目指すは「目的買い2.0」
「書店は無意識を意識化できる場所」
青山ブックセンター・山下店長の名言です。まさに私の中の無意識にクリアな形を与えてくれました。買うつもりのなかった本にお店で興味を惹かれ、手に取り、そのまま購入。リアル書店の醍醐味だと長年感じていたこの現象を正しく言語化してもらえて助かりました。
とはいえ、現実にはベストセラーや人気コミックなどの「目的買い」だけで済ませるお客さんが多いのも事実です。彼らの期待に応えないと大型書店の売り上げは厳しい。
だから私は新刊台やエンド台などの平積みスペースは、専ら「目的買い」用の人気商品に使います。一方で「衝動買い」を誘うオススメは一冊の棚差しや三冊程度の面陳にします。
このやり方には売れなかった場合のリスクヘッジという側面もあります。好きな本を大々的に展開して動かなかったら会社に申し訳ないと。
しかし青山ブックセンターは「衝動買い」要員と思しき本でもガッツリ積んでいます。「そういう本をたくさん売れる空間を作っている」「売りたい本を売って結果を出すのが書店員の腕」という自負を感じました。
もちろん、どんな本でも自分で仕入れて並べたものが売れたら嬉しいです。と同時に、やはり「衝動買い」狙いの一冊を選んでもらえるのが格別なのもたしか。最近だと↓がそうでした。
著者・清水克衛さんは篠崎にある「読書のすすめ」の店主です。「ベストセラーは置かない」「読んでいいと思った本しか取り扱わない」ことで知られています。
「衝動買い」本をベストセラーと並べて積む青山ブックセンター。ベストセラーを置かずに「衝動買い」本だけを扱う読書のすすめ。それでも経営が成り立つのは、どちらも「無意識の意識化」を促す品揃えでお客さんもそれが目的で通っているから。いわば「目的買い2・0」です。リアル書店の反撃の糸口はこの辺にある気がします。
いいと思った本を勧める。この当たり前を実践すべく、読書と選書に力を入れていきます。