私的プロ野球スーパースター烈伝⑭野村克也
今回は初めて近鉄以外の選手をとりあげます。その方とは戦後初の三冠王にして、王・長嶋の終生のライバルだった野村克也捕手です。
私が野球を見始めた頃、近鉄がなかなか勝てないイメージのあるチームがいくつかありました。それが金田ロッテ、上田阪急、そして野村南海でした。
南海時代の野村さんは、捕手として世界の盗塁王、福本豊選手の攻略に血道を注いでいた感じがありましたし、当時そんなに強いチームではなかった近鉄には、歯牙もかけていなかったかもしれません。
むしろ、選手兼監督を解任されてから、ロッテや西武で戦っていた時代の方が意識されていた可能性はありますね。
現在でも交流戦やオールスターではパ・リーグがセ・リーグより高い勝率を誇りますが、野村さんが在籍されていた時代のパ・リーグは、人気面でセ・リーグにはかないませんでした。
そもそも両リーグの交流はオールスターか、日本シリーズに限られていた時代です。この時代のパ・リーグの正捕手は当然野村さんでしたが、野村さんは抜け目なくオールスターを利用して、他球団のエースのデータを収集していたそうです。後年花開いたID野球を既に実践していたわけですね。
これに気付いていたライオンズの鉄腕・稲尾投手は、絶対に野村さんのサイン通りの球は投げなかったそうです。まさに敵は味方の中にあり。稲尾さんも野村さんを意識するあまり、セ・リーグのバッターには意識がいかなかったと述懐されていました。
現在ではお祭りにすぎなくなったオールスターの裏で、こんな熾烈な闘いが行われていたんですから、そりゃパ・リーグが強くなるはずです。
南海監督を解任後、野村さんが古巣ホークスに関わることは基本ありませんでした。皮肉にも福岡に移ったホークスにはかつてのライバル王さんがいますから、おそらく野村さんは意地でも戻らなかったのかもしれませんね。
ただ、晩年巨人対ホークスのOB戦でホークスのユニフォームをきた野村さんを再び見られたのは、個人的に嬉しかったものです。
謹んで知将のご冥福をお祈りいたします。