渡り歩いたイチ書店員が「AJスタイルズ」から学んだこと
世界最大のプロレス団体・WWEのトップスターが、日本の団体へワンマッチ参戦。AJスタイルズ選手は多くのファンが設定した満足度のハードルを軽やかに飛び越えてくれました。
サラッといい仕事をし、周りへの感謝も忘れない。何かの本でアントニオ猪木さんが「難しいことを簡単そうにやる。それがプロ」みたいな話をしていたのを思い出しました。
AJ選手がWWEへ来たのは2016年。それまではTNAや新日本プロレスで活躍し、フリーランスとして世界中のリングで戦っていた時期もあります。だからこそ勝手が違う団体へいきなり上がってもファンを魅了できるのでしょう。
同じ会社に留まるキャリアを否定はしません。むしろ素晴らしい。いくつかの書店を渡り歩いてきた人間ゆえ、生え抜きが持つ純度の価値はわかっているつもりです。
一方で「このシチュエーションで他の選択肢がないのは、ここの悪い文化だな」「他を知らないから気づけないのかな」と感じるケースもある。
たとえばバイトのレジ時間。ずっとカウンターに入っていると、どうしても集中力が落ちる。1時間半ぐらいで区切って棚整理や巡回、品出しなどをやってもらう方が絶対にいい。でも4時間耐えるのが当たり前の職場しか知らなければ、それがスタンダードと思い込んでしまう。
あるいは年に一度の棚卸。閉店後に専門の業者に来てもらい、店長クラスがオールナイトで指揮をするのが大手書店のやり方です。でもかつて在籍した街の本屋は、お店を休みにして従業員総出でおこなっていました。朝から始めて夕方には終わります。
たぶん棚を見慣れていて当事者でもある書店員が自分でやる方がミスは少ない。店長にオールの負担を強いるやり方が長年変わらないのもどうなのか。
本屋同士で交換留学を実施し、互いの長所を学び合う。そんな文化があってもいいかもしれません。