千熊

図書館勤務。 自作の小説、思ったことなどを上げていきます。 2022年10月、ぼちぼち…

千熊

図書館勤務。 自作の小説、思ったことなどを上げていきます。 2022年10月、ぼちぼちと再始動します。

マガジン

  • 日々思う「哲学的な何か」、あと感想とか。

    感想、雑記、ひとりごと雑談。ときどき切実。たいていのんき。

  • 【創作】少年少女小説、ファンタジー小説など

    自作の小説です。 書き溜めたものの放出と、新作ぼちぼち。

最近の記事

心を料る (潮が舞い子が舞い小感)

自分の心を――つまらない小さな言葉で規定され、単純化されたくないと、お前が言うのはわかる。わかるどころか、私だって―― 同じ気持ちだ。忸怩たる気持ちだ。 言葉は心を切り刻む。 だが要さなくては無理なのだ。 要さずにさらけ出しても人はお前を理解しない。 理解はおろか、お前の声に気づくことさえない。誰にも無理だ。 お前の心は感情はこぼれる水のようにつかめないものだ。 けれどもそれでもなお、余さずこぼさずと希求するから。 お前も私もそれを求めるから。 私はお前の一部を的確に、瞬

    • 目が口でないために アニメ「メイドインアビス 烈日の黄金郷」感想

      ※アニメ「メイドインアビス」第2期最終話までのネタバレを含みます。 死に向かって生きる 「アビス」とは、「深淵」とはなんだろう? アビスを下りるということ、それは「生きることそのもの」なのではないか……。第1期と劇場版を見終えた時点では、ただ漠然とそう感じていた。 生とは死という深淵に向かう、その旅路のことを言うのだと。 みな完全なる闇へ向かって降りている最中なのだと。 行きつく先に死という闇しかなくても、生きることをやめることはできない。 これはそれなりに、真に迫

      • 【掌編小説】お婆ちゃんの手と、銭湯と。【2000字のドラマ】

        何も考えずにだらだら生きてきたと思う。 穏やかで退屈な日々。 世界的な感染症の蔓延で、それがプッツリ断ち切られて、不気味に静かな春だった。 でも俺は、別に不安じゃなかったんだ。職場は臨時休業になったけど、幸いしばらく補償はあるし、降ってわいた長期休暇に浮かれてさえいた。 そうだswitch買おう。キメツも見よう。もともとインドアを極めたこの俺、人と会わなくても全然平気……。 だけどなぜか体が重い。何もしたくない。 昼過ぎまで寝て、やくたいもないソシャゲで気付けば日が暮れる

        • 【掌編小説】ミノダさんの手紙 【2000字のドラマ】

          ミノダさんは町の図書館にいる。ミノダさんの目つきはきつい。 ミノダさんの背は低いから後ろ姿は子供みたいだ。 ミノダさんはよく物にぶつかる。 ミノダさんの目は悪いわけじゃないから、単に不注意なのかもしれない。 ミノダさんは真面目で無口、がんばって話すとき耳の先が赤くなる。 ミノダさんは少し小心なのかもしれない。 ミノダさんはからかわれるとまた物にぶつかる。 お話し会の担当の日が、ミノダさんは憂鬱だ。 ミノダさんが読み聞かせる時は、どうも子供たちの集中が続かない。 この仕事に就

        心を料る (潮が舞い子が舞い小感)

        • 目が口でないために アニメ「メイドインアビス 烈日の黄金郷」感想

        • 【掌編小説】お婆ちゃんの手と、銭湯と。【2000字のドラマ】

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        • 日々思う「哲学的な何か」、あと感想とか。
          2本
        • 【創作】少年少女小説、ファンタジー小説など
          12本

        記事

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第7回 完結)

          小学生杉田美亜、美少女・愛実は「宿敵」、弟・巧翔は――やっぱり「弟」。 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) 「巧翔!」 どこだ。見つからない。このあたりだったはずなのに。 「杉田」 駆け寄ってきたのは悠太だった。わだかまりなんか放り出し、美亜は問いただす。 「巧翔は!?」 「いない、見つからない。あっちはもう見た」 「探してよ、ばか!」 「探してるって!おれもっかい迷子センター行ってみるから、美亜は向こうの方探して」 返事もせず美亜は

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第7回 完結)

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第6回)

          小学生杉田美亜、美少女・愛実は「宿敵」、弟・巧翔は「彼氏」。 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) 「巧翔!」 立ちつくす美亜の脇でさっと素早く動いたのは、悠太だった。麻衣奈の腕を振り払い、迷いなく巧翔を追いかけていく。 「ちょ、ゆうくん? ゆ――」 狼狽した麻衣奈が呼びかけるが、悠太はすでに声も届かないほど離れている。すぐに巧翔と同じ人ごみの中へ消えた。 「……行っちゃった。は? 行っちゃったんだけど。なに? なんで?」 麻衣奈は非難

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第6回)

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第5回)

