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続・言葉の力の発動条件

おはようございます!!! 寒くなってきましたね。書評行きます!!!

絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える
美術出版社 2012年出版 寄藤文平著 210P

(以下は読書メーターのアカウント https://bookmeter.com/users/49241 に書いたレビューです)

アートディレクターと広告デザイナーの関係性が気になる。後者はAIに代替されるのでは。著述家も他人事じゃない。作品は即消費される運命。だからこそ感性と日頃の研究が大切。難しいことをわかりやすく伝えるのは初心者向き(本場のカレーと子どもの好きなカレーライスの違いを想像)。複雑なものは複雑なものとして抽出しないと誤った形で広まる。受け手の頭をクリエイティブにさせてこそ真のクリエイティブ。相手を能動的にするには絶妙な不足感が必要だと思う。利休の茶室みたいな。そう考えると絵を持たぬ小説の方が映画や漫画より有効かも。

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書店のレジ業務にはしばしば「広告案件」が紛れ込みます。この栞を渡してくれ、とか、女性客限定でこのチラシを同封してくれ、など。もちろん会社が対価をいただいています。先方の関係者が実際に買いに来て、チェックしているケースもあるようです。

それらの中に「JTの広告がプリントされた文庫カバーを優先してかけて」というのがあります。割と頻度の高い案件です。購入してかけてもらったカバーが家に残っていました。白地に緑の組み合わせで「モクモクと煙を吐く灰皿。自分ちなら、大騒ぎだ」「灰皿が入るポケットを、冬の私はたくさん持っている」などのコピーとイラストが印刷されています。このデザインを担当したのが著者のようです。

著者は「絵」と「言葉」の関係を「表情」と「音声」のそれに置き換えて捉えています。つまり切り離して考えるべきではないと。その上で「削られた言葉を絵にする」という哲学を打ち出しています。このアイデアの方向性が私にはとても腑に落ちました。

少し前に「言葉の力の発動条件」という記事を書きました。

この中で「絵や音楽など他のツールと競い合う状況下に置かれることで言葉の真の力が発動する」と書いたのですが、その考えを本書を読むことで補完してもらえました。さらに「では絵や音楽のない小説はどうすればいいか?」という命題の解決策も得られました。「読者が頭の中で絵や音楽を思い浮かべることを促進する文体で書く」というものです。そして、そのためにはレビューに書いた通り「利休の茶室のような絶妙な不足感」が必要であると。

いいタイミングで素晴らしい本に出会えました。誕生日のプレゼントとしていただいたのですが、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。



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