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メランコリー親和型—うつになりやすい気質

昔、介護の仕事をしていたとき、うつ状態になってしまい、心療内科に通うようになってしまったことがあった。
直接の原因は職場の上司と同僚との人間関係で、自分の健康のために、やむ得ず辞める決心をした。
そのとき自分が担当していた利用者さんには、事情を話して退職する旨を伝えた。
シフトを抜けることで迷惑をかけてしまうのが心苦しかったが、その方はメンタル不調についてとても理解のある方で、最終勤務日まで良い関係を保つことができた。
しかも、メンタル不調について講演もしたことがあるくらいの専門家だったというだったので、色々と教えていただいた。

今回はその一部をご紹介したい。

メランコリー親和型

うつになりやすい気質と言われている「メランコリー親和型」というものがある。
厚労省の資料にも出てくるそうだ。

私は典型的なメランコリー親和型の性格だと指摘された。

メランコリー親和型とは、秩序やルールに忠実であり、非常に献身的であり、頼まれると嫌と言えない、真面目、仕事熱心である、責任感が強いなどの特徴がある。 一般的には、真面目で勤勉なタイプがメランコリー親和型であると理解してもらっても差し支えない。

一般社団法人安全衛生マネジメント協会HP

…確かにそうです。
そうやって生きてきた。
そして、自分にも当てはまると思った人は、たくさんいらっしゃるのではないだろうか。

なぜなら、献身、自己犠牲、真面目、仕事熱心、責任感が強い、ルールを守る…これらすべて日本人の「美徳」とされているものではないだろうか。
ということは、これらが知らず知らずのうちに、日本社会から強制されているということになる。
日本人にはうつが多いと言われているのも納得だ。

「美徳」というものは、幼いころからそれが「良いこと」とされて、家庭や学校からもそう教えられ、刷り込まれていく。
そうして「美徳」に育てられた日本人は、「美徳」を備えた素晴らしい大人になり、うつになりやすくなってしまう。
極端にいうと、社会から気づかないうちに、うつになるように強制されているともいえる。

ストレスは、花粉症の花粉のように、一定量をため込むとメンタル不調を引き起こす。
「美徳」を備えた人は、すでにデフォルトでストレスを溜めている。
「美徳」から外れない「良い人」であろうと無意識に振舞って、自分を押し込めているからだ。

もう一度メランコリー親和型の特徴を書くと

・秩序やルールに忠実
・献身的
・頼まれると嫌と言えない
・真面目
・仕事熱心
・責任感が強い
・勤勉

これに伴って、他にも
・人を傷つけない
・他人に迷惑をかけない
・人を騙してはいけない
・お金に執着するのはよくないことだ
・自己犠牲は素晴らしい
・弱い人や困った人がいたら助けよう

などの価値観を持っているのではないだろうか。

だって、そう育てられてきたでしょ?
それはいわば他者から刷り込まれた価値観である。

例えば、自分自身を犠牲にしてまで「良い人」になる必要はないと思うのだ。
「良い人」でいることで、知らないうちにストレスが溜まって、メンタルをむしばんでいく。
だから、もっと自分勝手に生きていいんじゃなかろうか。
もっと「悪い人」になってもいい。(もちろん程度はあるが。)
「美徳」の中に押し込められた結果、メンタル不調になるくらいなら、悪賢く生きた方がよい。
もっと欲望に忠実に生きた方が良い、と私は思うのだ。

あえて、「悪い人」になれ、と極端なことを書くのには理由がある。
メンタルを病むくらい真面目な「良い人」は、「悪く生きよう」と思っても、結局そんなに悪いことはできないからだ。
長年、真面目に生きてきた人間は、いくら「悪く」なろうとしても、結局そんなに悪い人にはなれないのだから、むしろ、それくらいの心がけでいたほうが、ちょうどよいくらいではなかろうか。

病んでいた当時、仕事帰りに電車の中でこう思い立ち、何か「悪い」こと、社会的な常識から逸脱したことをしてやろうと思った。
(今思えば、笑ってしまうのだが。)
で、独り言をいいながら帰ってみた。
通常はやってはいけないことをやってみて、なんだかスッキリした。
健康になった今では、電車で独り言をいってるひとがいたらかなり引くが、そのときはそれだけ心がすり減っていたのだろう。
でも、電車はかなり空いていたし、そんなに大きな声ではできなかった。

そして、駅についたら、ナンパでもしてやろうと思ったが、妻の顔が思い浮かび、これも結局できなかった。
真面目な人が「悪い」ことをしようと思っても、せいぜいそんなものだ。

でも、もう少し自由に、もう少し縛られずに生きてみたほうがメンタルにはよいと思う。
かの有名なアドラー心理学の本に「嫌われる勇気」というものがあるが、これにも通ずるところがある。

余談

ちなみに、今回のメランコリー親和型について教えてくれた方はALSという病気で、全身を動かすことができない。
唯一動かせる眼球を使って、透明文字盤という方法でコミュニケーションをとる。

透明文字盤

これは、文字盤を取る側と取られる側の共同作業で成り立っていて、双方に大変な肉体的負担のかかるコミュニケーション方法だ。
それなのに、丁寧に教えてくれたことにとても感謝している。

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