          小学生杉田美亜、美少女・愛実は「宿敵」、弟・巧翔は「彼氏」。 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) * 間を置かず飛び出したはずなのに、愛実たちの姿は人波にまぎれてしまっていた。 逃がすか――巧翔の手を引っぱってやみくもに走り出そうとする美亜の耳に、聞き覚えのある声が届いた。 「機嫌なおせよ。家にいたってできることないだろ、な? おじさんもいるんだから、大丈夫だって。邪魔にならないようにさ――」 瑛の声だ。なだめるような妙に甘ったるい口調の

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第5回)

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第4回)

          小学生杉田美亜、美少女・愛実は「宿敵」、弟・巧翔は「彼氏」。 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) 4 ここ数日、教室はどこかぎすぎすしていた。 「立花さんいいなあ、私も彼氏ほしいなあ」 「じゃあおれの彼女にしてやんよ」 「やだあ、田中って背低いじゃん」 「白井のが低いだろ!ニキビブス」 「は? なに、もらしたくせに一年の時!」 結局形を変えただけで、男女のいがみ合いは続くのだ。いや、それは以前よりもはるかに複雑に、陰険に絡み合っていた。 彼

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第4回)

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第3回)

          小学生杉田美亜、美少女・愛実は「宿敵」、弟・巧翔は「彼氏」。 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) 3 「杉田さん、食べないの? めっずらしー」 「うーん……」 給食のミネストローネが傷にしみる。唇の裏が切れて口内炎になっているようだ。隣の女子の嫌味に答える元気もない。 巧翔が抵抗するからだ。無茶な勢いで顔面突撃した自分のことを棚に上げて、美亜は心の中で八つ当たりした。 しかも巧翔は今朝、ぐずって学校について来なかった。学校に来なければ愛実に見

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第3回)

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第2回)

          小学生杉田美亜、「宿敵」美少女・愛実への復讐の策は――? 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) 2 悶々とするだけの土日が過ぎ、月曜の朝。 教室に入るなり、美亜は何やら違和感を覚えた。みんな仲よく笑いあっているのだが、空気が妙に濃密というか、甘ったるいというか。 ドアの前に立つ美亜の脇を、仲よく手をつないだ二人組がすり抜けていった。その姿を何気なくかえりみて、美亜は我が目を疑った。 「……!?」 女子同士ではない。無論男子同士でも。手をつない

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第2回)

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第1回)

          小学生杉田美亜、「宿敵」美少女・愛実への復讐の策は――? 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回(完結) 1教室のドアを開けたのは美亜(みあ)だった。 夏の西日がろうかにさっとあふれ出して、とっさに中に誰がいるのかわからなかった。だから美亜はすぐに飛びかかったりせずに、不機嫌な声をその影にかけた。 「悠太(ゆうた)?」 週一度のクラブ活動で、思いきり校庭を走り回った後だ。満足して下校しようとした美亜の通学帽を、同じクラスの悠太がうばい取って逃げたのだ

          <連載小説 全7回>家庭内姉弟(第1回)

          【小説】あいすべきひと(後編)

          (前編へ) 翌朝教室に行くと、ちょっとした問題がまさに進行中だった。教室の後ろの方で、日野愛華と佐伯が何やら言い合っている。 「何あれ、どしたの?」 結衣が昨日仲良くなったとなりの木崎さんにたずねると、 「日野さんが佐伯に『おはよう、今日もかわいいね』って」 はー……すごい。追い打ち? それはやりすぎじゃない、日野愛華、と結衣は他人事ながら少し心配になる。わざわざなんでそこまでコトを荒立てるんだろう。 ひやひやしながら様子をうかがうと、佐伯は妙に冷静な口調で日野愛華をさと

          【小説】あいすべきひと(後編)

          【小説】あいすべきひと(前編)

          客観的に見ても、結衣(ゆい)はなかなか整った顔立ちの女の子だった。 大人っぽいとか、アイドルみたいとかいうのではないけれど、子どもらしく澄んで大きい目と通った鼻筋が、素直なかわいらしさをかもし出している。早くに亡くなった母親にもよく似ていると言われる。 結衣自身は母のことをあんまり覚えていないけれども、父の友章(ともあき)はそういうのも含めて、娘に特別な思いがあるんだろうな、とは自分でもわかる。 だから友章が甘いのも無理はない。のかな、とも思うけれど、それでもちょっとなあ

          【小説】あいすべきひと(前編)

          【短編小説】名もなき伝説の終わり

          王国の伝説にはこうある。 ――天より下りし勇者、地にはびこりし悪魔共の王と相戦い、これを打ち倒しき。魔の王、地の底に落ち、聖なる大岩これを封じき。 魔の王呪いて、「千年の後、我再び地上によみがえらん」と。勇者答えて、「魔の王もしよみがえれば我の血を引きし者、必ず其を打ち倒さん」と。 これより後勇者、王となり、国大いに栄ゆるなり。 しかれどもゆめ忘るな、魔王は滅びず。千年の後蘇らん。魔王に備えよ―― そして時は過ぎようとしていた。 王国は、勇者の血の継承を国是に今日まで永ら

          【短編小説】名もなき伝説の終わり