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韻文と散文の差を見極める(第3回講座講評)

こんにちは。本日は短歌講座の3回目の講評です。本日は実際の講座で出たいろんなお悩みを解決しながら、「陥りがちな短歌あるある」を解説させていただきたいと思います。

たぶん多くの初心者の方が陥る「あれ?」っていう感じに、「いつもの文章ではふつうに説明できるのに、短歌にすると全然感覚が違う」

っていうお悩みがあると思います。

だいたい、そういうとき、「これは散文ですね」とかいわれて「なに? 散文って」ってなる場合もあります。

少し詳しく、韻文と散文の違い、考えていきたいと思います。

短歌は10人いれば10人分のバラエティがあるので、全員同じ授業で、「韻文と散文が違う」って言っても、取り残されてしまう人も入るかもと思います。どっかで実作で「あっ」とわかっていただく瞬間が必要なんです。

そもそも短歌(韻文)とふつうの文章(散文)がどう違うのか、というのは、やっぱり一回作ってみないとわかりづらいというところってありますよね。

前回はそもそも短歌をどう作るかの話をしましたが、今回は実践編です。
ちょっと実際の例題を見て、私が「ひとりひとりに形を変えていったい何をお伝えしているのか」ということをまとめたいです。


まず最初ぼくが、「あっ、韻文の意味がわからない人結構いる」と思ったのは参加者のまねきねこさんの5つの改作案を見たときでした。やりとりや説明ははしょりますが、こんな案が出てきたんですよ。

①まじまじと手鏡見ている くたびれたわたしのような あなたはだあれ

②手鏡はタイムマシンかバカヤローシミやらシワやら写しやがって

③気にするな誰もがプラス10歳に見える呪いの鏡だきっと

④「きれいだね」お世辞喜ぶ歳は過ぎ手鏡だけが嘘をつかない

⑤手鏡に写るじぶんを慰める今日がわたしの一番若い日

まねきねこさんは『「手鏡」を道具に、いろんな舞台(シチュエーション)を考えてみました』。とおっしゃっていました。その返信で、ぼくはダントツで面白い歌と、そうではない歌を指摘しました。

③気にするな誰もがプラス10歳に見える呪いの鏡だきっと

⑤手鏡に写るじぶんを慰める今日がわたしの一番若い日

③がそのままでダントツで番面白い! 
⑤は少し手直しするかもしれないけど、でもおもしろいと思いました。

そして⑤の改作例も提示して、こうするともっとおもしろいんじゃないかとまねきねこさんとお話していました。

⑤手鏡に写るじぶんを慰める今日のわたしが一番若い(改作例)

原案から「日」をとってしまったんですね。こうすると③と同じくらい面白い歌になるとぼくは思いました。

きょとんとするまねきねこさん。③が一番平凡だと思っていらっしゃったらしいです。


①、②、④のひっかかったところはそのときの文章のまま指摘します。

①まじまじと手鏡見ている くたびれたわたしのような あなたはだあれ

①は、「くたびれたわたしのような」ってあなたの説明みたいにみえるから、むしろないほうが面白いです。あってもくたびれたってはっきり言わないほうがいいかも。

②手鏡はタイムマシンかバカヤローシミやらシワやら写しやがって

②は、タイムマシンが面白いですけど、同時に分かりにくいです。タイムマシンって過去に行ってるか未来にいってるかわからなくないですか? でも口調が大好き。これはタイムマシンを変えれば名歌に化けますね。

④「きれいだね」お世辞喜ぶ歳は過ぎ手鏡だけが嘘をつかない

④はやや格言みたいな調子になってるかなあ。
べつの形で言い換えられませんか? 

