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「失われた時を求めて」を巡る冒険⑤
↓を読了しました。
704ページ。しかしまだ序盤なのです。
4巻の肝は主人公とアルベルチーヌの出会い、新たな恋の始まりでしょう。いまの自分が読むと、無邪気な言動や行動で他人を振り回す彼女よりも、気配りができて頭脳明晰なアンドレに目が向く。でも「私」と同じ年代の男性がアルベルチーヌみたいな子に惹かれるのも理解できます。
19世紀後半のフランスが舞台の物語に、現代日本における「恋愛あるある」を見出す。学生時代に国際交流サークルで実感しましたが、こういうテーマは万国共通。特にフランス文学にはその普遍性を生々しく抽出した名作が多い印象を受けます。スタンダール「赤と黒」やラディゲ「肉体の悪魔」など。
もうひとつ。この巻では「完全に忘れた頃に回収される伏線の妙」を堪能できました。超長編小説が秘める醍醐味のひとつです。
最近はドラマや小説の感想で「伏線が回収されてない」みたいな指摘を目にすることが少なくない。実際のところはわかりません。しかし私の考えでは、いかにもそれっぽく書かれているからといって必ずしも伏線とは限らない。優れた書き手は読者の目が肥えていることを逆手に取り、意外性を演出するためにあえて放置するのかもしれません。
むしろ驚きはそれっぽく書かれていない方が絶大です。この巻に登場するある人物。まさかでした。全7巻で壮大な復讐を描くデュマ「モンテ・クリスト伯」を読んだ際に似たような衝撃を味わったことを思い出しました。「この人があの人か!」と。
いまは「失われた~」の世界にどっぷり浸かっています。しかし近いうちに↑も再読したい。ストーリーを把握している二度目だからこそ気づける点があるはずだし。
なお、全14巻を読むに当たり、ふたつのルールを設けています。
1、1冊読み終えてから次の巻を買う。
2、すべて異なる書店で購入し、各々のブックカバーをかけてもらう。
1巻はリブロ、2巻は神保町ブックセンター、3巻はタロー書房、4巻は大地屋書店、そして5巻は↓で購入しました。
銀座「教文館」です。
近隣のGINZA SIXにある「蔦屋書店」は、本屋を一定方向へ全振りして進化させた最先端のエンターテインメント空間。魅力的です。ただ私みたいな本だけが好きな者にとっては、昔ながらの街の書店であり続けるこちらの方が安らげるかもしれない。
ひと通りのジャンルを網羅し、地域色を打ち出した棚も充実。死後100年のフランツ・カフカや「百年の孤独」が話題のガブリエル・ガルシア=マルケスのフェアは愛書家のツボを押さえていると感じました。
私が訪れた際は、阿佐田哲也と色川武大の代表作が隣り合って並べられ、さらに伊集院静の著作も添えられていました。これは「わかっている」書店員じゃなければできないこと。こういうお店を普段使いしたいです。
「失われた時を求めて」皆さまもぜひ。
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