ハードボイルド書店員が「北條史也選手」にオススメしたい2冊
よかったです。
阪神タイガースの北條史也選手といえば、出番の有無にかかわらずベンチで声を張り上げ、味方の雰囲気を盛り上げていた印象があります。ショートの守りでも、怪我を恐れぬ気迫溢れるプレーで何度もチームを救いました。
結果的には、守備における肩の負傷がプロとしてのキャリアに響いたかもしれない。でも自己犠牲はムダじゃありません。見ている人は見ています。推測ですが、三菱重工Westの関係者が何よりも買ったのはそういう部分ではないでしょうか。北條選手のプレーはみんなに元気をくれますから。
イチ書店員として、彼にオススメしたい本が2冊あります。
業績不振に悩み、リストラの始まった会社。それでもお金のかかる野球部を存続させる意義とは? シビアな裏側や経営者の苦悩も含め、社会人野球の何たるかについて学ぶことができました。
あと私は応援歌を一緒に歌って盛り上げる手法が好きではなかったのですが、本書を読んでやっと意味がわかりました。あれはむしろ社会人野球にこそふさわしいスタイルだと。
もう1冊はこちら。
故・野村克也さんが社会人野球シダックスで監督を務めた3年間の軌跡です。ヤクルトで優勝4回、日本一3回を成し遂げた名将が阪神では3年連続の最下位。身内の不祥事もあり、志半ばでの辞任を余儀なくされました。
本当ならプロの世界で監督業を続けたかったはず。しかしノムさんは「シダックスの3年間、オレは野球が楽しかったんだ」と語っています。
プロはお金をガンガン稼ぐためにプレーする。それももちろん大変なことでしょう。でも決して恵まれていない環境で本社の仕事もしながら野球を続ける社会人の選手には、より純粋なジャンルへの愛を感じます。加えて都市対抗と日本選手権はいずれも一発勝負のトーナメント。ひとつも負けられない。ある意味ではプロ以上に厳しいのです。
彼らのひたむきさに触れたことで、野村さんほどの人がいま一度「野球が好き」という最初の出発点に戻った。同列で語るつもりはないけど、かつて私も大学生のアルバイトが作った手書きのPOPを見て「ああ、こういう気持ちを忘れていたな」と反省したことがあります。大好きな本、素晴らしい1冊をお客さんへ届けたい。そんな書店員の原点を思い出させてもらいました。
北條選手、まだまだ人生はこれからです。あなたの活躍を励みに私も頑張ります。