講座BBSより

どうも話をきいていくと、まねきねこさんはこんなふうにおっしゃっていました。


③はもともとわたしの中で、自信作ではなく、とりあえずこれも残しておこう、ぐらいの短歌でした。

それは、【説明】の少なさでもお分かりいただけるかと笑 全然、執着してない短歌なんです。

それを「代表作」と言ってもよい、とまで絶賛していただき、本当に不思議な気持ち。じぶんでは気づけなかった③のよさ。③をしっかり自分のものにしようと、西巻さんのご投稿を何度も読み返しています。

そうか、短歌とはこういうものなのかと、目から鱗が落ちるような思いです。

今回、最初に西巻さんに、シチュエーションを考えて、との助言をいただきました。その通りにやってみたんです。

「手鏡をみたショック」をさらに細かくシチュエーションにわけて、ひとつひとつ気持ちを確認する作業の中で、ふわっと浮かんできた。

詠みたいテーマをシチュエーションに分けて考えることで、焦点を絞っていった、という感じです。

普段は、こんなふうに短歌を作っていません。テーマ決めて、思い付いたものをパッと三十一文字にしています。

ここぞという短歌を詠みたいときは、今回のようなプロセスを辿ってみよう。これを今後の指針とさせていただこうと思います。ありがとうございます。

今回思ったのですが、③は、自分では選ばない短歌です。

でも西巻さんは選んでくださった。
選ぶ目、見極める力というのは、どうやって養って行けばいいのだろうかと。

経験ですか? それとも多くの短歌を読むことですか?

あれ、たぶん、まねきねこさんは5W1Hを入れたりすることで、より短歌が深くなると考えているのではないか? と思ったのです。

そこでいろいろ考えて、このことに対する自分の意見をながながとBBSで述べさせていただきました。それは次にありますが、この講座は、無駄話を大事にしながら、ひとりひとりにそれぞれ違う、わかる形で「短歌の魅力・短歌の型の魅力」をお伝えする講座です。実は一人ひとりはのびのびやってもらって「個性をだせ」「個性を出せ」と言っているような感じなんですけど、伝統的なやり方のほうが、個性的になるよ、と実地でおつたえしているのです。

だからむしろ「指南役」の歌人のほうが、これを10人いるなら10人違う言い方で、その人の様子や歌柄などを見極めてお伝えしていくので、逆に一律に「型にはめる講座」ではないんです。

まずはその人その人に似合った服を来ていただくのが大事だと思っています。

それを踏まえて、直接にご本人にお伝えしたのがこんな言い方です。


ありがとうございます。そうですね。作り方をどっかでガツンと知ると、急に伸びるんですよ。短歌って。
ぼくも投稿していたときはなんで落ちたのかさっぱりわからないし、選ばれたのかよくわからない。

なんか平凡だなあと思った歌に本音がでたり、自分の意図と読者の意図が全然違うなあってことあります。

それはですね、こちらがプロだからでもあるけど、やっぱり鏡みたいに作者は意識してみないと自分の姿ってわからないじゃないですか。

同じことがあるんですよ。傍目八目っていいますけど、ぼくもはっと鏡を見て、「うわー髪の毛ぼさぼさだあ」とかあります。

でもそれもふくめて他人は面白いんですよ。だから客観的に見る訓練ですね。その量を多く積めば、絶対におもしろくなります。

そもそも短歌ってテーマ決めて読むものじゃないんですよね…。みんなテーマテーマっていうから、誤解してるんです。

エステに行ったとき、ていうのを、エステで足つぼ受けてるときなのか、鏡をみたときなのかそこでぱっとあらわれた感情を「うわーー」ってみんなに見せればいいんです。

足つぼやったときの「いたたたた」でも歌になります。短歌は派手にするんじゃなくて、一瞬の感情を見せればわかるんですけど、その感覚をわからない初心の方に文章で伝えても伝わらないので、えいやーって実戦で教えたほうが良いと思っています。

いまの短歌って中間指導者っていうか、細かいところを丁寧に教えてくれる人がいないんですよ。なんかルールは57577しかありませんとか。
これ、日本語間違ってますからね。

57577とかはもはやルールですらないし。型なんですよね。

>経験ですか? それとも多くの短歌を読むことですか?

