「刑事物語」シリーズその四
⑨「ジャズは狂っちゃいねえ」(1961年1月9日)54分
監督・小杉勇 脚本:宮田達男
〔惹句〕狂乱のジャズに咲く悪の華!暗黒街に挑む親子刑事の斗魂!!
ジャズバンドのプレイヤーと麻薬を絡ませたサスペンス・スリラー。SONYラジオテープレコーダー、こけし缶詰、渋谷西村らのネオンや看板が映る。ジャズ喫茶ファンキーでの演奏を終えた五条健夫とファイブジャンプス。ペイに溺れている五条を諫めていた弟で、バンドボーイの伸一が売人のサブを殴ったところ、サブは倒れて、後頭部を打って死亡した。サブのボスである井口は独自に犯人を捜して、彼がコッペパンの中に隠していたペイを取り戻そうとする。ペイは才能あるミュージシャンをむしばみ、トランペッター高木のところへやってきては金の無心をする老人も元は優秀なミュージシャンだった(のちに高木の実父とわかる)。五条を追った警察が放送局JOPRに行き、エレベーターに乗り込み、操作する者がいないので「あ、こいつは自分でやる奴だ」というところがおかしい。伸一がエレベーター内で殺されていた。かつてトロンボーンをやっていたことがある佐藤保郎が、東京駅待合室に行き、求人をしている男がいたので、バンドに臨時雇いで加わる。麻薬組織に接触するため中毒を装い、売人の手先である男のつてで、浅草洗足のタバコ屋に行き「いーさんに聞いてきた」と言うと、障子も破れ放題のボロ家へ導かれた。そこには数人の中毒患者がいて、例の老人もいた。ペイをその場で注射しないと怪しまれるので保郎も注射し、のちに苦しむことに。改めてぼろ家を捜索に行くと、もぬけの殻だった。ボスは手下の南マリ子を使って麻薬の運搬を図るが、尾行してきた源造刑事に気づいて一旦乗り込んだ列車から降り、源造は列車に取り残される。ラストは鉄道線路わきの操車場での銃撃戦となる。
終盤の捜査が収斂していくところや銃撃戦は迫力があった。上野山功一がドラマーの高木役で、珍しくペイには手を出さないクリーンな人物に扮していた。最後に源造刑事が「麻薬ってのは本当に困ったもんだ」と言い、ネオンの映像で終わる。白木秀雄クインテットが出演している。五条に伊藤孝雄、井口に佐野浅夫、マリ子に楠侑子、捜査主任に長尾敏之助、横浜の平岡刑事に弘松三郎、ボロ家警戒役の本多に野呂圭介。
ロケ地 【東京都】千代田区(日本貨物鉄道中央本線飯田町駅)
⑩「部長刑事を追え」(1961年2月1日)55分
監督・小杉勇、、脚本:高橋二三
〔惹句〕地下の暗黒組織を砕け!札束の乱舞に酔いしれるドル買いの指!魔の本拠に挑む親子刑事11
イヴォンヌ・モワローというシャンソン歌手のリサイタルを佐藤親子が見ている。ただし、源造は居眠りしていた。小松川芸能社の小松川社長は保郎の大学法学部の同級生だった。佐藤家の経済状況は厳しく、父親は「金さえあればたいていの幸せは手に入る」なんてつぶやく。息子は退職願をだして、小石川のところへ。呼び屋は外タレにギャラを払うためにドルが必要であり、太田金融という闇ドル業者から日本円と引き換えにドルをもらうことになっていた。小松川は「手始めに太田のところへ行ってくれ」と言う。太田金融は目蒲線ガードそばのぼろビル二階にあったが、保郎が行ったときは真っ暗。出前持ちの女の子がやってきて、彼とすれ違った直後に太田の死体を発見。スペイン製アストラ・オートマチックで撃たれていた。モンタージュ写真を作ることになり、それがだんだん息子に似てくるので源造はドキンとなる。缶カラから源造が息子にプレゼントした万年筆が見つかり、いよいよ息子が有力容疑者に。父は退職願を出すが、「この手で保郎を捕まえたい」と辞職は保留。
[以下ネタバレ] 真犯人はダフ屋の信公で、小松川を脅迫し、丸の内劇場の奈落に夜9時に来いと電話。丸の内劇場ではAll Jazz Festivalが開かれていた。ジャズというよりロカビリーに近かったが。奈落で信公、小松川、佐藤親子が対決し、小松川を逮捕。保郎の辞職は嘘くさいと思っていたらやっぱり、実は小松川が怪しいので保郎は潜入捜査していたことがわかる。
小松川に「ジャズは狂っちゃいねい」の伊藤孝雄、信公に深江章喜。「ルピットのんで風邪を治せ」と言った台詞があり、壁にルピット、ワカ末のポスターが貼ってあった。外国為替が対外取引原則禁止になっていた時代を背景にしたシリーズ最終作で、劇場の奈落での銃撃戦はなかなかの出来。
ロケ地 【東京都】台東区(上野、隅田公園)/墨田区(墨田署)/千代田区(警視庁)/▲(隅田川)