「まさかのミミック」&「退勤間近の書店員」
「葬送のフリーレン」は未読です、すいません。衝撃的なヴィジュアルに反応してしまいました。
ひとくいばこ、ミミック、ツボック。「ドラゴンクエスト」シリーズで最も苦手なモンスターです。インパスを使うのが面倒だから、ついノーチェックで宝箱やツボを調べ、遭遇してしまう。何度全滅し、溜めた所持金を半分にさせられたことか。
もう10年ぐらい前でしょうか。
地下鉄でシートに座り、しばらく眠っていました。起きると隣の男性がゲームをやっている。目に入った画面は明らかにドラクエ。7までしか知らぬ私に既視感がある。おそらく3で洞窟を探索しているところでした。
男性は若くてクールな装い。イヤホンをして淡々と指を動かし、一切迷わず先へ進む。負け知らずのデイトレーダーを連想しました。
やがて宝箱が出現。彼はあっさり開けました。「中身知ってるよ」という雰囲気で。すると「なんとたからばこはミミックだった!」の表示が。
あれ?と思いました。なぜならパーティーはそこそこダメージを受けていて、MPもさほど残っていなかったから。
この人、やっちまったのでは?
男性の表情は変わらず。ただ指の動きが少々ぎこちない。マンガだったら、額から汗がひと筋垂れ落ちる場面です。同じタイミングで電車が目的地に着いたので、どうなったかはわかりません。
書店の仕事にたとえてみます。退勤まであと数秒。もうレジを抜けていい。でも本を一冊持った人が並んでいるから、これで最後と受ける。すると「何冊か注文したい」「入ったら代引きで配送して」と伝えられる。
残業確定。もちろんお客さんは悪くない。ただこちらの心境は、ミミックの宝箱を開けた際のそれに近いかもしれません。
そういう時の私もクールを装っているはず。大好きな作家の名言を頭に浮かべながら。
どうにか、なる。(太宰治「葉」)