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あくびのふしぎ世界入門

2025年へ、あけましておめでとうございます


あくびとともに進化した、ユニークすぎる日本文化‼


年明け早々、妙なサブジェクトに取り組むことになった。欠伸アクビあくびである。文学者や学術系の表記は、欠伸という字をあてることが多いようだが、わたしは〈あくび〉の表記が好みだ。いつも猫と一緒で、あくびは四六時中お目にかかる。あの小さな口をめいっぱい広げて、体を伸ばすしぐさにぐっとくる人も少なくないはず…。それにあくびにはとっておきのエピソードがいろいろある。ということで、今年の初記事は身近な話題の〈あくび〉を取り上げたい。教室で先生が大声で説明を続ける中、何人かの生徒があくび協奏曲だったり、こっそり立てた本にかくれてあくびをしたり、成人しても勤め先でトイレに行くふりししながら、あくびの誘惑に負けたり、あらためて考えてみると〈あくび〉は、もっとも身近かな行為のように思えるのだ。

〈あくび〉はコミュニケーションに関わるものだった!?

〈あくび〉は体が自然に出す反応のひとつで、日常生活でもよく見かける現象だ。一般的に、欠伸をするときは深く大きく息を吸い込み、口を大きく開けることが多い。この現象がなぜ起こるのか---その理由は長い間はっきりしていなかった。あくびがそれほどミステリアスな現象だとは知らなかった。しかし近頃は、〈あくび〉がただの眠気や退屈のサインではなく、身体や心の健康、さらには人とのコミュニケーションにも関わっていることが少しずつわかってきているというのだ。これは興味をそそられる。という摩訶不思議な理由から、ご紹介させていただくきっかけができたのだ。

疲れた脳を活性化させ、思考能力を高める、あくびの役割

〈あくび〉の最も広く受け入れられている生理的な理由は、脳が疲れや眠気を感じた時に、酸素をより多く取り込んで脳を活性化させようとするためだという説。深く息を吸うことで、脳に新鮮な酸素が供給され、思考能力が高まると言われている。また、〈あくび〉は体温調整の一環としても機能すると考えられている。特に、脳が過熱している場合、欠伸をすることで脳の温度を下げる効果があるとする研究もあるらしい。そうすると、あくびは画期的な役割がある。決して、なまくらなものではなかった。

「あくび伝染」は社会的共感や連帯感の一部だった!?

欠伸は単なる生理現象にとどまらず、社会的な側面も持つ。多くの文化で欠伸は無意識に他者へ伝染し、社会的な絆を深める役割があると考えられている。例えば、誰かが〈あくび〉をすると周囲の人もつられて〈あくび〉をすることが多い。これは「あくび伝染」と呼ばれ、社会的な共感や連帯感の一部と捉えられる。

アリストテレス「動物誌」、中国の古典「皇帝内経」のあくび感

〈あくび〉についての最も古い記録の一つに、アリストテレスの『動物誌』がある。彼はあくびを主に人間や大型哺乳類に見られる行動として記録し、その意味について議論も行った。あくびは体の必要に応じた反応だと考えていたようだ。一方、東洋でもあくびに関する記述がある。中国の古典『黄帝内経』では、体調や気の流れと関連づけられ、エネルギーの循環や調整の一環とされていた。日本の古典文学でもあくびはよく描かれ、眠気や疲労の象徴として登場する。

日本の古典文学にみる「あくび効果」

日本の古典文学では、あくびがよく登場し、登場人物の心理状態や状況を表現する手段や装置として使われることが多い。あくびは眠気や退屈、疲労の象徴として描かれることが一般的だ。以下に代表的な作品を挙げ、あくびがどのように描かれているかを考察してみたい。

1. 『源氏物語』の心憎い演出に「あ・く・び」

『源氏物語』は平安時代の日本文学の金字塔であり、〈あくび〉に関する描写もいくつか見られる。例えば、光源氏が会話に飽きて〈あくび〉をする場面があり、そこには彼の退屈や興味の薄れ、人間関係の疲れや精神的な満足感の欠如が象徴されている。さらに、『源氏物語』ではあくびが「恥ずかしい行動」とする描写もある。貴族社会ではあくびを無意識にすることは無作法とされ、それは当時の礼儀や社会的規範を反映しているが、〈あくび〉をそうした表現の小道具として挿入しているところは、心憎い演出といえる。

2. 『枕草子』のあくび的演出に天才の着眼点をみた

『枕草子』は清少納言による随筆で、日常の出来事や感情が鋭い観察眼で描かれた作品だ。才能あふれる清少納言は、〈あくび〉についても忌憚のない意見を述べている。「ひとたびあくびをすると、それが他人にも伝染する」といった視点が示されているが、これはまさしく最近顕著に取り上げられている〈あくび〉についての学術的な視点である。平安期の清少納言が〈あくび〉が無意識に広がる様子を独自の視点で観察し、社会的な現象として面白く、時には滑稽に描いている。天才的着眼点に圧倒されるばかりである。

3. 『平家物語』のあくび効果、空虚さの象徴

『平家物語』では、戦の合間や長い行軍の途中で登場人物が疲れ果てて〈あくび〉をする場面が描かれている。これらの描写は戦の厳しさや戦士たちの肉体的・精神的な疲労を強調する役割を持つ。〈あくび〉は単なる疲れの表れではなく、戦の終わりを待つ心情や、静寂の中に漂う空虚さを象徴することにも活用される。

4. 江戸時代の浮世絵や俳諧

江戸時代になると、浮世絵や俳諧でも〈あくび〉は日常の一コマとして描かれるようになる。特に庶民の生活では、〈あくび〉は笑いの要素として扱われるようになる。俳句や川柳にもあくびを詠んだものが多く、眠気や退屈をユーモラスに表現する手段として使われた。あくびの様子を詠んだ俳句は、身体的な疲れや日常の些細な瞬間を感覚的に表現するための一つの手法だった。

言葉にできないニュアンスを伝える、あくびの演出効果。日本文化を高度に発展させた影の立役者!

日本の古典文学における〈あくび〉の描写は、登場人物の心理状態や社会的状況を反映する手段として使われることが多い。退屈や疲れ、興味の欠如といった感情が表現される一方で、その背後には当時の社会規範や文化も垣間見える。〈あくび〉の描写は登場人物の内面や物語の進行に微妙な時間的ニュアンスを加え、読者にその場の空気感や感情を伝えるための巧みな表現技法として活用されている。〈あくび〉の演出効果は、日本文化を高度に発展させた装置の一つともいえる。

何のためにあくびは出るの?



ハクション大魔王⭐︎アクビ娘の歌


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kyotoK
noteの2年目はチャンレンジングな創作にもアプローチしたいです。応援いただいたチップで取材をしたり、作品づくりに活用させていただきます!