関わりのない生活をしてきて、ある時にハマるという人だって少なく無いワケですよ。その後、観劇前に勉強しておこうと思うか思わないかは別として。

作り手から受け手に歩み寄ることへの意識

そういう、少なくはないであろう数のユーザーの背景や都合や事情、作り手はどれだけ意識しているのかな。まぁ、意識なんぞしていないんだろうな、意識していたら公演に先駆けた情報の出し方だってもっと違う形になるハズだし、よく目にする「この作品やるって発表したからあとは自分で調べてね!」(※意訳:ググレカス)みたいな突き放した感じにはなりようもないだろうし。

ユーザーをフォローしなくても動員に問題ないよという団体はそういうスタイルだっていいと思うんですよ、集客という部分の話だけならね。でも、演劇業界をよくしていきたいとか促進して後々収益に結び付けたいと思うのであれば、今の「わかる奴だけついて来い」ってやり方ではいけないと思うんだけどなぁ。「作家・演出家・役者が当たり前と思っていることが、観客の当たり前でもあるとは思わないでよ?」という話。

ユーザーとして観劇前に準備していること、私の場合。

とまぁ、作り手に対する疑問と不満はそういったところなのですが、続いては受け手として自分は何をするか、どう準備しているかを書きます。※あくまでも私の場合ですし、まだまだ演劇の入り口付近をウロウロするレベルなので素人感満載です。そして外国語はカラキシ駄目です。

どのくらい素人なのかというと。

書くのもはばかられるくらいなのだけど、書かないと伝わらないので書くことにする。恥ずかしい……。

シェイクスピアという作家のことはよく知らない。人物についての文献を読んでも結局知識は定着しない、すぐに忘れる。「いわゆる座付き作家だったんでしょ?え?違ったっけ?そうだよね?」くらいの曖昧さ。カタカナに弱いので作家本人の環境のことも、作品の中の登場人物の名前も覚えられない。名言とかでよく出てくるけど、どの作品なのかは知らない。というか、作品名も正直「あれ?これはシェイクスピア?違う?誰?え?これは?」というレベル。「古典」とか「研究者」という言葉から連想したところで、シェイクスピアの研究者とか翻訳者って、難しいのが好きで堅苦しかったり気難しかったりする昔の人(故人)だと思ってた。いまバリバリご活躍中の先生方というイメージがなかった。

アホか……。アホかとは思うんだけど、これがリアル……。無知って恐い。

観劇に向けて準備する項目

基本的な流れとしては、ネットで調べる→本を読む→わからないところは再確認、という感じです。

もうちょっと細かく、やる順番に並べると、

1:Wikipediaで登場人物・背景・あらすじを読む。
2:ネットで更にボリュームのあるあらすじを探して読む。
3:過去の該当作品の観劇感想を読む。(※どんな団体のどんなスタイルの上演でもOK。)
4:図書館で本を借りてきて読む。(※わからないことがあってもとりあえず一通り読む。)
5:本を読んでわからなかったところを見返しつつ、ネットで調べて補う。
6:時間が許せばもう一度本を読む。

そんな感じ。

シェイクスピアを知らない人間がいきなり本を読み始めると挫折する、と思う。時代も国も違うワケだけだから、自分の中にある世界観とか価値観とはまったく異なる場所での話になるわけでして、前提とか設定とか最低限の情報を頭に入れてからじゃないとちんぷんかんぷん。考えてみれば当然のことなのだけど、読み方を教えてくれる人っていないのよ……。で、これはストーリーを理解するために必要なことであって、ここまでやったところでシェイクスピアのおもしろさなんてちっともわからないんだよね。

ストーリーを理解したとして、次はどうやっておもしろさを知るか。

ここについては私もまだまだこれから勉強していかないと掴めないところではあるのだけれど。現状なんとなく、おもしろさのしっぽの先くらいのところは見えてきた感覚があるので、探り探りではありますがすこしだけ書いてみます。

結局これを知るには、作り手側に寄っていくしかない、そう思います。

古典と言われる作品すべてに共通することだと思うんだけど、文化・世界の動向など時代背景を知識として取り入れながら、作家の生涯を知ること(研究者が執筆した「作家そのもの」についての書籍などを参考に)。それから、複数の翻訳者のテキストに触れること(同じ作家の同じタイトルを複数の訳で読み比べること)。さらに、翻訳者が手掛けた別のタイトルも複数読んでみること(翻訳者の傾向やクセを知る)。

◎文化・世界の動向など時代背景を知識として取り入れる
◎作家の生涯を知る
◎複数の翻訳者のテキストに触れる
◎翻訳者が手掛けた別のタイトルを複数読む

ここまでやって、ようやくおもしろさの端っこが見えてくる感じ。

かく言う私も、これまでに多くの書籍を読んだわけではないのでまだまだなのだけど。おもしろさを知るということに関してはもう「観劇の準備」ではなくて「勉強」だ。研究者や作り手にどれだけ寄れるかという話。趣味で観劇する分にはここまでやらなくていいと思うけれど、作り手側が言う「おもしろさ」の一端を共有したいのであれば避けられないこと。どちらにするかはユーザーであるあなたが選べばいい。

それらを踏まえて作り手側に伝えたいこと。意識して欲しいこと。

作家・演出家・役者ら「作り手」という場所からはかなり離れた場所にいるのが「受け手」であるユーザーです。

ユーザーがシェイクスピアのおもしろさを共有しようと思った場合、通常観劇に至るまでにする準備とは別に作品に対しての準備もします。日常的な作業や学業・仕事に上乗せする形で。観劇というものはあくまで趣味のひとつだし、原作を読むことくらいは読書として趣味の範疇に含まれるかもしれない。けれど古典の場合は時代背景や設定の部分でどうしても勉強としての要素が強まる。趣味を趣味としてたのしむために上乗せされる勉強の部分が大きい。

それに対し、作り手側にとって公演に関わる全ては仕事であるのだな。

お客様から時間とお金をいただくのですから。そこを今一度よく考えてみて欲しい。商品紹介くらいしっかりしてよね、って話だ。演劇公演って作品であり役者でありが商品だと思っているんだけど、実際、商品紹介している公演ってすんごい少なくない?そんなの、ユーザーとしては安心できないから手を出せないし、アピールしてこない商品になんて購買意欲を刺激されないわよ。当然よ。

って思うんですけど、私だけですかね??

いずれにせよ、自分が携わる案件は販促関係しっかりしたいなぁと思う。実際は権限がないので夢のまた夢、かもしれないけれど。

名作と呼ばれる作品を上演するなら尚更のこと、作品とみなされる要素・一連のアクションに責任を持ち、敬意を払っていきたいものです。

こんなお仕事もしました。

いいなと思ったら応援しよう!

ろこ
サポートありがとうございます。いただいたサポートは創作活動にあてさせていただきます。

この記事が参加している募集