スパイシーボロネーゼがどの程度スパイシーなのか
とある日、初めて行くレストランに母と食事に出かけた。
メニューは美味しそうなものばかりでとても迷った。
その中で、スパイシーボロネーゼというのが今の気分的に食べたいと直感で思った。ミートソースとナスと温玉がのっている。絶対美味しい。だが少し気になったのは"スパイシー"という文言。
普通のノーマルなボロネーゼで良かったのだが、スパイシーなボロネーゼというのも世の中にはあるのか。
メニューの上には"辛さを抜くこともできます"といった表記があった。
特別辛いものが苦手なわけではないし、スパイシーはスパイスが効いて風味がいいというくらいかもしれないし、何せ初めて来たお店だったので、このお店での自分の経験値もなく、オリジナルなナチュラルなスパイシーボロネーゼが食べてみたかったのでそのままで注文した。
そしてついにきた。美味しそうなミートソースとナスとぷるぷるの温玉。出来立ての湯気も立っている。わくわく!と食べ始めた。
辛い!!!
想像をはるかに超えたスパイシーだった。
人は辛いと、もはや苦く感じるらしい。
一瞬であの、辛さを抜くことができますの文言が
脳裏に浮かんだ。今からでも辛さを抜けますか?と店員さんに助けを求めようと思ったが、
辛さを抜くということはおそらくこの中に入ってる唐辛子なのかそれ的なやつを抜くということだろうから、料理が完成し提供されて口もつけてしまった今、もう戻ることはできないだろうと悟った。
でも辛味の向こうにすごく美味しい味があるのは分かる。この辛味部分さえ取り除けばただ美味しくてすごく食べやすそう。
食べていれば慣れるだろうと少しずつ食べ進める。うん。美味しいけど辛いが強い。鼻水と涙が出てくる。辛さの根源はこのミートソースにあるようだ。ソースがよく絡んでいるから辛いが、パスタの麺自体は辛くない。温玉とナスがいい仕事をして和らげてくれている。
美味しいし、お腹が空いていて余裕がないので、ここはちゃんと食べたい。でも辛い。鼻水の滝である。
辛いものが私よりも苦手な母も一口食べ、分かっているはずなのに、やや険しい顔をして鼻水が止まらない私を見るに見かねたのか、自分の頼んだハンバーグと交換しようかと提案をしてくれた優しい母である。
私でもこれだけ辛いので無謀である。
交換をするということは、母の本日の昼食は、かろうじて辛味のソースの影響が少ないピリ辛ナスのみと、大変質素で実質抜きに近い状況になってしまう。
それは困るので、気持ちだけありがたくいただき、食べ進めようとすると、
母の頼んだセットのサラダのレタスとハンバーグの付け合わせのポテトを、辛み和らげ要員としてこちらに派遣してくれた。
それでもやはり辛い。どうにか辛みを和らげられないか策を練った。
そうだ粉チーズがある!と発見し、かけてみた。
マイルド作戦は確かにマイルド方向な味になったが、同時に塩味が足され、しょっぱさにも限界があった。
結構量があったのでお腹は満たされそうだったが、甘いもの作戦を決行することにしたため、追加でデザートのケーキを注文した。
甘いものを食べたらしょっぱいものを食べたくなるシステムを利用した作戦だ。
なんとかケーキとスパイシーを行ったり来たりして、無事完食した。
今思うと、無理せず残して他のものをオーダーし直すという方法もあったかもしれない。
せっかく作ってもらった料理を残すのはその後廃棄されるだけだし、自分のプライドが許さなかった。
書いていて思ったのは、もしドリンクコーナーにコーヒー用のミルクや牛乳があったならば、それをかけてみたらマイルド作戦として有効だったかもしれない。次同じことが起きたらミルクを探そう。
スパイシーとはどの程度のスパイシーなのか、
好みや感じ方によってかなり左右する。
私にとっては辛かったけど、他の人にとってはまたまだ辛さが足りない!という人もいるだろう。
もちろんこのお店を批判する気持ちは全く無く、
むしろ辛さを抜くという選択肢を与え、配慮をしてくれるお店で、大変素晴らしい。
今回のことで、自分が思っているより辛さに強くないことを学んだし、選べるならば、辛くない文言や表記のものを選ぼうと思った。カレーもまた然り。
"感じ方は人それぞれ問題"は、スパイシーに限らない。甘いだって美味しいだって優しいだって綺麗だって自分がそうでも皆がそうとは限らない。
同じスパイシーでも、いけるスパイシーと、いけないスパイシーがある。
ここのお店のスパイシーはいけるんだよな〜と自分なりの指標があれば全然スパイシー。
もしも未知のスパイシーで迷ったら、ノンスパイシーが自分にとっては安全策。
だが、チャレンジスパイシー、実験スパイシーしてみたら、初めて知る美味しいスパイシーに出会えるかもしれないし、また強い辛さにやられそうになったら、またマイルド作戦や甘み作戦、その時できる作戦で対抗したら良い。経験と新たな学びになるかもしれない。
あれ、食べ物の話なのに人生の話みたいだ。
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