「ナイトスイム」

 今回は6月7日に封切られた「ナイトスイム」を紹介しよう。
 ジェームズ・ワンとブラムハウスというホラー・ジャンルに特化したヒットメイカ―が、「M3GAN ミーガン」に続いて手を組んだドメスティック・ホラーの一篇。彼らの前作同様、普通の一家を中心に、“よせばいいのに、なぜここに来た?!”というお定まりの導入部から、一家とは無関係の怨念が起因となる恐ろしい出来事に遭遇する。恐怖のどん底へ陥れることになる理由が冒頭でさらりと描写されが、雰囲気つくり程度で明確ではない。途中でもちょいちょい怪しげなものが出てくるのだが、登場人物の目撃するところではなかったり、あるいは接触した者は命を失ったりで、その結果、一家は恐怖の出来事にどっぷりはまることになる。
 多発性硬化症にかかって早期引退を余儀なくされたプロ野球選手レイは、妻イヴ、娘イジ―、息子エリオットとともに郊外のプール付き住宅を購入。プールで泳ぐことで体のリハビリになると、せっせと水泳に励み、地域の少年野球試合に顔見世して復活ぶりをアピールする。少年野球チームや知人を招待してプール・パーティを開くが、ここからプールに潜む何かが本格的に牙をむき始める
 やがて、前に住んでいた一家の少女が溺死していた事実が判明し、昔この場所に湧いていた泉の神秘的なパワーが怪異現象の濫觴とわかる。泉の水は人の望みをかなえてくれるが、その代償に別の人の命を奪っていく。レイの多発性硬化症は治らないと診断していた医者も驚く回復ぶりを示したが、その代償を払うことになるのは誰?
 プールの謎が解明されていく過程がスリリングだし、家族の絆、愛情がつたわってくる。続編の出現をきっぱりと断ち切るラストの潔さに感服。よくできたサスペンス・ホラーだった。ただし、題名は「ナイトスイム」(原題では“Night Swim”)だが、「ザ・プール」(“The Pool”)とした方が良かったのでは。
 「ソウ」「死霊館」シリーズのジェームズ・ワンと「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」を製作したブラムハウスが手掛けた一捻りした“幽霊屋敷”ジャンルの作品。限定・密閉された空間における強烈な邪悪なるものに翻弄されながら、必死に打開策をさぐる人々の行動を描いているところは共通している。ロッド・ブラックハーストとブライス・マクガイアが2014年に発表した5分の短編“Night Swim”と、マクガイアが監督・脚本を担当した短編“Every House is Haunted”をベースに、マクガイアが監督・脚本を手掛けている。レイ役のワイアット・ラッセル、イヴ役のケリー・コンドン、ともに好演。

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