「暴力革命のススメ」ではなかった
おはようございます!!! 書評行きます!!!
NHK 100分 de 名著 カール・マルクス『資本論』
NHK出版 2020年出版 斎藤幸平著 116P
(以下は読書メーターのアカウント https://bookmeter.com/users/49241 に書いたレビューです)
大学時代、数ページで挫折した最強のラスボス。本書が引用していた箇所を見る限り、いまでも厳しそう。この難解過ぎる表現は訳の問題ではない。普段は「~分でわかる名著」的な本をあまり好まないが「資本論」に関してはせめてこれだけでも読むことを推奨したい。資本主義の暴走に疑問を抱く人に。マルクスの先見の明は過去最高級。特に「安いものを買い続けると給料が下がる」理論のロジックに唸った。「賃上げよりも労働日短縮」にも賛同。キーワードはコモン。読メやnoteみたいな小さな繋がりの中で深くシェアし、社会の富を共有していこう。
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私の通っていた大学には「革マル派」という組織が存在していました。
ウィキペディアによると、正式名称は「日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派」。学部自治会の役員選挙に毎回立候補しては落選したり、大教室の授業前に演壇に上がってきてスピーチをしたり。立て看板を出してチラシを配っている風景もよく目にしました。
いわゆる「学生運動」の流れだと思うのですが、おかげで「マルクス」という単語を耳にすると、あの連中のイメージしか浮かびません。彼らが本気で「プロレタリアの一党独裁を理想とする共産主義革命」を目指していたのかどうかはわかりませんが、とてもそんな思想には賛同できません。「暴力で政権を奪い取ってもいい」という前例を作ると、同じことをする者が続々出てきて不穏な世の中になってしまうから。
でもこのテキストによると、マルクス自身は「共産主義」とか「社会主義」という言葉をほとんど使っていないそうです。「資本論」の意図するものはそういう暴力革命のススメではなく、資本主義の仕組みと問題点を解き明かすことにあった、というのが解説者・斎藤幸平氏の主張です。
たしかにその視点で読み進めると、いろいろと腑に落ちる考え方が出てきます。「必要かどうかではなく、売れそうかどうかでモノを作ってしまう」とか「賃上げされても長時間労働が解消されないと意味がない」など。フィンランドの首相が「週休3日、一日6時間勤務」を目標にしているという話も初めて知りました。
「週20時間労働」はすでに実現可能だと言われています。それを阻んでいるのが強欲な「資本主義」の暴走だとしたら、平和的に対抗するためのヒントをいまこそマルクスから学ぶべきかもしれません。革命を起こすためではなく、健やかで楽しい毎日を過ごすために、ぜひご一読を。