「現場を大事に」と「経営者目線」を併せ持ちたい
考えるヒントをいただきました。
大阪と佐賀で書店を経営する直木賞作家・今村翔吾さんのインタビューです。次は神保町でシェア型書店の1号店をオープンするとか。
最も驚いたのは「取次を変えると在庫を清算し、現金に換えることができる」というくだり。恥ずかしながら知りませんでした。
一方で「在庫管理が難しい」「気がついたら大赤字を食らっている」は末端の非正規雇用である私にも理解できます。
在庫は抱えているだけで経営を圧迫する。ゆえに現場では慎重に数を検討します。にもかかわらず、本部が意味不明な量を入れてくる。動かなくても大人の事情ですぐには返せない。
重版した売れ筋を一括注文し、各店へ割り振ってくれるのはありがたい。でも「なぜいまこの本をこんなに?」も少なくないのです。
「『在庫を減らして運転資金に』で首が絞まる」も実感できます。以前勤めていた街の本屋は、社長からの「このままでは来月の仕入れができない」「もっと返品しろ」というメールが毎月下旬の恒例行事でした。
ならばとごっそり返したら、店長に「棚を貧相にしないで」「ガタガタだと売れる本も売れなくなる」と注意されました。
本が詰まっていて取り出せないのはNG。でもあまりスカスカなのも印象は良くない。繁忙期や大型連休で一時的にそうなったら、面陳にするなどの対処法をとります。平積みがなくなったら即何かで埋めるのと同じ要領です。
そもそも過剰な返品を続ければ、いざ売れる本が出てもあまり配本してもらえなくなる。お客さんも離れてしまう。いま思うと、今村さんが仰っていることを店長もわかっていた。だから社長がどんなに声を張り上げても譲れぬ一線を守ったのでしょう。
一介の書店員として「現場感覚」を大事にしています。同時にさらなる成長のための経営者目線を併せ持ちたい。金銭面の諸々次第ですが、今村さんが始めるシェア書店に興味を抱きました。