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「単行本発売」が待ち切れなかった1冊
先週土曜のnoteで、4月13日に発売される村上春樹さんの新作長編について書きました。
本当に待ち遠しいです。「小説の単行本が刊行されるのをここまで楽しみにしているのはいつ以来だろう?」と考えました。
2017年2月に出た春樹さんの前作「騎士団長殺し」ももちろん早く読みたかった。ただ、いまほどの期待感はなかった気がします。おそらく2013年4月に発売された「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に納得できなかったせいでしょう。私には珍しいことですが、読書メーターのレビューで「駄作」と書いているのです。
「色彩を~」は著者にとって「長い短編」みたいな位置付けだったはず。次の新作長編に向けたある種の助走として捉えると、けっこう興味深い内容なのです。でも当時はそこまで気が回らず、物語を読み込めてもいなかった。理解不足の第一印象を疑ったり掘り下げたりする手間を経ず、直でレビューにしてしまった格好です。
そんな事情もあって「騎士団長殺し」にはあまり期待していませんでした。いまと同じくらい発売を心待ちにしていた小説の単行本といえば、やはり↓になります。
刊行は2014年11月。「重力ピエロ」「ゴールデンスランバー」などで知られる伊坂幸太郎さんと「ニッポニアニッポン」「ピストルズ」などが代表作の阿部和重さんによる合作です。
どちらも好きな作家でたくさん読んでいます。ドアーズとビートルズのコラボみたいなもので、こんな幸せなことがあっていいのかと興奮しました。発売前にネット上で公開されたインタビューも素晴らしく、いっそう期待感を煽られました。
このnoteのために↑を久し振りに読み、「キャプテン~」を再読したくなりました。単行本と文春文庫版(上・下巻)を持っているけど、新潮文庫版も買おうかな。
単行本の話に戻します。インタビューによると「共著」ではなく「合作」であり、互いが互いの書いた章に手を入れている。それだけで好奇心をそそられました。しかもあらすじが陰謀論めいていて阿部さん風味。彼の武器である細部まで目の行き届いたリアル志向に、伊坂さんの武器である荒唐無稽なキャラクターと伏線回収のアクロバットが加わったら。。。
想像するだけでワクワクが止まらなくなりませんか?
とどめになったのは村上春樹さんへの言及です。
「我々にとって村上さんは、上空を遮っているものすごく巨大なUFOみたいなものなんです。これは、なんとか超えなくちゃいけない」(阿部さん)
「春樹さんはもう僕たちよりも二回りも年上の人で、それで日本の小説界の話題を全部持って行っちゃうわけじゃないですか。それは本当にすごいけれど、僕たちもそれに立ち向かわないといけないんじゃないか、という気がしていて」(伊坂さん)
こんな意気込みを目の当たりにしたら、読む方も「うおおおお!!!!!」と滾りまくるのが人情でしょう。「ふたりで村上春樹さんとたたかう」はいまでも人生で三本の指に入るキラーワードです。
全体としては疾走感満載のエンターテインメント巨編。なおかつ諸々の要素に生々しさがあり、時代の闇が孕む重みを随所に感じ取れる一冊です。「面白いだけではない奇跡の合作小説」をぜひ。
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