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「犯罪都市 PUNISHMENT」「対外秘」批評

 韓国映画を二本見ていたら、両方の作品に同じ俳優が数人出ていたので、まとめて紹介することにした。一本目は9月27日に日本公開された「犯罪都市 PUNISHMENT」。2017年公開の「犯罪都市」を初作とするシリーズの「犯罪都市 THE ROUNDUP」(2022)、「犯罪都市 NO WAY OUT」(2023)に続く四作目にあたる。犯罪都市ことソウル。マ・ドンソク扮する強力班副班長マ・ソクト刑事は灰色の脳細胞で推理したり、こつこつと足で捜査するタイプではなく、もっぱら太い腕っ

    • 「ヒューマン・ポジション」批評

       北欧ノルウェイの小さな海岸町オースレン。20分もあれば観光スポットを見尽くせるというが、大型のクルーズ船が停泊しているところをみると、穴場なのかもしれない。アスタはしばらく休職していた地方新聞社にもどり、記者活動を再開するが、なにしろ小さな町なので熾烈な特ダネ合戦なんてのはまるっきりない。アフリカ系女子ライヴとアパートに同居しているが、二人の関係もはっきりしない。ライヴの方は椅子の修復をしたり、キーボードで演奏したりしているが、キャラクターの説明がほとんどないので、職業もわ

      • 「顔さんの仕事」

         台湾南部の都市・台南で、映画の看板絵を長年にわたって描き続けている顔振発(イエン・ジェンファ)。彼の仕事ぶりを、今関あきよし監督が記録した64分のドキュメンタリーで、今関とは八ミリ時代からの盟友というイラストレーター三留まゆみがインタビュアー、通訳として台湾の俳優・柏豪が参加している。看板絵とは映画館の正面外壁に掲げられるもので、主要俳優の顔や印象的な場面が描かれている。今ではほとんどが配給会社から提供されるマテリアルで、どこでも同じだが、看板絵は看板師が実際に手描きしても

        • 「ナイトスイム」

           今回は6月7日に封切られた「ナイトスイム」を紹介しよう。  ジェームズ・ワンとブラムハウスというホラー・ジャンルに特化したヒットメイカ―が、「M3GAN ミーガン」に続いて手を組んだドメスティック・ホラーの一篇。彼らの前作同様、普通の一家を中心に、“よせばいいのに、なぜここに来た?!”というお定まりの導入部から、一家とは無関係の怨念が起因となる恐ろしい出来事に遭遇する。恐怖のどん底へ陥れることになる理由が冒頭でさらりと描写されが、雰囲気つくり程度で明確ではない。途中でもちょ

          山村聰の新聞記者映画三作品

           山村聰は1950年代なかばから末にかけて三本の新聞記者映画に出演している。年代順にいうと、1954年の「黒い潮」、1955年の「坊っちゃん記者」、1959年の「闇を横切れ」で、一作目と二作目は日活が配給したモノクロ作品、三作目は大映配給のカラー作品。 「黒い潮」(1954年8月31日公開) 【惹句】愛情も 正義も 真実さえ 押し流す時代のどす黒い潮!!  「黒い潮」は、井上靖が『文藝春秋』の1950年7月号から10月号まで連載した『黯い潮』を菊島隆三が脚色、山村聰が監督し

          山村聰の新聞記者映画三作品

          「刑事物語」シリーズその四

          ⑨「ジャズは狂っちゃいねえ」(1961年1月9日)54分  監督・小杉勇 脚本:宮田達男 〔惹句〕狂乱のジャズに咲く悪の華!暗黒街に挑む親子刑事の斗魂!!  ジャズバンドのプレイヤーと麻薬を絡ませたサスペンス・スリラー。SONYラジオテープレコーダー、こけし缶詰、渋谷西村らのネオンや看板が映る。ジャズ喫茶ファンキーでの演奏を終えた五条健夫とファイブジャンプス。ペイに溺れている五条を諫めていた弟で、バンドボーイの伸一が売人のサブを殴ったところ、サブは倒れて、後頭部を打って死亡

          「刑事物語」シリーズその四

          「刑事物語」シリーズその三

          ⑥「小さな目撃者」(1960年7月5日)54分 監督:小杉勇(、、なし) 原作:大村弘 脚本:高橋二三 〔惹句〕つぶらな瞳に灼きついた恐るべき戦慄の瞬間!…  京成浅草駅が映る。日進製薬向島工場から広範囲抗生薬ジェンタシンが盗まれる。宿直の吉岡が手引きした犯行だった。守衛の息子宏が外にある便所に行き、吉岡が二人の男と箱を運んでいるのを目撃。守衛夫婦が外に飛び出すが、犯人に撃たれて死亡。吉岡は頭を殴られて瀕死の重傷を負っていた。向島署の殺人課は宏から事情を聴くが、「知らない、

          「刑事物語」シリーズその三

          「刑事物語」シリーズその二

          ③「灰色の暴走」(1960年3月6日)52分 脚本:渡辺桂司 〔惹句〕俺はデカだ!パトカー襲撃の兇悪犯に命を張った父と子の刑事物語!!  深夜。東都信用金庫深川支店に強盗が入る。金庫破りのボス本間が見回りに来た警官を射殺して逃亡。金庫をバーナーで開けていた富永だけはあとから逃げ出すも、警官に足を撃たれる。この富永を第一話で佐藤保郎を演じていた待田京介が演じている。源造が「星は何でも知っている」の替え歌(空の星ではなく犯人を意味するホシにして)を歌いながら現場入り。二年前に起

          「刑事物語」シリーズその二

          「刑事物語」シリーズその一

           第一回目は日活が1960-61年に公開した警察捜査シリーズである「刑事物語」を取り上げてみた。所轄署の老練刑事である父親と警視庁の部長刑事である息子がコンビを組んで、犯罪事件の捜査に携わるというのが、全編を通じてのコンセプト。息子の方が位が上という設定で、一緒に家を出ても父は電車、息子は急いでいるのでタクシーで捜査本部に向かうというシーンがあり、父がぼやくシーンがほほえましく、ユーモアと親子愛が込められていた。名前を呼ばれて、父親が振り向くと、「いや、ジュニアの方」と言われ

          「刑事物語」シリーズその一

          ブログ開始の挨拶

          竜弓人はダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーにつぐハード・ボイルド・ミステリーのライターとして知られるロス・マクドナルドが創作した私立探偵リュー・アーチャーをもじったもので、早川書房発行の『ミステリ・マガジン』誌上で映画評を連載していた時に使用していたペンネームです。  これから映画、小説を中心にしたエッセイを掲載していくつもりです。映画にしろ、小説にしろ、社会の変化と密接に結びついており、内容とは直接関係のない事象、社会情勢にも強い関心があります。文章の中に物価とか

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