経験ではないですね。年数やってても、結局自分の分かる範囲の歌しかつまみ食いしない人とかいますしね。短歌って、雑食にいろんな歌をつまみ食いするしかないんです。

プロの歌人は、実はいい読み手なんです。古今東西、知らない歌がないくらいまんべんなく歌を知ってます。ぼくはまだまだ戦後とか現代に偏ってるので、近代の良さはいまいちです。

たとえばこんな歌っていいと思うかどうかなんですけど

かさこそと掛稲(はさ)の裾出(づ)る畔(あぜ)雀陽(ひ)のまだ残る穂を掻きわけて(北原白秋)

ひとつひとつ雀出(で)て来(く)る掛稲(はさ)の外(そと)のこり陽(び)遠し早や時雨れつつ


これ近代短歌、北原白秋なんですけど、意味はどうこうよりもまず「雀の動きがかわいいですね」って批評は、いくら現代短歌よんでもでてきません。
ことばの裏にある心を読めるかは、短歌だけではなくいろんなジャンルをよんでて、短歌も時代問わず万能に見えないとわからないです。

なので、ある程度鑑賞はプロのちからがいるんですよね。

歌人は、歌の量ではなく、歌の種類をたくさん知ってるかで決まります。そうやって一個一個、歌人が見て感じたものを、読者に教えるの場がかつての短歌指導にはあったんですが、いまは全くなくなりました。寂しいことです。

でも作り手は自分の言葉の範囲でいいか悪いか判断すればいいので、実は作り手有利なんですよ。短歌って。

だから、ぼくも関西弁習いに関西住もうかなと思ってますけど、いろんな方言とかニュアンスとかの話をされると食いつきます。特に伝統短歌の歌人はことばの収集者ですから。なんとなくまねきねこさんの話が面白いんですよ。

でお歌ですが、多分、笑わせる気はなかったのだと思うのですが、でも面白いんですよ。ぱっと一瞬の感情が見えて、うまく短歌にハマってて、しかも、ムダな箇所もない。「ちょうどいい」んですよ。この感じが、大事です!

ほんとぼくはおしゃべりで、「こういう附に落ちるような解説を一人ひとりにする」ことに心血を注いでおります!

散文は5W1Hをたしていけば面白くなりますが、短歌の場合は、こころを表すために「引き算をしていけばおもしろくなる」文芸だということです。

今週でなんと無料講座自体がおしまいで、11月の正式開講に向けての準備期間に入りますので、迷っている方はぜひ講座の雰囲気などもみて、一回でも一緒に短歌を完成させてくださいね。

おしゃべりばかりの講座ですが、どうぞよろしくお願いいたします!

まだ投稿間に合います! 月曜日にやりとり完了をお願いしていますが、1首なら間に合うかも。ご参加お待ちしております!!




ベスト3


今週いい歌多いです!

1位 気にするな誰もがプラス10歳に見える呪いの鏡だきっと(まねきねこさん)


なにも添削なく、ご自身で掴んでこられた短歌です。初心者とは思えないなあと思います!!

2位 子の耳に私の耳が重なって地下鉄の窓にほのかに映る(竹さん)


めっちゃいい歌。これご自身で掴んできたの? っていう出来です。ちょっと語順を変えることありましたが、やりとりのなかで生まれてきた歌です。


3位 あんなやつの写真集がおすすめに出た途端 怒りで壊れる俺の華奢な心www(松代守弘さん)

これはちょっといろいろこちらでも工夫したんですが、怒りの感情を表すとき、「破調でいく」っていうのも一つのスタンスだなと思って3位に採用。

ええっとこの1位、2位、3位はほぼ「情実」です。概ね作者の言葉か>やりとりが面白いか>発見が面白いか

が基準なので歌としての良さよりも過程をとっておりますのでご了承ください。

さて、わたしはこの講座で指南役をやっておりますが、添削というと違うイメージが付くので、新しい言葉を作りました。

1vs1で作品を読み、それに合わせてこちらの伝え方をかえ、作者の本当に言いたいことを引き出すような講座をしています。

これは添削でもさく、ひとりの創作でもなく、作者と指南役がお互いに対等という意味で、

「双作」


と言えるのではないかと思いました。

また新しい用語を作ってしまいましたが、一緒に「双作」していきましょう!!


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西巻 真
こちらからもサポートできますが、サポートを押すのがめんどくさい方は私の募金用講座も活用ください。 SBI新生銀行 0397 さくら支店 300 0561080 ニシマキ マコト です! よろしくお願いいたします。