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「京極夏彦」は極上のプロレスラー

ついに!!

京極夏彦「百鬼夜行」シリーズの新作が約17年ぶりに出ます。タイトルは「鵼の碑」(ぬえのいしぶみ)。ノベルスと単行本の同時発売です。

値段はノベルスの方が安い(単行本は税別3600円、ノベルスは同2200円)。ただ装丁の妙を考えると、単行本も諦めがたい。あと私はこのシリーズを文庫でしか読んでいないのですが、ノベルスだと二段組みになるのでしょうか? あれも慣れていないと戸惑います。

ともあれ待ち遠しい。

「百鬼夜行」シリーズといえば、鈍器とも呼ばれる1000ページ超えのボリューム。歴史や思想、芸術などに関する詳らかな情報が詰まっています。しかし読んだことのある人なら頷けると思いますが、一度流れに乗ってしまえばジェットコースター。俗にいう「ページを捲る手が止まらない」を体感させてくれることは間違いありません。

私は「絡新婦の理」(じょろうぐものことわり)がいちばん好きなのですが、もう完全にメリハリの勝利。諸々のフラストレーションを溜めに溜め、ジリジリが限界に達したところで京極堂が動き出す。そこからの疾走感は過去最大級。朝までかかって読了したのを覚えています。

ファンが退屈することに怯えていきなりハイスパートするのではなく、序盤は物語の世界観やキャラクターの特徴をじっくり伝える。豊富な引き出しと重厚なテクニックで説得力を醸し出すことに専念し、緊張感を客に共有させる。そしてある段階が来たらエンターテインメントへ全振りし、極上の熱狂へ引き込む。

構造としては、2月に引退した天才プロレスラー・武藤敬司選手の試合の組み立てに似ています。興味を覚えた方はシリーズ最初の↓をぜひ。他に比べれば短く、入り口に最適です。

お気に入りの既刊を再読しながら新作を待つのも楽しそう。ジリジリしつつ9月14日を迎えます。

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